ーEpisodeー
∀・)待たせたな!ファンタジーな世界でいっちょドンパチやろうじゃねぇか、このヤロー!
大世界ワルキューレ・トリスは惑星生誕から800年の年月をかけて、人間が文明を営むようになった。やがてデュオン家という王家がここ50年にわたって統治する国家形態となり、下々の民衆は長い年月にわたりデュオン家のもとで慎ましくも平和な生活を送っていた。
しかしこの10年で西域においてレンプォン・バクラーンという者による革命が起き、西域による独立国家の運動が活発化するようになった。所謂“バグラーン抗争”という現象がトリス・デュオン公国の治安にも影響を及ぼすようになり、果ては戦争も回避できない現状を生みだすようになった。
民衆の意志というものは流動的なものであり、ここ数年で全惑星の6億のうち2億ほどが公国勢で、3億ほどがバグラーン勢だという現状を生みだしていた。いざ戦争となれば結果は見え透いたもの。既に公国中枢でバグラーンのスパイがいるというのだから、情けも容赦もあったものではない。
この世界情勢に頭を深く抱える隻眼の女がいた。イザベル・ラベルス、公国の建国時からデュオン家に代々尽くす公国参謀を担うラベルス家の末裔である。しかし皮肉なことにも、ここ数年におけるバグラーンの動きによってラベルスの血縁にあるほぼ全員が西域に寝返ったという。これにあたってイザベルの処刑を王家が糾弾する事態にまで一時陥っていた。そのうえ暗殺未遂をも受けて隻眼となった。だが幸いにも公国官僚内での熱い信頼と王女キシリナによる擁護により、その最悪の事態は免れた。そのような立場にありながらも彼女は公家に仕えた。
彼女はデュオン公国を何より愛していたのだ。
イザベルは執務室にてある書簡をじっと眺めていた。デュオン家に代々仕えてきたバーサル信教のハシム・ダリルからのものだ。『女神召喚』を強く謳ったものだが、ここにきていよいよあの高僧も頭が可笑しくなったか。彼女はそっと微笑むと重い腰を上げて立ち上がった。
やがて神は想う。この瞬間に歴史は動いたのだと――