約束の場所
そもそも情とはなんであろう。青春時代の経験が今蘇る。
「13時にエジプト前で!」
エジプトとは八王子駅の壁に描かれている壁画のことである。
15分前にぼくはエジプトの前に来た。
そう、ぼくと親友は学校である約束をしていたのである。
自分たちで考えうる、もっともダサい恰好で会おうじゃないか・・・と。
年頃のぼくらが熱く語り合っていたのは、
カッコつけたり、着飾ることからの脱却
その先に何が見えるのか・・・ということ。
もっともダサい「恰好」とは何を表すのか。
当日、ぼくは敢て服を着なかった。
裸だったが、
うすピンクのコンドームだけは着用した。
極薄タイプである。
ひとつ前の駅から、約束の場所へぼくは向かった。
そしてエジプト前でしばし佇んでいた。
あれだけ熱く語っていた親友が姿を現すことはなかった。
その先に見えたもの・・・
それは友情の希薄さである。
短い中でも、何かを感じ取っていただけたら幸いです。