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無能、ようやく自分を刺した人間の名前を知る

一体どれくらい歩いたのか、道に出た。

道には馬車が何台もあり、何人もの人達が物々しくそこにいた。

「×××!?」

「××××××!!!」

「××?」

「××××××!」

私の後ろにいる私を刺した男が年嵩のいった熊のような男と何やら話す。

しかし、話が通じないのか焦れてまた私の口をこじ開けた。

途端、熊男は大きく飛ばずさり剣を抜く。

なんなんだ!?

私の口の中に何があるんだ!?

理解不能で混乱は深まるばかり。

「×××××」

「×××××××!?」

「××」

私を刺した男と熊男は何やら軽く言い争いをした後、匙を投げたのか熊男が譲った。

私は私を刺した男に小突かれながら一台の馬車に乗る。

…馬車!

初めて乗る…!!

ちょっと小洒落た外国では乗れるって聞いたけど、外国になんて行ったことのない私には縁遠い存在だった。

そんな場合ではないが、きょろきょろと辺りを見回し、私を刺した男に頭を小突かれる。

本気の殴りではなくて突っ込みみたいな感じ?

よくわからないけど。

ガタリガタリと馬車が動き出した。

小突かれた頭は痛いが動き出した馬車にまたテンションが上がる。

外を見てふぁーと感嘆の声をあげる私を呆れた眼差しで男は見ていた。


飽きずに外を見続けていたら、森を抜けてしばらく進み見えた門を潜って町に入った。

これまた見所のある町である。

中世ヨーロッパを彷彿とさせる外観…。

いや、中世ヨーロッパなんて知らないけどね。

中世ヨーロッパを舞台にしたアニメがあって丁度こんな感じだったなぁ。

夜だから人の息遣いは全く感じられない。

…寧ろ…

ここで隣をちらっと見る。

鋭い視線を送り続ける男と目が合いすぐに晒した。

…寧ろ、なんでこの人達は起きてあんな森の中にいたのだろうか…。

全員同じ服装、同じ馬車に乗っている。

一体彼らは何者なのだろうか。

町の中をすいすいと進んでいくとデズニーランドのお姫様城のような立派な城が見えてきた。

と、思ったらこの馬車は敷地内に入っていく。

馬車が停まり、小突かれて外に出たら城の中に連行されていく。

え?

私はビクビクしながら城の中に入った。

そしたら、夜だというのに、中は明るくて暖かく、そしてたくさんの人達が楽しげに働いていた。

普通に使用されてる!?

この城はアトラクション用のハリボテじゃないの!?

カルチャーショックを受けていると、また男に小突かれた。

ぐいぐいと連行される。

見た目的にメイドな感じの女性達が私達を見た瞬間お喋りをピタリとやめてすごい勢いで私達に道を譲る。

まるで、怯えているような…?

男は舌打ちしながらぐいぐいと開いた道を歩いていく。

通り過ぎた道は元どおりになる。

「××××!」

「××!」

「××××××!!」

彼女達はヒソヒソとこちらを見ながら何か言っていた。

言葉は通じなくても悪意は感じる。

初対面でこんな悪意を感じたのはさしもの私も初めてだ。

…あれか、犯罪者のように連行されているからか…。

やがて小さな部屋に私は押し込まれた。

そして、女性が一人現れ私を刺した男は部屋から出る。

髪はショートカット、高身長でかなりの美人。

服装は彼らと同じ。

髪の色が私と同じだからちょっとだけ親近感が湧く。

「×××」

何か言われたがわからないので首を傾げてみる。

「×××!」

強く言われたがわからないので首を傾げてみる。

「×××!!!」

さらに強く言われたが…

ここで、顔を殴られた。

平手打ちじゃない、グーだ、グー。

「!?!?」

「×××!」

また同じ事を彼女は繰り返すがわからない。

怯えた眼差しを彼女に向けてみる。

再度殴られて壁に強く打ち据えられる。

鼻から何かが流れた感触がして拭いてみたら血だった。

鼻血だ。

部屋は充分暖かいのに恐怖で体が震える。

「×××!」

また同じことを言われた。

何も言わなければきっとまた殴られる。

な、なにか言わなくちゃ…!

あ、あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ?

英語じゃないからイングリッシュじゃだめか!?

え?じゃあスピークの後はなんて続ければいいんだ?

また彼女が拳を握った!

「うわぁ!」

とりあえず、小さく蹲って顔を防御する。

すると、彼女は私の脇腹を蹴り飛ばして転がした。

「がはっ!」

口を開けて咳き込んだら、彼女は少し慄いた。

…?

しかし、すぐに立ち直った彼女は再度同じ言葉を紡ぐ。

「…わかりましぇん…おねがい…なぐらないで….」

怖くて怖くてガタガタ震えながら通じないとわかりつつも言葉を放つ。

きっとまた殴られるか蹴られる。

体に力を入れてその瞬間がくるのを待つ。

しかし、その瞬間はこなかった。

ガチャリ

「?」

おそるおそる私は目を開けてみれば彼女はいなかった。

「?」

「×××××××!」

「×××!!」

「××××××!」

ドアの外で何やら言い争いが聞こえる。

おそらく、さっきの女性と私を刺した男が言い争っているのだろう。

やがて、争いは終わり再び女性が入ってくる。

そして、問答無用で、私の服を引き裂いた!

「ち、痴漢!」

違う。

違うというのはわかってる。

だけど、それしか単語が思いつかなかった。

スカートもブラウスもそれどころか下着も全て切り裂かれ私は全裸にされてしまう。

今度は彼女に違う意味で襲われるのではという恐怖でガタガタ震える。

しかし、彼女は私の服を脱がせて満足したのか、部屋に備え付けてあった棚から別の服を投げつけてきた。

…これに着替えろってことなのかな?

首を傾げて彼女をみてみたらくわっと威嚇されたので慌てて着てみる。

ボタンも紐も、それどころか袖すらない木綿の服。

ポンチョ?いや、中世ヨーロッパ風にいえば貫頭衣って奴だった。

私はそれを着た。

裸より絶対マシだからだ。

出来れば下着が欲しいが文句は言えない。

着替えが終わったら部屋から出される。

すぐそこで私を刺した男がいた。

彼は私を小突きながら首根っこを掴むようにして私を連行していく。

女性はついてこなかった。

そしてだいぶ歩いたところで、一際大きく立派な扉が見えてきた。

彼はためらう事なく、その扉の前に立つ。

すると自動で音もなく開いて私達を中へと誘う。

中をみて私は息を飲んだ。

天井は高く、支える柱は芸術的な彫り物がされていた。

床には赤い絨毯が敷き詰められていて靴を取り上げられた私にも優しい仕様。

そして、その一番奥は一段高くなっており三つの立派な椅子が並んでいた。

その椅子の真ん中に座っているのは、一人の少年。

え?子供?

ぽかんとしていると小突かれて前に進めとやられる。

慌てて前に進むと、途中で今度は足を止めろと首根っこを掴まれてしまう。

そして、無理矢理座らされ頭を床につけられる。

絨毯ごしなのにごちっという大きな音がしてとても痛かった。

「×××××××××××」

「×××××××」

「××××××××」

「×××」

「××××××××××××××××××」

早口でのやり取りでなにがなんだかわからないが、この少年はとても偉いようだ。

私を刺した男も膝をついて頭を下げている。

対して少年は一段高いところから私達を見下ろしている。

すると、男がまたも突然私の口をこじ開けて少年に見せた。

「!!!」

不遜な態度だった少年の顔色がさっと変わる。

「×××!」

強く何か言った。

「×××××××××××××」

しかし、男は何やら言い返す。

「××××!」

「×××××××」

男が私を小馬鹿にしたような目で見て何かを少年に言う。

それに対して少年は何かを考える。

そして…

「××!×××××××!」

「…×」

少年が男に何か命じた。

そしてパチンと指を鳴らす。

すると、後ろから人が入ってくる気配がした。

床に頭を擦りつけたまま器用に頭を動かして後ろを見ればメイド風の女性が一人怯えた表情で何かを持ってくる。

サイズ的にはトイレブラシ程度。形もトイレブラシとさして変わらない。

でも、石で出来ているのか重そうだ。

彼女はビクビクしながら男にソレを渡した。

近くに来たのでよく見てみると、ブラシ部分に当たるところが何やら彫り込まれている様子。

そして、その部分から煙が僅かに立ち上っている事に気付いた。

…あの部分だけ熱いのかな…?

そう考えていると、男は私を見た。

慌てて顔を床に向ける。

しかし、男は私の髪を鷲掴みにして無理矢理顔をあげさせて強制的に目を合わせる。

そして、ニヤリと笑った。

その笑顔は鬼も裸足で逃げるような恐ろしいものだった。

「×××?×××…×××!!」

何やら言うと男は私の貫頭衣の裾を捲って背中を露出させるとその煙をあげてるブラシを押し当てた!

「いやぁぁぁぁぁぉぁ!!!!」

私は自身の背中に異常な痛みと熱さを感じ、喉の限界まで叫んだ。

と、同時に目の前が暗転して…眠ってしまったのだった…。





目が覚めたら知らない薄汚い部屋だった。

床は埃だらけで窓はなく、家具もなかった。

この見知らぬ場所があの時の事は夢ではなかったと証明していた。

一体、なんなのだろう。

会社で地震に遭い、気づいたら森の中。

人に会ったと思ったら剣を向けられ、連行された先はお城。

そこで背中に熱い何かを押し当てられて、今に至る。

あれは…もしかして焼鏝だったのではなかろうか。

何か彫り物がされていた。

背中に何か焼き付けられたのかもしれない。

肩の傷は治っていた。

そういえば、背中も痛くない。

犬に噛まれた時、あの男の人は一瞬で私の傷を治してくれた。

それこそ魔法みたいに。

それで肩と背中を治してくれたのかもしれない。

これからどうしよう。

誰か来るまで待っていた方がいいのか、それとも部屋から出て逃げ出した方がいいのか。

私はドアをみる。

あまり丈夫そうには見えない薄いドア。

鍵がかかっていても壊せるかもしれない。

私はゆらっと立ち上がり、フラフラとドアに向かう。

そして、ゆっくりとドアノブを回して…。

ガチャリ

キィー…

開いた!ドアが開いた!!すぐ近くに上に続く階段があった。

窓がないから地下なのかもしれない。

私は階段に向かって歩く。

しかし、階段から降りてくる人がいて見つかる。

メイド風の女性で私を見ると大声で叫び声をあげた。

途端、周囲が騒がしくなり、私を先程の部屋へと追いやろうとする。

しかし、皆どこか屁っ放り腰でビクビクしていた。

仕方なく部屋に戻ろうとした時、喧騒がピタリと止まる。

そして、上からゆっくりと降りてくる人。

皆が彼を見て怯える。

彼は私を刺して、お城に連れて行き、焼鏝で何かを焼き入れた張本人だった。

彼は出会った時とは違い、もう少しラフな格好をしていた。

しかし、やはり全体的にアニメっぽい。

現代日本人感覚的に言わせて貰えば何かのキャラクターのコスプレにしか見えない。

金髪碧眼のアニメオタクが頑張ってる的な?

そんなことを思っていたらいつの間にやら彼は私の目の前にいた。

「×××?」

「?」

「××××××!」

言って彼は私の腕を引き、先程の部屋に押し込んだ。

強く押されて床に這いつくばった私を見て彼は愉快そうな声を漏らす。

なんなのだ、こいつは。

睨んでみたら、目が合ったので逸らす。

男はゆっくりと近づいて床にぺたんとヘタリ込む私の視線に合わせるようにしゃがむ。

そして、己を指差してゆっくりと話した。

「×・×・×」

「?」

「×・×・×」

…もしかして名前なのかな?

おそるおそる繰り返してみる。

「…うきあ?」

私の言葉に彼は頭を横にふる。

「u・×・×」

「う・き・あ?」

「ru!」

「るきあ?」

そう!と言わんばかりに彼は頷いた。

彼の名前はルキアか!

お前は?と言わんばかりに指を指してくる。

私は彼の真似をしてゆっくり名乗る。

「あ・か・り」

「は・か・り?」

私は首を横にふる

「あ!」

「a?」

そう!と頭を縦にふる。

「あかり?」

おー!意思疎通ができた!

感動に打ち震える。

そんな私の表情で名前が言えたと彼…ルキアは悟ったようだ。

「××××××」

何かを言って彼は出て行ってしまった。

きっとこの部屋にいろとかそんな事を言ったのだろう。

とりあえず、逃げることは難しいという事はわかった。

これから私はどうなるのだろうか….?

誰もいなくなった部屋で私は一人不安に打ち震えるのだった。





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