第12話 陽菜の意外な性格が明らかになりました
南地区の一番の奥にある施設の一番奥の部屋…
そこには、大きなモニターを備えた乗り物が置いてありました。
「なにこれ?」
「名前はまだ決まっていないんだが、乗った人間の意志をくみ取って動く乗り物だ…まぁ基本的には南地区内での実験となるんだが、安全が確認されたら東や北でも走らせたいと思っている。」
みかんは、乗り物の方に歩み寄って行きました。
見る限り、その乗り物は2人乗りとみて間違いなさそうです。
「まぁごちゃごちゃ説明してもあれだから、乗ってみてくれ…乗ってから説明する。」
扉を開けてみかんが乗車を促しました。
陽菜は、ささっと駆けより運転席に座ります。私は、とりあえず横の助手席に座ることにしました。
「それじゃあ地上に出すから、しっかりとシートベルト閉めてね!」
いつの間にか離れた位置に立っていたみかんから声をかけられました。
「えっ…どういう…。」
私が言い終わる前にシートに押し付けられるような感覚がして、かなりの速度で上に上がっていると理解することができました。
どうやら、この乗り物は、地上へ直結するエレベーターの上に止めてあったようです。
「準備できた? 説明に関しては、主モニターに回すから、そっちを見てね。」
そんな声が聞こえた直後に、モニターにみかんの姿が映りました。
「調子はどう? 私姿見えてる?」
「見えてるよ!」
みかんの質問に陽菜が答えます。
さて、先ほど建物に入った地点から離れているせいか、周りには何もないように見受けられました。
広大な南地区…実験にはもってこいなのかもしれません。
「…と言うように、自分で動かしたいようにイメージするだけだから、やってみて!」
そんなことを考えている間にも説明が終わったようです。
陽菜が手順に沿って車を発進させました…
「ひゃっほう! 私は風になる!」
急発進に急加速、猛スピードで何もない土地を暴走し始めました。
「さすが、遊園地のゴーカートで係員が止めに入るような暴走っぷりを見せた陽菜だ…研究データを取るにはもってこいだな…。」
そんなことよりも一緒に乗っている私の心配をしてください!
それに、陽菜が暴走狂だなんて今の今まで知りませんでしたし…
「あの夕日に向かって走るわよ!」
それは、青春ドラマのエンディングとかで言ってください!
そもそも、その場合は、車で走るではなく、人の足で走るときの言葉だと思います…
「そうだな…戻ってくるまで時間がかかりそうだし、思う存分ドライブを楽しむといい…それでは、安全を祈っている。逝ってらっしゃい。」
そう言い残して画面が消えて暗くなりました。と言うか、「行く」の字がおかしかったのは気のせいでしょうか?
「って言うか本当にやばいかも…。」
何もない平らな平原とはいっても、そのうち海溝だの岩だのありそうですし、このままほっておくという訳にも…
「牡丹! ちゃんと掴まってなさいよ!」
「えっ?」
陽菜が何をしようとしているのか、理解できなかったが、次の瞬間、一気に横にGがかかり、ドリフトをしたのだと理解できた。
イメージで操作しているとはいえ、ここまでの事が出来るとは…なにか裏がありそうです。
「陽菜…あなた、車運転してるんじゃないの?」
「えっ? 違うよ…車のバトルマンガを読み漁ってるだけよ! と言うか少し黙ってて! 舌噛んでも知らないわよ!」
そう言うことでしたか…
つまり、ドリフトだの峠を攻めるだのそう言うマンガを読んだイメージで運転しているわけですか…
「乗ってきた!」
いつの間にか、何もない平原から小石がゴロゴロとしているような場所に来ていました。
そんな道を勢いよく走っているものですから、当然ながら車は大きく揺れました。
「もう降ろしてー!」
私の断末魔にも似た叫び声は、遠く離れた研究所まで聞こえていたという…
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