第1話 潜水機能付きの船って…
見渡す限りの大海原…何も見えない海を、ひたすら北へ向けて船を動かしています…
私、北上牡丹は、船の甲板で大の字に寝転がっていました。
「牡丹! 島の一つも見えないぞ…大陸に引き返すか?」
上の方からヴァーテルが顔をのぞかせました。
「もう少し行ってみよう…何もないなんてことはないと思うから…。」
私が、そう返事をするとヴァーテルは、返事をしてから元の位置に戻って行きました。
「でもさ…こんな船に乗れるなんて思ってなかったよ…。」
メインマストにもたれかかった上代竜也がそう言いました。
彼の言う通り私たちが今乗っている船は、かなり前に製造された帆船で、どこかのアニメの海賊が乗っているような船でした。仮に日本にあったとしても、そう簡単に乗れるようなものではないと思います…(実際どうなのかは知りませんが…)
「しかし、いったいどうやったんだ? 戻ってきたらスティーリア姫と仲良くなってたし…。」
「まぁ…仲良くなったって言うより仲直りね…どうやったかは、秘密だけど…。」
経緯はどうであれ、結果的に快く船を貸してくれるほど、仲良くなれたわけですが、船を貸すからついでに海底の調査もして来いという注文を付けられました。
まぁ深い海底の底と言うのは、何があるのか気になりますが、私たちに頼む必要があるのでしょうか?
「それで…どうやって海底調査するの?」
「聞いた話だと、ある程度、深さにある海に出ると自動的に潜水するようになっているらしいから、そのうち海底に向かうと思うけど…。」
私が言い終わるのが早いかと言うようなタイミングで船が潜水を始めました。
徐々に下の方から、水の中に入って行きます。船の上部には、透明のドームが出てきているらしく、それが、水を船内に入らないようにしているようです。
「甲板にいると危なくないか?」
「大丈夫! その辺もいろいろと仕掛けてあるらしいから…。」
ヴァーテルは、いろいろと不安なようです…
確かに、ただの帆船で海底を旅しようと言って不安に感じないことはないですが、緊急用の機能も充実しているらしいので、心配は不要だと思います。
「具体的に何が搭載されているんだ?」
ヴァーテルは、私の方を見ながらそう言いました。
この船の機能については、潜水機能と船酔い防止機能以外は聞いていないのですが、スティーリアは、甲板にいようがどこにいようが、船内にいれば絶対安全だと言っていました。
「まぁもしものことがあっても、何かしらの機能が働くでしょ!」
私は、そう言い残して船室に入って行きました。
この船は、なかなかの大きさを誇るのですが、どういう仕組みになっているのか、船をうごかす操作は、基本的に方向を指示する以外はいらないので、簡単に動かすことができるそうです。
「すごい! お魚いっぱい!」
船室に入ると、アウラは窓にへばりつくような形になって外を見ていました。
「海の中にはいっぱい生き物がいるのよ…すごいでしょ?」
「うん!」
船は、どんどん海底へと進んでいきます。
スティーリアから渡された海図を見ると、このあたりは相当深い海溝になっているらしく、その向こう側に行けた人間はいないと言っていました…何でも、海溝の真上を船で通過しようとすると、壁のようなものに阻まれてすすめなくなるとのことです…
「謎はすべて海の底ってことか…。」
「海の底! もしかしたら、大きな町とかあるのかな!」
アウラは、目を輝かせています…
町って…その昔に水没した遺跡とかならまだあるかもしれませんが、さすがに町はないのでは…
私は、この時そう思っていました。
私たちを乗せた船は、光が届かないため暗闇となっている海底深くへと進んでいきました。
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