凱旋路の少女
城下の凱旋路。あの日の私は壁の要な人混みの中をくぐり抜けていた。雑踏の向こうから馬列の音が近づいてくる。あの人にあえる!!私はより強く前にいる人々をかき分けた。肩を押しのけられた男が私を睨む。それを無視し私は更に前へ。石畳の大通りが見えた。最前列の人の両足下から顔をだした。その時ーーーー
馬蹄がストンと落ちた。見上げる。黒い甲冑、腰には私の背丈より長い剣の竿。もっと上を!!風に棚引く鷹の羽根飾りを付けた兜。顔は・・・、日の光に影って見えない!ああ、行ってしまう!!この国の誇りの英雄であり気高き姿と美しき顔立ちの王子。私だけではない、国土の女たち全てが恋い焦がれるあの人。隷下の騎馬隊が次々と通り過ぎていく。私の体の上で中年の女が喚いている。でも私には聞こえない。あの通り過ぎる背中をただ見つめていた。
騎士団の凱旋が過ぎ人々が去っていく。でも私はたちどまったまま城内へと続く道をまだ見続けていた。私があの人のそばへ行くにはどうしたらの良いのだろう?しがない平民の娘。遠い遠い人。それでも少しでも側にいられる事ができたなら。何でもいい、私はあの人に全てを捧げたい・・・。
あの日、私の生きる道が決められた日。つい最近のようで、遠い昔のよう。後悔はしてない。私はあの人の盾であり、剣となった