こんなヤンデレはもう嫌だ!
ヤンデレ成分が足りませんでしたので書いてみました。
今掲載している異世界転移の作品とは違って、
本作はコメディーですので軽く読めます。
俺の名前は山田太郎。
就活中の大学4年生だ。
明日は午前中に〇〇企業の面接がある。
その準備をしなければならないが、残念ながらそれはできない。
首にチョーカーをつけられ、ある部屋に監禁されているからだ。
俺を監禁した人によると、このチョーカーには超小型爆弾が入っており、毎日0時にパスワードを入力しないと爆発するという。
他の人がこんなことを言ったら笑って済んだ話だが、
残念ながら犯人は相当の経済力があるお嬢様だ。
彼女ならできるだろう。
「もう~全部先輩が悪いんですよぉ?明日面接に行くって言ったからぁ」
俺の隣で訳が分からないことを言っている女子は田中姫子。
俺の後輩であり、恋人であり、この事件の犯人でもある。
顔は可愛いが、残念ながらヤンデレだ。
しかし、ヤンデレということが気に入って付き合うことにした。
まぁ、それは後でも話す機会があるんだろう。
今はこの状況を何とかしないと。
そもそも、こんな目に遭ったのも全部彼女のせいだ。
明日面接のために上野に行ってくるって言ったら、突然俺にコーヒーを勧めたのだ。
訳わかんねぇし、怪しすぎる。
だから、俺はただ飲むふりをして、適当に言い訳しながらトイレでこっそり捨てるつもりだった。
ところが、まさかコーヒーはフェイクで、本当はスタンガンだったとは……。
毎日著しく進化してるんだな、お前。
時計を見たら、もう23時30分だった。
面接の準備はすでに終えたが、もう一度確認してみたい。
「もうそろそろ放してくれねぇか?」
「だめですわ!そうすると、先輩は面接の準備をするんでしょ?」
「そのつもりだけど」
「そうすると先輩は面接に合格!大企業に就職!そして先輩を狙う虫どもめが!」
「集まらねぇよ。そんな訳ねぇだろ」
腐った果物でもないし。それより、お前、本当にお嬢様なのか。
「そんなこと言ってもわたくしは騙されませんわ!」
「あのさ、俺が就職しようとするのはお前を幸せにするためなんだよ。お金ないと結婚もできねぇし、俺がその会社に就職するのがお前のお父さんとの約束だから」
「け、結婚……!」
「そもそも、お前みたいな可愛い恋人がいるのに俺が他の女性なんか見る訳ねぇだろ」
「先輩……!」
俺の言葉に、彼女は顔を真っ赤にしてトロ顔でこちらを見てくる。
チョロイな。
「わかったらこれ放してくれよ。パスワードさえ入力すればすぐできるんだろ?」
「はい!今放しますね!」
彼女はチョーカーに4桁の数字のパスワードを入力した。
エラーが出た。
再び入力した。
再びエラーが出た。
もう一度入力した。
もう一度エラーが出た。
それでも諦めず、入力しー
「いい加減やめろよ!何で間違ったのに同じ数字ばっかり入力してるんだよ!」
「でも、絶対0920ですよ!先輩の誕生日だから!」
「いや、俺の誕生日8月20日じゃん?」
「えっ」
「まさかお前、付き合ってからもう一ヶ月経ったのに俺の誕生日も知ってないとは言わないんだよね?」
「そ、そんなことないですよ?ほら、今のはちょっと、勘違いというか、そんなもんですわ?」
「へぇー」
「と、とにかく、今は早くパスワード入力しないと……」
彼女は先とは違う理由で顔を真っ赤にし、0820を入力した。
エラーが出た。
「……」
「……」
「…あのさ、どうするつもりなんだ、これ!?もうすぐ12時だぞ!?爆発するぞ!?」
「あ、それは嘘ですので、心配しないでください!爆発つきのチョーカーなんて、買えるわけないでしょ?もう、先輩ったら~映画見すぎですよ~」
……何だろう、この激しい衝動は。
「もう、先輩、エッチー」
「いやそれはちょっとちがうな」
俺はため息をつき、また口を開いた。
「まぁ、とにかく、それなら助かるけど、このままじゃ俺面接にも行けねぇんだよ。何とかしてくれよ」
「ファッションだと言ってみたらどうでしょうか?」
「スーツ姿でチョーカー付きの新入社員なんか、採用するわけねぇだろ」
「ううん~そうでしょうか?わたくしなら眼帯にボールギャグまでしていても先輩ならすぐ採用ですけど」
「それやめろよ!なんだあの会社!逆に怖い!」
突っ込みすぎて頭が痛くなった。
「ふっふっふ。実は今までのことは先輩をびっくりさせるための小さなイベントでした!実はパスワード、わたくしが先輩に出会った日ですわ」
「ああ、あれか。マジで勘弁してよ。心臓に悪いんだから」
「でも、全部先輩が悪いんですよぉ?明日面接に行くって言うんだからぁ、もう~」
「あのさ、もう一度言うけど俺が就職しようとするのはさー」
以下省略
「それじゃ、入力しますね」
彼女はチョーカーに4桁の数字のパスワードを入力した。
エラーが出た。
「あ、あれぇ……。おかしいなぁ……。きっとこれだったはずなんですけど……もしかしたら先輩の家のドアのパスワードだったんでしょうか」
「何故家のドアのパスワードを知ってるんだ?」
「愛の力です!」
いや、ストーカーの力だろ。
帰ったらパスワード変えよう。
「…まぁ良い。まずはこれを何とかしてくれ」
「ええと、それがですね、実はこれ、5回入力し間違ったら二度と解けないんですよ」
「…今、5回間違ったんじゃねぇ?」
「てへっ」
「マジか……。他の方法はないのか?」
「それは、先輩の首を切るしか……」
「何でそうなるんだ!?極端すぎるだろ!やめろよ!」
「大丈夫ですわ!先輩の首を切ってわたくしもすぐ先輩の傍に行きますから!」
「浮気もしなかったのにそのセリフ聞きたくねぇ!」
こんなヤンデレはもう嫌だ!
※次の日、面接は無事に受けました。
つづく?
こんばんは。イツネです。
本作は明るく軽い雰囲気で書いてみました。
従って、登場するヤンデレは実は偽物の(?)ヤンデレです。
本物のヤンデレはこの作品では登場しません。