表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢tube断章、スカイ・エリアス編  作者: grow
断章 世直し新婚旅行編
50/51

第47話 商会連邦ゴールドリーフ4



ギャレンが立ち上がる。


「よし、確かめるぞ。俺のツテを総動員して

“本当に偶然か”調べる。」




レオンはうへぇという顔で、


「……マジでやるのかよ。」



「当然だ。壊れてるもんを見過ごす職人なんざ腐ってる。」 



こうして二人は、

ギャレンの人脈を辿って各地の修理屋を回った。


古びた時計店、煤まみれの鋳造工房、魔力機整備所。どこでも聞く言葉は同じだった。



「ここんとこ、あのメーカー品ばっかり壊れるな。」


「同じ箇所が焦げてて、原因がわからねぇんだ」 



中には、声を潜めて話す職人もいた。



「……他所の工場で、似た機種が

爆発しかけたらしい。作業員がケガしたってよ」



「なっ……!」


 レオンは息を呑んだ。



 ギャレンの顔に険しさが増す。


「やっぱりな。火が出る前に、

煙の匂いはしてたってわけだ。」




昼時、工房に戻った二人を待っていたのは、

スカイ達だった。

 

「やぁ、また難しい顔してるな。」



「やかましい。いちいち目ざといんだよ。」


ギャレンが唇を尖らせる。

 


スカイは笑って肩をすくめた。



「悪い癖でね。しかしいつにも増して

深刻そうだな。何かあったのか?」



ギャレンが淡々と説明する傍らで、

レオンが修理記録を差し出す。



「最近の故障品、みんな同じメーカーだ。

そして壊れる箇所までほぼ一緒。」



「しかも、ケガ人も出てる。

これが偶然だとは思えねぇ。」 




スカイは少しの沈黙の後、真剣な顔になった。



「わかった。じゃあこっちから正式に動こう。

《解決屋大使館》名義で“安全点検アンケート”を出す。」


「アンケートぉ?」


レオンが眉をひそめる。



「町中のユーザーに問い合わせるんだ。

同じ異常がないかってね。」



「……そんなんうまくいくかよ。」


「悪くないだろ。」 



こうして数日後、

工房には山のような報告が届いた。



紙束を前に、レオンとギャレンは顔を見合わせる。


「……これ全部、同じ部品だな。」


「制御炉の調整ユニット。間違いねぇ。」



ギャレンが手を伸ばし、

修理履歴を数枚重ねて指でなぞる。


「この部品、一つの工場で作られてるはずだ。

製造記号が共通してる。」



その瞬間、スカイが椅子から身を乗り出す。


「特定できそうか?」


「……ああ。

下請けの中じゃそこそこ名のある製造所だ。」


深刻そうな顔のギャレンに何か気付くレオン。


「まさか、ギャレン……」



「昔、取引してた。嫌な思い出つきのな。」 



エイラが眉を下げる。


「でも確かめないと。」


「分かってる。職人の責任ってやつだ。」



ギャレンは笑みを作る。

 

レオンも頷いた。



「それにしても……、

随分でかい話になっちまったな。」

 


「お前、こっからが本番だ。」 


スカイはレオンを見てニヤリと笑った。





翌日。



スカイとエリアス、

そしてレオンとギャレンは、


街の中心にそびえる大手メーカー

《アストラ・マギテック社》本社を訪れた。



白金色の壁、魔導灯で飾られた吹き抜け。

スラム育ちのレオンは思わず目を細める。



「金かけすぎだろ……」


「見た目も信頼のうち、ってことらしいぜ」


ギャレンがぼそりと呟く。



受付に書類を通し、

商品開発部門の担当者が現れる。



整った身なりと表情だけは完璧だ。



「そちらの製造している商品の問題に

ついて伺いたい。」


スカイが低い声で切り出した。

 


担当者は一瞬眉を動かし、それから淡々と答える。



「お話は承りましたが……、

現時点で弊社には公式な不具合報告は届いておりません。」




「じゃあ、この資料を見てどう言い訳する?」



スカイが机に資料束を置いた。

担当者が開き、流し読みし、苦笑する。



「……あくまで個別の修理報告に過ぎません。

弊社の責任とは言い難い。」 



その言葉に、ギャレンの目が細まる。


「おい、怪我人が出てるんだぞ。」



「それはお気の毒ですが、

法的に弊社の関与を証明するには――」



「屁理屈言ってんじゃねぇ!」



ギャレンの怒声に周囲の空気が張り詰める。



「……失礼ですが、今弊社は来週の

お披露目式典で多忙を極めております。

飛行船の完成披露が終わり次第、対応を検討しましょう。」



担当者はあくまで笑顔のまま言った。



「お披露目、ねぇ……」

 

スカイが小声で繰り返す。



「お噂は聞いてますよ。

新型飛行船 《アークグロリア》。まさか、

あれにも同じ工場が関わってないだろうな?」



「ご心配なく。安全確認は済んでおります。」



その言い方に、エイラが小さく眉を寄せる。


「……少なくとも警告はしましたよ。」


スカイが立ち上がった。



「これで何も起きなければ、

それに越したことはないが。」



 ギャレンは何も言わず踵を返し、

レオンに声をかける。



「帰るぞ。こんな連中にゃ何言っても無駄だ」


「……チッ、ほんと胸糞悪ぃ。」 



四人が去ると、

静まり返った会議室に重苦しい空気が残った。



担当者たちは互いに視線を交わし、

額に汗を滲ませる。


「どうする? 結構ヤバい話だぞ。」



「上に報告しとけ。ただし、“外には漏らすな”だ。」



「でも……あの部品、ほんとに限界なんだよ。」



「いいから黙れ。上が後で対処する。」



その声の奥、

豪奢な重役室の扉が音もなく閉まる。

分厚いカーテンの影に、人影がひとつ。

高価な腕時計の針が、カチリと音を立てる。




「……ふん。

また面倒な奴らが嗅ぎつけてきやがったな。」



 

男は書類を束ね、嘲るように笑った。 



その名が、まだ誰の口からも語られることはない。

 


だが――

歪んだ歯車は、確かに音を立て動き始めていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ