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夢tube断章、スカイ・エリアス編  作者: grow
断章 世直し新婚旅行編
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第6話 マリナス共和国1



~港の風と二つの公約~



波止場に響く汽笛、魚市場の喧騒、潮風に混じる塩気――


マリナス共和国は、東部の交易港として栄える海の都だ。


数値教テロで造船所とドックが壊滅し、

大型船不足に喘ぐが、人々の目は未来を見据えている。




スカイとエリアスは砂漠国の成功を胸に、

「クライム」と「エイラ」の偽名で大使館に到着した。



白亜の大使館で、マリナス大使が魚介宴を用意し出迎える。


「クライム殿、エイラ殿! 砂漠での偉業、噂になっております。

王国からの解決屋応援要員、心から歓迎します!」



スカイがエビを頬張り、満足気に


「うまいな、これ。で、港の現状ってのは?」


と単刀直入に聞く。大使の陽気な顔が曇る。



「大型船が足りません。テロで造船所全焼、

修理ドックも破壊。交易停滞、漁業も壊滅です。

そして選挙が……」



エリアスが穏やかに尋ねる。


「選挙と関係あるの?」



大使が頷き、


「両者の公約が大型船を補充で一致しているのですが、その用途の方向性が真逆なんです。


野党レオナルド議員は

大型船を『軍艦建造・海軍発足』で領海防衛に、


改革派のガドリン現首相は

『大型輸送船・交易開放』で国際交流推進。


漁師は網が焼け食うものなし、

商人は船がなく荷が動かず……

国が二分されそうです」



スカイが唸るように、


「船か……いずれにしても現地調査だ。

観光がてら情報集めようぜ、エイラ。」



エリアスがクスクスとイタズラっぽく笑い、


「新婚旅行ですもの、はしゃぎましょうね、クライム様♪」


港町観光は、潮風と活気に満ちていた。

魚市場で飛び交う声、


「新鮮エビ!」「イカ焼きいかが!」と


威勢のいい呼び込み。


スカイが串焼きを頬張り感動して、


「スラムじゃ絶対食えねぇ! 新鮮すぎる!」



エリアスは貝殻アクセを物色し、目を輝かせて、


「クライム、これ似合う?新婚記念に買っちゃおうかしら♪」



そして、波止場で壊れたドックを見やり、

スカイが深刻に呟く。


「大型船不足……数値教め、ここまでやるか……」



エリアスが肩に優しく手を置き、


「あなたなら解決できるわ。見て、民が

頑張ってるのよ」



その後、海鮮食堂でガキを平らげ、


「新婚旅行最高!」と盛り上がる二人。


隣のテーブルから青年達の熱い声が聞こえてくる。


「親父のヤツ、軍艦建造とか……領海守るったって、他国と戦争すんのかよ!漁師が網もねぇのに!」


と苛立ちをグラスにぶつける。


それを見た仲間が宥め笑い、


「レニール、落ち着けって。選挙なんかより俺らの海運が大事だろ」


「お前さ、ララちゃんの父上――首相の方針の方がマシだろ?交易開放とか、前向きじゃん」


等まさに若者の会話が弾んでいた。




スカイがチラリと興味深げに見やり、


「なんだか熱い話だな」


エリアスも目を輝かせ、


「現地の声ね、声かけてみましょう。」


リーダーらしき青年――


24歳のレニールが立ち上がる。


海運業のローブに鍛えられた体、

鋭い眼差しが俊英を物語る。


近づいてくるスカイ達に

「誰だ?」と警戒の視線。



スカイが自然にグラスを気さくに掲げ、


「なに、ただの観光客だよ。

王国から来た解決屋、クライムだ。こっちは秘書のエイラ。君達なかなかタイムリーな話してたろ?港の揉め事か?」


レニールが一瞬警戒しつつ、椅子を引く。


「解決屋だったのか? へぇ……いいぜ。座れよ。

オレ達も解決屋には世話になってるからな。話してやるよ。俺はレニールだ。よろしくな。」


とグラスを勧める。



レニールの悪友たちが歓迎ムードで、


「おう、新顔!」「魚食えよ、旨いから!」



エリアスが優雅に座り、微笑んで


「ありがとう。私たちで、少しでもお役に立てれば嬉しいわ」



レニールがグラスを置き、真剣に語り出す。


「このマリナスは交易と漁業の国だ。


数値教のテロで造船所全焼、大型船が作れず交易死に体。漁師は網焼かれて魚が獲れねぇ。親父――


野党レオナルド議員は『軍艦で領海防衛』、


ガドリン現首相は『輸送船で交易開放』


の選挙バトルだ。どっちも大型船必要って点では一致してるが、方向性が真逆さ!」



スカイが頷き、


「軍事か交易か、か。お前の立場は?」



レニールが誇らしげに胸を張る。


「俺は親父の強硬路線に嫌気がさして、

海運業を自分で始めた。小型船かき集めて

漁師の魚や物資などを市場直送、物流を回し

始めてる。


俺は近い将来、大型船を手に入れて俺の

海運業で世界を回す!」


そう熱く語ったレニールは拳を握る。


中間が笑って、


「あぁ、レニールがリーダーだぜ!

選挙なんかより俺らの海運よ!」


そしてもう1人はニヤニヤして、


「でもよ、レニール。

そんな仕事ばっかでララちゃん――

首相令嬢が寂しがるんじゃねえのか?

他の男に取られても知らないぜ?」



レニールが顔を赤らめ、慌てて否定。照れ隠しに


「バカ言うな! ララは……幼馴染だよ。

確かに首相の交易路線は正しいとは思うが……選挙であの調子じゃ、

親父も首相も俺とララの婚約を認めねぇよ……」


と気の抜けた表情を見せる。


エリアスが優しく微笑み、グラスを叩く。


「素敵な関係ね、レニールさん。想い合う二人が障害に立ち向かうなんて、応援したくなるわ。」


スカイがグラスを力強く掲げ、


「よし、情報感謝だ。大型船と漁業、両立の

策考えてみるぜ。お前らと一緒にやんねぇか?」


レニールがカッと目を輝かせ、興奮した様子で、

「マジか!? 解決屋なら本物だろ?

近いうちに俺の海運業手伝えよ!

ララのためにも、マリナスを変えてやる!」


悪友たちが拍手喝采。


「おう、やろうぜ!」


「新婚夫婦、歓迎だ!」



こうして、スカイとエリアスは、


選挙渦中の若き海運王レニールと出会った。



海鮮食堂での出会いを終え、レニールは仲間たちと立ち上がった。


レニールは悪友達を見回し、


「よし、みんな。小舟の準備だ! 漁師の網、

今日も市場直送すっからな。

スカイ、エイラ、また後で会おうぜ。

俺の海運業、楽しみにしててくれよ!」


悪友達は肩を叩き笑って


「おう、レニール!今日も俺らの船で

かっ飛ばそうぜ!」


「ララ嬢ちゃんの為にも実績挙げねえと、

婚約認められねぇぞ~!」


レニールが顔を赤らめ、


「うるせぇ! さっさと仕事にかかるぞ!!

親父も首相も勝手にやってろ!」


と照れ隠しに背を向ける。颯爽と去る姿に、


スカイが感心して呟く。


「あいつ、結構熱い奴だな。親父に反発

しながら、自分の道突き進むとか……

嫌いじゃない。」


エリアスも柔らかく微笑み、


「ええ、きっとレニールさんみたいな人が、マリナスには必要なのよ。いずれ未来を

変えるわ。」


二人は好感を抱きつつ、レニールを見送る。


「よし、じゃあ観光再開だ。海の景色、

堪能しようぜ、エイラ。」


スカイ達は海を一望できる公園の頂上へ。

青い海面がキラキラ輝き、白い帆船が優雅に

舞う絶景に、柵に手を置き、息を呑むエリアスが感動の声を上げる。



「うわぁ、なんて美しいの……! 

王国の外の近くには湖はあったけど、

ここの青い海がどこまでも続いて、まるで

宝石の絨毯みたい。クライム、見て!

これがマリナスの誇りなのね……

心が洗われるわ。」



スカイはそんなエリアスの横顔を、愛おしそうにに見つめる。


「ああ、まさに絶景だな。でもよ……お前がこんな顔で喜んでる方が、俺には最高の景色だぜ、エイラ。」


エリアスが顔を赤らめ、スカイの腕に甘く寄り添う。


「もう、クライムったら……そんな嬉しい

こと急に言わないでよ。心臓がドキドキ

しちゃうじゃない……」


二人が見つめ合う甘い瞬間、公園の広場からざわめきが。


「ん? あそこ、何かやってるぞ」


とスカイが目を凝らす。


人だかりの中心に壇上――選挙渦中の二人、


レニールの父レオナルド・ジョシュア議員と、


現共和国首相ガドリン・マリドネルが討論会を繰り広げていた。


レオナルドが壇上で拳を振り上げ、力強く訴える。


「大型船の補充は確かに必要だ!だが、

私は元々共和国に海軍の必要性を訴えてきた。

そして数値教テロの惨状を見て、その重要性を再認識した!大型船を軍艦に変え、海軍を

組織せよ!

自国の領海、豊かな漁場を外敵から守るんだ!」


レオナルドの発言に漁業関係者が大声で賛同。


「そうだ、レオナルド議員!」

「俺たちの海を守ってくれ!」

「テロの恨み、軍艦で晴らしてくれよおお!!」



対するガドリンが、冷静に手を広げて反論。その声は穏やかだが力強いものだった。


「レオナルド議員の保守路線では、我が

共和国は軍拡国家の烙印を押され、各国から

孤立します! 

元来マリナスは海の交易で栄えてきたのです。

私は世界サミットで王国のエリアス陛下の

外交手腕を見て、国際交流の重要性を痛感

しました。

大型船を輸送船とし、世界と手を繋ぎ、

我が国も手を差し伸べるべきです!」



商工会や市民が追随し、拍手喝采。


「首相の言う通りだ!」

「エリアス陛下を見習え!」

「交易でみんな食えるんだよ!!」


思わぬところでエリアスの名が出た瞬間、

スカイがニヤニヤとからかう。エリアスの肩を突つき、意地悪く笑うと、


「おいおい、エイラ。お前の名前で討論バトルじゃん!

『国際交流の象徴』だってよ。世界的に有名人だな~♪」


エリアスが顔を真っ赤にし、体を縮こまらせて慌てふためいた。


「クライム、からかわないでよ!

私、そんな大それた象徴なんかじゃないわよぉ……恥ずかしいんだからっ!」


そんな中、レオナルドとガドリンの言い合いは続く。


「軍艦で守るのが先だ!」


「交易で富むのが正道だ!」



と火花を散らすが、司会者が


「お二人共、お時間です!」と割って入り終了。


両者に拍手が送られ、レオナルド側は颯爽と去る。


ガドリンはレオナルドの背中へ深いため息をつき、


「まったく、あの頑固者は相変わらず強硬

だな……いつになったら分かり合えるんだか」


と独り言。ふと視線を上げると、スカイたちに気づく。

やがてガドリンは、二人に近づきながら声を弾ませる。


「おおっ! これはこれは……エリアス陛下

にスカイ殿!お二人の結婚式以来ではありませんか! 

お二人ともお変わりなく!」


スカイが苦笑し、


「見つかったか……ご無沙汰してます。

ガドリン首相、討論会ずいぶん熱かったですね。お疲れ様です。」


エリアスも微笑み返すが、少し照れくさそうに。


「ガドリン首相、お久しぶりですわ。私達の結婚式以来ですか。そんなに経った気がしませんね。」


ガドリンが豪快笑い、再会の喜びを隠さずに、


「ハッハッハッ!!、世界の英雄であるお二人がマリナスに!

噂で解決屋ご夫妻でご旅行と聞いておりましたが、まさか本当だったとは!

あの世界サミットで陛下の仲介にお力をお借りしたあの日から、一度じっくりとお話ししたかったんですよ!」



しかしスカイが釘を刺す。


「大変嬉しいですが、ガドリン首相。

できればオレ達の正体を公にするのはお控え

願います。選挙に影響が出かねません。

観光客のクライムとエイラでお願いします。」



ガドリンが胸を叩き、即答。


「もちろんです! エリアス陛下の威光を

借りて選挙に勝っても、フェアじゃありませんからな。

常識ある商人の意地ですよ!それに、

お二人の新婚旅行を邪魔する程無粋ではありません。

またの機会を密かに楽しませていただきますよ。」



スカイとエリアスがホッと胸を撫で下ろす。


「ご配慮感謝します、首相。」


「ええ、本当にありがとうございますわ。」



ガドリンが温かく付け加え、


「どうぞ、マリナスを存分にお楽しみあれ。美しい海が自慢ですよ!」


と笑いながら手を振って去っていった。



二人が見送る中、不意に柔らかな声がした。


「あの……、お話し中、すみません……。」


振り向くと、そこにエリアスと同い年くらいの可憐な女性。


不安げな瞳に、長いウェーブのかかった髪、海辺に似合う淡いドレス。


ガドリンの娘――レニールの幼馴染、

ラネーゼ(愛称ララ)だった。



ララはおずおずと手を合わせて、


「私……マリナス現首相ガドリンの娘のララっていいます。

お父様から、お二人のお話を伺いましたの。

少しだけ……お話し、聞いてもらえませんか?」



スカイとエリアスが顔を見合わせ、優しく頷く。


「もちろんよ、ララさん。何か悩み?」


「どうか、座ってくれ。訳ありみたいかな?」


公園のベンチに腰掛け、ララから告げられる新しい気配。



マリナス共和国の渦中が、さらに深まっていく――





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