第7話 都市の現状が見えてきました
さて、約30分かけてみかんを捜索したのち、私たちは車で南部に向かうことになりました。
「それにしても、すごい状態ね…。」
「えぇ…これがこの都市の実情よ…あのきらびやかな町はあくまで表向きでしかない…まぁどこの町でも裏の顔はあるものよ…。」
窓の外に広がる風景は、北地区とは全く違ったものでした。
薄暗い中にたくさんの岩が転がっており、その周りでたくさんの人たちがテントで生活していました。
「…ねぇ…確か、陽菜は、モノレールは都市内を縦横無尽に走ってるって言ってたよね? このあたりには、見当たらないけど…。」
「線路だけは縦横無尽に走ってるのよ…ちょっと大げさに言いすぎた点もあるけど、採算が見込めない路線は、すべて地下に格納してあるのよ…海溝の上とかそう言うことができない場所は、常に出てるらしいけど…。」
なるほど…これを聞く限り、相当大きな都市を造る計画だったのかもしれません…失敗しているみたいですが…
「まぁ問題は、みかんがどこに向かっているかよね…私にすら何も言わないなんて…。」
いや…口が軽い陽菜だからこそ言わなかったように感じるのですが…
そんなことはさておき、実際、私たちが今、どこへ向かっているのかはいまだに聞けていません…もう一つ気になる点は、私だけのようがあるとのことで、ヴァーテルと竜也、アウラは、北外駅で別れたのですが、その理由もいまいちわかりません…
「みかん…この車は、南部のどこに向かってるの?」
「…しばらく乗ってればわかるわ…まぁ先に言ってもつまらないでしょ?」
聞いたところで、この調子です…
みかんは、陽菜とは逆で口が堅いので、助手席で悠然と構えている彼女から、目的地を聞くのは難しそうです。
「はぁ…まぁいいわ…海溝については、気になっていたことでもあるし…。」
「どうして、海溝の事が出るの?」
横に座っている陽菜が話しかけてきました。
「…地図よ…仮にほかの地区が北地区と同じ大きさで、東西南北にあるとしたら、南地区に入るぐらいの地点に海溝があるって言う計算よ…もっとも、計算したのは竜也だけど…。」
「竜也君がねー相変わらず頭はいいってわけか…そんな雰囲気ゼロだったけど…。」
確かに竜也からは、パッと見頭よさそうには見えません…なんで、彼があれほど頭が切れるのかよくわかりませんが、それに幾度か救われていることもまた事実です…
そう、初めて会ったあの時も…
2002年3月某日…それが、私の記憶の限りでは、竜也と最初に会った日です…
その日、私は、父に連れられて5つの分家を訪問していました。
その時は、次期党首であるお姉ちゃんと妹であるあけびがついてきていました。
「ほう…この子たちが、実さんのところの三姉妹でしたか…。」
この当時は、まだ、現在のように分家と本家の仲が悪かった(大人だけの話で、子供である私たちはそんなことありませんが…)と言うこともなく、上代家の当主である上代竜助は、にこやかな笑顔で私たち三姉妹と父を迎えてくれました。
「こちらが、私の息子の竜也です…その横にいるのが、娘の竜光です…。」
これは、のちにわかったことなのですが、このとき父は、私たちと各家の次期党首とその兄弟との仲を違うことなく、協力して北上家の安定的な発展を目指していたとのことです…
この出来事の直後、北上家と分家の間に大きな亀裂が入り対立をするのですが、この時に出会った、百々や蓮華、竜也と言った人たちとの交遊は、今でも続いています。
「上代竜光と申します。どうぞよろしくお願いします。」
「竜光の兄の竜也と言います…どうぞよろしくお願いします…牡丹さん…。」
この時、竜也ははっきりとそう口にしたのでした…
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