第15話 都市が停電に弱いというのは地上だろうと海底だろうと関係ないようです
それは、突如として起こりました。
私とヴァーテル、竜也、アウラが陽菜の案内で希望松地区を歩いているときでした。
町を明るく照らしていたネオンや街灯の明かりが希望松駅を中心として消えて行ったのです。
走行中だったモノレールはその場で動きを止め、人々は何が起こったのかと周りを見回していました。当然ながら私たちも例外ではありませんではなく、状況をつかめないまま、あたりを見回していました。
「どうなってるの? 明かりが突然消えるなんて…」
「さぁな…俺としては、明るすぎたぐらいだからちょうどいいのだが…」
「僕は都会っ子だから、明かりが消えるのは不安なんだよね…」
「本当に、この年の明かりが消えるなんて妙ね…」
それぞれ、口ぐちに異変を説明する。
そんな中において、町は徐々に混乱の渦に巻き込まれていく。
「どうなっているんだ!」
「落ち着け! すぐに復旧するにきまってる!」
「何言ってるの? 換気をしているファンが止まったらどうなるかわかってるの?」
混乱状態の町…まさにそんな言葉が似合いそうな状況でした…
人々は、世界の終りかのように絶望し、店に押し入って商品を強奪する人まで見受けられた。
「どうなってるの?」
「…この町にとっての電気というのは生命線だからね…それがなくなるというのは、死に直結する要素のてんこ盛りなんだ…つまり、下手すれば被害が大災害に匹敵するわけさ」
いつの間にか後ろに立っていたみかんが、今回の事態について至極冷静に解説している。
都市を管理する組織に所属するみかんが、落ち着き払っていられるということは、まだ、重大な事態に陥ったというわけではないのだろう…
「生命線ってどういうことだ?」
「まぁ単純よ…この都市では、生きるために必要な酸素を採光口と別に設けられた換気扇で取り込んでいる。まぁその換気扇に設けられているファンは電気で動かしている。それが止まるということは、空気の対流が止まることを意味している…ここまで言えばわかるか?」
ヴァーテルとアウラは理解していないようだが、牡丹と竜也は事の重大さを理解するに至りました。生命維持系に回っている電気の供給の停止…それが、この都市の終わりを意味しているということを…
「幸い、発電が完全に停止したわけじゃないから、換気扇のファンを始めとした生命維持系はちゃんと動いている…だが、町の混乱は避けられいな…」
みかんは深刻そうな顔で真っ暗な天井を仰いでいました。
希望松地区にある公共の建物。
何かあるといけないから、安全な場所にいたほうがいいと、みかんが案内してくれました。
倉庫に置いてあったろうそくに火をつけて、毛布を拝借し暖を取ります。
ここは海底。しかも、時間帯が夜だったようで、建物の中にいても真っ暗で寒いといった状態でした。
「明るくなったら、発電施設へ行ってみようと思う」
「私も行っていい?」
私の発言にみかんが驚いたような顔をしました。
「牡丹もか? まぁいかんとは言わんが…」
「何かあるの?」
「まぁちょっとな…」
みかんは、腕を組んで難しげな顔をしていた。
「もしかして…原発を推進しすぎて、発電所に行くのは危なそうとかそういうこと?」
「この時代にをハイスピードで逆行するようなことするか!」
みかんの声は、部屋中に響いていたようで、同じように身を寄せてた人たちが不安げな顔でこちらを見ています。ですが、私はそんなことお構いなしで会話を続行します。
「でも、政権交代したら脱原発とは限らないでしょ?」
「どこで仕入れたそんな情報…」
「作者だけど」
私がそう答えると、みかんは呆れ顔でその場に座りました。
どうやら、この話を長く続けるのはよくなさそうです。
「それで…結局なんで、発電所が危ないの?」
みかんは、天井を見て若干迷ったようなそぶりを見せてから話し始めました。
「実は…」
みかんの口から語られたのは、衝撃的な事実だったのです。
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