第43話 紫雲東方帝国13
新政権の改革が軌道に乗り始めた朝。
スカイ達の見送りには、
蓮姫、盧玄清と盧婉蓉の親子、
趙昇明、姜烈峰、陳鉄也ら
クーデター各班リーダーたちが勢揃い。
馬車の前で、別れを惜しむ重臣・同志たちの顔に
感謝と寂しさが交錯する。
蓮姫はでスカイの腕に縋り付き、声を震わせる。
「スカイぃぃ!! 本当に行ってしまうのかや!?
別にこんな、年増の女と律義に義理立てし、
旅をして過ごすこともないじゃろ!!
お主ならこの紫雲東方帝国で、
妾と共に幸せに暮らせて行けるのじゃぞ!?」
周囲が一瞬凍りつく。
エリアスのこめかみに青筋が浮き、拳を握り締める。
エリアスは歯軋りし、
「年増…だと…? この小娘…!!」
趙昇明は苦笑する。
「相変わらず姫様、エリアス殿に辛辣だな…」
姜烈峰は大笑い、
「ハハハ! 姫の愛が重てえぜ!」
スカイは困り果てた顔で蓮姫の頭を優しく撫でる。
スカイは穏やかに、
「ありがとうな、蓮姫。でも君はもう一人じゃない。
盧玄清殿と婉蓉さん、趙昇明たち、
君を慕ってくれる人たちがそばにいる。
俺たちにできることは全部やったつもりだ。」
蓮姫が顔を上げる。
スカイは照れながらエリアスを見て、
「それに…
やっぱり俺はエリアスと旅を続けたいんだ。
エリアスは…俺が心に決めた人で、
俺自身の人生の一部みたいなもんだから。」
エリアス、胸が熱くなり頬を染めてスカイを見つめる。
一同から「オオ〜」と温かい声。
蓮姫は俯いて唇を尖らせる。拗ね声で、
「…仕方ないのじゃ。
これ以上引き留めてスカイから嫌われたくはない。
じゃが!! この年増に愛想が尽きたら、
すぐにこの帝国に来てたもれ!!
妾は何時でも両手を広げてスカイを受け入れるからな!!!」
再びスカイに抱きつき、わざとエリアスを挑発。
エリアスが「離れなさい!」と引き剥がそうとする。
そこへ盧玄清が穏やかな笑みを浮かべて一歩前に出る。
そしてその場で深々と礼をした。
「スカイ殿、エリアス陛下。此度の我らへの協力、
紫雲東方帝国を代表して感謝申し上げます。」
とスカイとエリアスに握手を求める。
盧玄清は感慨深く、
「貴殿らがこの帝国を訪れたことが、何よりの幸運でした。
クーデターが成功したとしても、スカイ殿が
蓮姫様を正気に戻してくれなかったら…
我々は蓮姫様に手を掛ける覚悟も必要だったでしょう。それは帝国最大の損失です。
本当に、この小さくも尊い志を失わずに済みました。」
蓮姫を慈しむように見つめ、力強く握手。
一同が頷き合う。
盧婉蓉も嬉し涙を浮かべ一礼。
「私からもお礼を申し上げます。
お二人のおかげで、こうして父ともう一度会えました」
父・盧玄清を愛おしそうに見つめ、続ける。
「紫蘭華様の歪みも…花嫁講座で聞かされた
『帝国の未来』と『悪女の末路』
…本当にゾッとする話でした。
女性達にとっての自由を犠牲にしても、
あの方を止めたのは正しい選択だったと、
今は思います。」
その言葉にスカイはふと尋ねた。
「そういや、紫蘭華はどうしてるんだ?」
趙昇明が鼻で笑い、
「ああ、今も幽閉部屋で監視は万全だが、噂じゃあ
『あの人はなぜ私を愛してくれなかった』だの、
『私の努力は誰にも認められない』だの、
『幸せを望むことが罪なのか』って、
自分が不幸だったことだけを呟いてるらしいぜ。
全く呆れた女だ!」
姜烈峰が豪快に、
「あんな暴君が今さら泣き言かよ!
最後くらい潔く散れっての!」
陳鉄也は拳を胸に、
「スカイ殿、俺の鉄の意志を鍛えてくれて感謝する!
紳士講座もバカにできねえぜ!」
林秋水は微笑み、
「お二人のお言葉、胸に響きました。大切にします。」
別れの挨拶が続く中、いよいよ馬車が動き出す。
別れ際、蓮姫がエリアスを呼び止め、耳元で囁く。
蓮姫はイタズラっぽく微笑み、
「今回は帝国を救ってくれたゆえ、
スカイのことは一旦引く。
じゃが、まだ諦めたわけではないぞ?」
エリアス驚愕の表情。蓮姫はさらに
続けて耳元でニシシと悪戯笑いを作り、
「妾にスカイを取られたくなければ、
精々子作りに励むことじゃな♪」
蓮姫、ウインクして去る。
「なっ…なっ……。」
エリアス、真っ赤になって口をパクパク。
スカイがそれに気付いて、
「エリアス、どうかしたか? 顔赤いぞ?」
エリアスは叫ぶ。
「何でもないっ!!!
早く馬車に乗って出発しなさい!!」
一同が笑う中、馬車が帝都を後にする。
街道を進むスカイは馬車内で帝都を振り返り苦笑。
「いや〜、帝都は最後までドタバタ劇だったな。
全く、蓮姫には呆れるよ。」
エリアス、スカイの手をギュッと握る。
エリアスは真剣に、
「スカイ…今までずっと頼り切りでごめんね。
私もスカイの力になりたいから、
これからは遠慮なく頼って!!」
エリアスの言葉にスカイは驚き笑顔になる。
「お、おう! もちろん、
遠慮なく頼りにしてるぜ、エリアス!
お前がいてくれるから俺も頑張れるんだよ。」
二人の絆が強まる瞬間、エリアスが蓮姫の言葉と
過去のダンスシーンを思い出し、ジト目。
エリアスはふてくされたように、
「…スカイ。私とも踊って。」
スカイはエリアスから圧を感じ、
「はっ!? 急にどうした!?」
エリアスは頬を膨らませ、
「私もスカイと踊りたいのっ!!
絶対に機会を作って、私と踊って!!」
スカイはタジタジになり、
「わ、わかったよぉ…!
約束するから落ち着けって!」
朝日の中、馬車に夫婦の笑い声が響く。
新たな冒険へ旅立つ解決屋二人。
スカイは地平線を見つめ、
「次はどんな国が待ってるかな…行くぜ、エリアス」
エリアスはスカイに寄り添い、
「ええ、どこへ行っても一緒にね♪」
紫雲東方帝国の新時代を見守りながら、
二人は未来へと進む――




