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Rain

作者: 畑中 優月

雨の日は嫌いだ。

こんなジメジメしていたらまたネズミたちが増えてしまうじゃないか。


僕は幾つだったか忘れるほど昔から奴隷として働かされている。

だからそとの世界をあまりよく知らないし覚えていない。

もうずっと、心身共に暗い暗い汚い地下で生きている。


そんなある日、僕たち奴隷を1日だけそとに出してくれるという機会が訪れた。

皆一斉に出たがったが出ることが出来るのはたった一人のみ。

僕はそとの世界に興味はあったが人と話すのが苦手だったため仕方なく諦めざるをえなかった。


「No.381」


突如、僕が呼ばれた。


「は…はい。」

「アンジェリカ家のものが迎えに来ている。今すぐ向かえ。」

「はい……?」


いきなりなんだ。

アンジェリカ……ってどちら様?

向かえって、この泥塗れのみすぼらしい格好で?

色々頭に浮かんだがそれでも僕は待っている場所に急いで向かった。


「あ、来た来たぁ!」

「やっぱり汚いし凄い臭いだ。」


二人の男女。

歳は同じ位だというのに、彼等はキラキラと輝いている。


「あ、あの…僕になにか…?」

「No.381ですか?」

「はい……。」


すると、女の子の方が目を輝かせた。


「どうしよう!めっちゃいい感じだよー!?」

「こら、メリル!!驚いてるだろ?」


……お兄ちゃんか?

やはりそとの世界の住人は名前を持っているものなのか。


「ご、ごめんなさい。騒いじゃって。」

「自己紹介、まだだったよな。俺はライズ.アンジェリカ。双子の兄だ。歳は……今日で17だな。好きなものは天体観測。よろしく。」

「私はメリル.アンジェリカ。双子の妹なの。歳は今日で17。趣味はファッションデザイン考えること。よろしくね♪」


……てんたい……かんそく?って何?

ふぁっしょん?で……ざいん?


「君は?」

「僕……ですか?僕はNo.381。歳は…わからない…です。好きなこともないです。よろしくお願いします。」

「うーん。名前ないの?」

「昔はあったと思うのですが、僕はずっとNo.381と呼ばれていたので…覚えていないんです。」

「歳は同じだよ!!だから選んだんだもん!」


彼女が言うに、僕は彼女たちと同じ誕生日らしい。

僕が知らなくてもお偉いさんは調べている。

誕生日プレゼントに僕と過ごすことを選んだという。


「そうだったんですか。」


僕が彼女の方を見る。

ぱぁぁぁぁぁぁあっっと顔を輝かす彼女。


「ライズ!!そと、行こっ!!ここジメジメするし!」

「いいけど……そと、雨だぞ?」

「いいのっ!!はーやーくーっっ!!」



「やっぱりーっ!凄く綺麗ー!!」


何が綺麗なのか。僕をみているが……。


「本当だ。深い青だな。」

「あの、何が……?」

「瞳だよ。瞳!」


僕の瞳……?

青だったのか。


「よし、決めた!!名前!!」

「……え?」

「今日は雨の日だし、レインはどう?」

「いいね。よろしく、レイ。」


レイ……。


それから僕は1日だけ、そとの世界を見ることとなる。


そとの世界は本当に面白いものだった。

色々な服があり色々な食べ物があり……。

そして、嬉しかったことは靴を履いたこと。

いつもは裸足だから違和感はあるものの、痛みが感じられず凄いものだと実感した。


「あぁ、楽しかった!!そろそろ時間?」


時間というものは経つのが早い。

といっても、こんなに早く感じたのは初めてだが。


「ねぇ…レイを誕生パーティーに呼んじゃダメなの?」

「…バレないとは思うけど、万が一のことを考えるとな……。」


お父上という方にバレてしまうとまずいようだ。


「僕、もう大丈夫です。ありがとうございました。」

「でも、そこに帰ったらもう出られないよ?」

「わかってます。でも、僕はこの優しさや楽しさに浸ってしまってはもう帰れなくなってしまいそうなので…。」

「レイ、来年だ。来年必ず迎えに来る。」

「どうしてですか?僕とは今日会ったばかりだというのに…。」

「今日会ったばかりなんかじゃないよ。」


働かずに悠々と暮らせている自分たちに対して一生懸命働く僕たちを尊敬していたという。

そして、気付かれないようにいつも見ていたという。


「レイ、必ず来るから!だから待ってて?」

「…僕、初めてお願いされました。」


僕はいつも命令されるばかりで。

お願いとか約束とかは初めてだ。


「後、もう一個お願い。」

「……何ですか?」


「私たちのこと、名前で呼んでほしいの。さんとか無しで。」

「…ライズ、メリル。今日は本当にありがとうございました。そとの世界の素晴らしさを教えて下さったのは初めてです。僕、待っています。」


久しぶりの笑顔に涙が浮かんだのはここだけの秘密……。


僕はまたネズミたちを退治する生活に戻った。

ジメジメとしていて気持ちが悪い。

今日は雨の日だ。


「こんな雨の日も…案外悪くない。」

はじめまして、畑中優月です。

昔書いてた短編小説が見つかったのでちょっとアレンジして投稿してみました。

下手くそですが、楽しんで頂けたらと思います。


次は長編小説が書きたいなぁ…なんて。

まずは、文才を身に付けることなんですが(苦笑

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