第2話 スカイ争奪戦
王宮の地下、大使館専用通信室は、重厚な魔法石の光に照らされていた。
円卓を囲むように並ぶ巨大な水晶球が、
それぞれの国々の大使館と繋がっている。
スカイとエリアスは、中央の主座に座り、
周囲に通信官たちが緊張した面持ちで控える。
新婚旅行の「旅行先」
――まずは、各国の現状を把握し、目的地を決める。
「よし、始めようぜ。エイラ秘書、メモ頼むな」
スカイがいつもの解決屋口調で言う。
エリアスはノリノリで、
「了解、主様♪ 各大使館、応答確認を」
通信官の一人が水晶球を起動。
次々と国旗の紋章が浮かび、
異国で働く大使館職員の顔が映し出される。
エスティア王国、バルド公国、ゼフィロス連邦……
20近い大使館が一堂に会す、異例の緊急通信だ。
「スカイ殿! エリアス陛下、ご機嫌麗しく!」
「こちらバルド大使館、応答確認!」
応答が揃うと、スカイが現状確認へ。
「各国の復興状況、詳しく聞かせてくれ。
定期連絡じゃ断片的だからよ。数値教テロの
傷跡、どうなってる?」
大使たちが順に報告を始める。
エスティア大使館、
「水道網の半分が破壊されたまま。疫病が流行寸前です」
バルド公国大使館、
「農業土壌が汚染され、飢饓懸念。食料輸入に頼り切り」
ゼフィロス連邦大使館、
「道路崩壊で交易停滞。物流が死に体です」
……どの国も、復興が遅れ、深刻な問題を抱えていた。
スカイは何度か定期連絡で耳にしていたが、改めて聞くと顔が曇る。
「やっぱりか……みんな苦しんでんな。
支援物資だけじゃ追いつかねぇよな」
エリアスが隣でメモを取りつつ、優しく肩に触れる。
「スカイ、焦らないで。あなたなら解決策、
すぐ浮かぶわよ」
スカイは深呼吸し、心配そうな目で水晶球を見つめる。
「あのさ……例えばだけどよ。オレが直接、現地に行って、大使館を拠点に問題解決するとしたら……来てほしいか?」
一瞬の沈黙。水晶球の向こう、大使官職員達の顔に「?」が浮かぶ。
「スカイ殿が……直接?」
「それは、どのような……?」
意味が伝わらない様子に、
スカイはイラッと来て、ええい、ままよっ! とヤケクソになる。
「わかった!ハッキリ言うぜ!!
オレが、数日間だけ各大使館の臨時代表として現地に行って、解決業務に協力する!!
別に強制じゃねぇよ!!迷惑なら断ってくれっ!!」
その瞬間――通信室がどよめきに包まれた。水晶球の向こう、大使たちの目が輝き出す。
「スカイ殿が直接!?」
「王国の英雄が我が国に!?」
「嘘じゃないですよね!?」
認識が一気に追いつく。スカイ――
数々の知識を持ち、数値教を打ち砕き、王国復興を成し遂げた伝説の男。最強戦力が、
数日でも現地に来る!?
そしてスカイ争奪戦の火蓋が切られた。
「こちらエスティア大使館!最優先でスカイ殿を!!水道技術、切実に!!」
「待て、バルド公国だ!農業改革なしでは国が滅ぶ!!」
「ゼフィロス連邦!交易路復旧が急務!スカイ殿、助けてください!!」
我先にとラブコールが殺到。
「スカイ様、我が国は王妃殿の視察に最適な温泉宿を用意します!」
「新婚旅行にぴったりの南国リゾート! 秘書の方も美女揃いで歓迎!!」
「スカイ殿の知識で、永世友好条約を!!」
水晶球の向こう、熱狂の嵐。
通信官たちが
「大使館同士で喧嘩が……」
「スケジュール調整に苦労しますよこりゃあ
……」
と慌てふためく。スカイは唖然。口をポカンと開け、
「お、おいおい……マジかよ。オレ、
ただ協力するっつっただけなのに……争奪戦かよ!?」
エリアスは隣でニンマリ。スカイの人気に、妻として自慢げ。
「ふふん、私がスカイを選んだ目、正しかったわ♪
世界中があなたを欲しがってる。秘書エイラ冥利に尽きるわね」
スカイが照れ臭そうに頭をかく。
「お前、楽しそうだな……でも、これヤバくね?
新婚旅行のはずが、ワールドツアーじゃん!」
通信官の一人が苦笑い。
「スカイ殿を巡って各国が我先にと要請……カオスですよ」
別の通信官も頷く。
「新婚なのに、世界の英雄扱い。陛下の嫉妬が心配ですな」
エリアスがクスクス。
「嫉妬? ないない。私、スカイの秘書よ? 夜は二人きりなんだから♪」
スカイの顔が赤くなり、
「こらっ、エイラくん!公衆の面前で何言ってんだよ!!」
スカイ争奪戦はエスカレートし、収拾がつかない。
スカイは頭を抱えつつ、内心ワクワク。
「参ったな……でも、これで各国を救えるぜ。エイラ、予定決めようか」
エリアスがスカイの手を繋ぐ。
「もちろんよ、主様♪まずは一番深刻な国から。新婚旅行、最高の冒険になりそうね!」
こうして、二人の「新婚旅行」は、世界中
からの熱狂的な要請に包まれ、幕を開けた。
秘書エイラと主スカイの、問題解決の旅が―。




