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最新ビルが地震で崩壊!?気づけば一人で森の中


「君、うちに来て何年だっけ?」

過去に何度も彼には伝えている。

忘れっぽい訳じゃない。

単に何度も聞きたくなるくらい私が無能なのだ。

「まあ、五十嵐さん、そんなふうに凄んでしまったら彼女は何も言えなくなってしまいますよ。」

そう優しげに言うのは入社三年目で大きな仕事を取りまとめ一足飛びに出世した私の直属上司の日比谷さん。

貴方アニメの住人じゃありませんかと問いたくなるほどのイケメンで女子社員どころか外部からやってくるお客様にも人気がある。

見た目だけでなく、その優しさがいいとのこと。

個人的には胡散臭いと思ってる。

だってアニメじゃ、こう言う奴が最悪のタイミングで主人公を裏切るじゃない。

「だがな!こいつもうこのミスを何度もしてるぞ!」

苛ただしげに五十嵐さんがいう。

彼は私が所属する部署のトップ。

日比谷さんの直属上司で私にとっては雲の上の人。

彼もまたイケメンだ。

今流行りのイケメン俳優とか蹴散らせるくらいまばゆいお顔でやはり会社の内外にファンを量産している。

うちの会社は顔で採用してんのかと一瞬思ったが、もしそうから八重歯だらけのガタッ歯な私は不採用だったろう。

「そうですが、我々の指導に何か問題があるのかも…」

日比谷さんは優しい。

それに対して五十嵐さんはかなり厳しい。

鬼だ、鬼。

もっともこんなに怒られているのは私くらいだ。

普段は寡黙で声を中々あげない。

必要な事を必要なだけしか話さないので、こんなに彼の口を開かせる私は部署の嫌われ者だ。

あだ名はお荷物、仕事の出来る同期にはトイレとかで顔を付き合わせるたびに貴女はここにいていい人じゃないと言われている。

その通りすぎてぐうの音も出ないが運よく正社員になれたのだ。

どうせ結婚もできない、助けてくれる身内も友達もいないのだ。

自分の無能ぶりを呪いながら糊口をしのぐしかない。

「おい!聞いているのか!」

バンと机を叩かれてぼんやり別の事を考えていた私は現実に戻ってきた。

「….はい、十年目です。」

「十年だぞ!お前新卒だってしないようなミスをどうして乱発するんだ!!」

「すみません」

「すみません、じゃない!何故このような事態が発生したのか説明しろ!」

言われて頭のなかで何が起きたのか思い出す。

えっと、書類整理をしていたらその中に廃棄してはいけない書類があって気付かずにシュレッダーしちゃったんだよね。

それで上へ下への大騒ぎ。

今はひと段落して会議室でお説教タイム。

説明…今のまま言えばいいかな?

ムニュムニュと口ごもっていると日比谷さんがフォローに入る。

「落ち着いて、ゆっくり話してくれればいいよ。」

爽やかな笑顔をむけて肩をとんと優しく叩いてくる。

その隣には鬼のような顔をした五十嵐さん。

刑事ドラマでこういうの見た事あるわぁ。

鬼のように怒る刑事をまぁまあと宥めるベテラン刑事…。

さながら私は事件の容疑者か。

「ーーおい!」

今の五十嵐さんの言葉は私かと思ったがどうやら日比谷さんに言ったようだ。

かなり怒った口調でありとばっちりだろう。

胡散臭いと常々思っている日比谷さんだが、さすがにとばっちりで怒られるのは申し訳ないと思うので心の中で謝っておく。

「えっと…その…いつものように書類整理をしていて…」

カタン

机の上に置いていたペットボトルが少し動いたような気がして視線を動かす。

「気を散らすな!そういう態度が…」

五十嵐さんの言葉は全て吐き出せずに終わった。

何故なら座っていることもままならないような地震が起きたからだ!!

『!!!??』

三人が同時にパニックになる。

しかし、同じパニックでも有能と無能の差が出た。

私は何も出来ずに机にしがみつくことしかできなかったが、クソ有能な上司は違う。

同時に動いたかと思うとなんと無能な私を庇おうと身を乗り出したのだった。

二人が同時に被さってきて別の意味でパニックに陥る。

しかし、それも長くは続かない。

ビシ

足元から嫌な音がした。

え?と思い見てみれば大きな亀裂。

うそ!?

このビル今年出来たばっかりの最新流行商業ビルだよ!

私がいるのはその最新ビルの最上階にあるオフィスゾーンだよ!?

それが足元から崩壊!?

ええええ!?

足元が崩れた場合の未来を想像してさらにパニックになる!!

そして世の中悪い想像ほど当たるのだ。

足元が崩れた。

『山本!!』

二人の上司の声が左右の耳から同時に聞こえた。

同じ部屋にいるのだ、当然心中コースだろう。

なんで大っ嫌いなこいつらと心中しなきゃいけないんだよ!!

内心毒づきながらやがて訪れる痛みと浮遊感を想像し目を閉じた。

しかし、いつまで経ってもそれはこない。

ふと気づけば私に触れていたはずの二人の手の感触もなかった。

「…?」

疑問に思いつつ目を開けた。

そしたら…



見知らぬ森でした。


は?



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