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監査令嬢

裏・投獄された悪役令嬢は、ブチ切れながら監査する

作者: 涙目
掲載日:2026/07/25

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

王城の一室。


窓の外には王都が広がっている。


アメリア・フォン・ローゼンベルクは優雅に紅茶を口へ運んだ。


つい先日まで牢獄にいたとは思えないほど穏やかな時間だった。


扉が叩かれる。


「入ってくださいまし」


現れたのは若い男。


王族の証である金髪。


しかし彼の存在を知る者は少ない。


第二王子レオナルド。


公には存在しない王子だった。


男は静かに頭を下げる。


「謝罪に参りました」


アメリアはティーカップを置いた。


「謝罪?」


「兄上の件です」


言葉を選びながら第二王子は続ける。


「私は知っていました」


「卒業パーティーで婚約破棄が行われることも」


「貴女が投獄されることも」


「そして兄上が失脚することも」


部屋が静かになる。


第二王子はさらに頭を下げた。


「止めることはできました」


「しかし止めませんでした」


「王国は腐敗していました」


「財務省も」


「騎士団も」


「貴族達も」


「兄上も」


「だから私は利用したのです」


静寂。


アメリアはただ男を見つめる。


第二王子は苦笑した。


「貴女なら必ず全て暴くと思った」


「王国を救うために貴女を利用した」


「どうか罰を」


そこで初めてアメリアが口を開いた。


「そうですの」


ティーカップを置く。


小さな音が響く。


そして。


「存じ上げておりました」


第二王子が固まった。


「……は?」


「存じ上げておりました」


アメリアは微笑む。


「卒業パーティーの三日前には」


「え……?」


「貴方の存在も」


「計画も」


「兄君の愚かさも」


「財務省の横領も」


「騎士団の架空発注も」


「教会の不正会計も」


「全部」


第二王子の顔色が変わった。


「全部……?」


「ええ」


当たり前のように言う。


「ですから」


アメリアは優雅に足を組み替えた。


「付き合って差し上げたのですよ」


第二王子は言葉を失う。


アメリアは続けた。


「婚約破棄」


「投獄」


「監査」


「全部必要でした」


「膿を出すには傷口を開かなければなりませんもの」


微笑みながらそう言った。


第二王子はようやく理解する。


自分は盤面を見ていたつもりだった。


だが違った。


自分が駒だと思っていた女は。


最初から盤面の外にいた。


「……恐ろしい方だ」


思わず漏れた言葉に。


アメリアは小さく首を傾げた。


「褒め言葉として受け取っておきますわ」


そして一枚の紙を差し出す。


「ところで第二王子殿下」


「はい」


「謝罪は結構です」


第二王子は安堵した。


しかし。


次の瞬間。


「こちら今後十年の王国再建計画書になります」


安堵は消えた。


「……はい?」


「王太子がいなくなりましたので」


「次は貴方のお仕事ですわ」


紙の束が机に置かれる。


ドン。


第二王子は震えた。


分厚い。


異常に分厚い。


「え……」


「逃がしませんわよ?」


アメリアは美しく微笑んだ。

挿絵(By みてみん)


その日。


第二王子は初めて理解した。


兄が失脚した理由を。


王国を救ったのは悪役令嬢ではない。


---


『帳簿で殴ってくる化け物だった。』


---

お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
Xの企画から来ました。 婚約破棄も投獄も「全部存じ上げておりました」でひっくり返す構図が痛快で、短い改行を畳みかけるテンポが緊張感を生んでいました。駒だと思っていた第二王子が盤外にいた化け物に気づく瞬…
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