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ひだまりの国 海底都市の謎  作者: 白波
第1章 海底へ
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第8話 竜也との出会いは…

「どうぞよろしくお願いします…牡丹さん…。」


 竜也の出会いはとても衝撃的なものでした…

 はっきり言って初対面のはずなのに、彼は、次期党首であるお姉ちゃんではなく私の名前を口にしたのです。


「はっ初めまして…北上牡丹です…。」

「…北上あかねでございます…このたびは、お招きいただき光栄でございます。こちらは、三女にあたりますあけびにございます。」


 私のあいさつの直後に姉がした丁寧なあいさつ…私は、この時、あとでお姉ちゃんに叱られるな…などと考えていたので、次の言葉にまともに対応することができませんでした…


「…僕は、難しいあいさつとかよくわからないから、牡丹さんみたいなわかりやすいあいさつの方がよかったかな? 牡丹さんもそう思うでしょ?」


 この瞬間、お姉ちゃんの顔に驚愕の表情が浮かんでいたと思います…思いますというのは、自分でも何が起きたのかわからなくて、混乱していたからです。


「えっと…僕って、何かまずいこと言っちゃった? そもそも、何を言ったんだっけ…うーん…忘れちゃった!」


 私たちの様子に気を留めることすらなく、そんなことを言ってのける竜也に私は、少ならずあこがれていたのかもしれません…


 あの当時、お姉ちゃんは、父の影響からか、父と同じ…いえ、それ以上に礼儀について私に厳しかった記憶があります…もしかしたら、あの時、竜也はお姉ちゃんに叱られるのではとおびえている私に助け舟を出してくれたのではと思います…


 その後、竜也の態度のおかげか、私はお姉ちゃんに叱られることもなく、次の家に向かうことになったのでした…






「でも、あの直後だったのよね…。」

「突然どうしたの?」


 思わず口に出ていたのか、陽菜が不思議そうな顔でこちらを見ています。


「あっ…いや、なんでも…ちょっと昔の事を思い出してただけよ…。」

「昔の事?」

「そう…昔の事よ…。」


 私は、遥か上の天井を見つめながらそう答えました。






 あれから数時間…車の車内を沈黙が支配していました…

 音楽の一つでも流せば状況は変わるのでしょうが、陽菜すら黙っているようなこの状況下でそのようなことを提案できるわけでもなく、私も黙ったままでした。


「…みかんさん…もうすぐ、海溝です…。」


 その沈黙を破ったのは、運転士の…誰だっけ? とりあえず運転士さんでした。


「海溝…じゃあいよいよ南部ね…。」

「はい…その前に休憩しますか?」

「そうね…。」


 運転手さんの問いにみかんが答えると、車は、近くにあったお店の前に止まりました。


「そこの店で休憩しましょ…。」


 そう言ってみかんが、車から降りると、私たちもそれに続きました。






 みかんの後に続くようにお店に入ると、店内にはかなり高齢とみられるおばあちゃんが座っていました。


「おんやぁ…みかんちゃんかい…来てくれたのかい?」

「うん…ちょっと用事があってね…海溝の向こうに行くのよ…。」


 みかんがそう告げると、おばあちゃんは笑顔でこう答えました。


「そうかい…じゃあゆっくりと休んでいきなさい…それはそうと、そちらのお2人さんは、みかんちゃんの友達かい?」

「えぇ…こっちが、翠川陽菜で、奥にいる奴が北上牡丹って言うんだ…。」

「ほう…陽菜ちゃんに牡丹ちゃんって言うのかい? 私は、長年ここで店を構えているマングローブさ…まぁこんな辺ぴな場所にある店だけど、時々顔だしてくれるとうれしいねぇ…。」


 おばあちゃんは、そう言ってしわくちゃの顔で笑いました。


「うん…なかなか来れないと思うけど、きっと来るよ…。」


 私は、いつの間にかそう答えていました。

 読んでいただきありがとうございました。


 これからもよろしくお願いします。

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