第3話 海底都市の到着しました
北地区第1外部接続ゲート…そう書かれた入口から船は、中に入って行きます。
陽菜に聞いたところ、外部と接続しているゲートは、東西南北の各地区2つずつで、そのうち一つがこの北地区第1外部接続ゲートだそうだ…そこ以外からは、海水が街の中に流入するのを防ぐために入れないようになっているらしいです。
「北地区第1外部接続ゲートオープン…乗組員5名確認…パスカードを4枚発行します…。」
船の横には、ゲートの管理人と思わしき男性が、4枚のカードを持って立っていました。
私たちが船から降りると、男性は、私たちの方に近づいてきました。
「Welcome! 海底都市へようこそ! こちらは、都市内での身分証となるパスカードでございます!」
「ありがとうございます。」
「このパスカードは、ゲートを通った時の名前、性別、年齢をその人の記憶を頼りに表示する優れものよ!」
男性から渡されたカードを見ると、陽菜の言う通り青色のパスカードには年齢と性別、名前が記載されていました。
「ちなみに、このパスカードは仮発行されたものだから、正式なものを受け取るためにまずは、庁舎に行こうか!」
陽菜が私の手を引っ張って町の方へ歩き始めました。
「ねぇ…船はほっといても大丈夫なの?」
「船は問題ないよ…あれに関しては、あの場所に停泊させておくはずだから…もしも移動させられていても申請すればすぐにもってきてくれるし…。」
陽菜がそう言うなら大丈夫だと思いますが、少し心配なのも事実です。
そんな私の思いをよそに陽菜たちは、北1地区の町中に入って行きました。
北1地区は、その名の通り北地区に存在し、その中でも一番大きな地区なのだそうです。
基本的には、1地区に庁舎があるらしく、東西南北床の地区でも1地区が一番発達しているそうです。
中でも北1地区は、国民議会場があり、実質的に首都の役割を果たしているそうです。
「なんというか、海底とは思えないわね…。」
中心部に近づいてい来ると、高層ビルが天井近くまで伸びており、町中を電気自動車が行きかっているその姿は、日本とさほど変わりませんが、公共交通がかなり発展しているのを見て取ることができます。今、大通りの脇にある遊歩道を歩いているのですが、大通りの中央分離帯の上に沿うようにモノレールが通っているのが見て取れました。
陽菜が言うには、モノレールは都市内を縦横無尽に走っており、モノレールに乗れば大抵のところに行けるそうです。また、先ほどここは、北1地区だと説明しましたが、それはあくまで行政での区割りであり、それとは別に地名が付けられているそうです。
モノレールの駅名は、そちらの方を基準に付けられていると陽菜は言っていました。
ヴァーテルは、もの珍しそうに周りを見ています。
「ほんとに海底なのか? ここは…。」
「まぁこの町のコンセプトは、科学と魔法の共存だから…科学で達成できないところは、魔法で補う…それが、この町の基本的な考えなのよ…。」
異世界に来ているという事実を時々忘れそうになりますが、時々使われる魔法を見かけるたびに、ここが異世界だと思いださされるような状態です。
「あっ見ててきたよ!」
陽菜が立ち止まりました。それにしたがって、私たちも立ち止まります。
私よりも半歩前の位置にいる陽菜が指差す先には、ガラス張りの立派な庁舎が建っていました。
「すごい…。」
「ここが、私たち北1地区の住民が誇る、北地区の庁舎だよ…パスカードの更新などの業務から北地区の行政までをこの建物で一貫して行っているから、お役所に用事があるときは、必ずここに来るのよ…。」
確かに海底は、地上よりも、便利なようです。
ですが、なんだか違和感を覚えるのはなぜでしょうか?
「ほら! 牡丹早く行こう!」
「わかった! すぐ行くよ!」
陽菜に呼ばれた私は、彼女の下に駆け寄って行きました。
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