表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢tube断章、スカイ・エリアス編  作者: grow
断章 世直し新婚旅行編
43/51

第40話 紫雲東方帝国10




帝都地下通路・とある隠れ家



脱出から2時間後薄暗い松明の光が石壁を照らす中、


革命軍の主要メンバーたちが円陣を組む。



侵入班

スカイ、エリアス、蓮姫、盧玄清ロ・ゲンセイ姜烈峰ジャン・リエンフォン


撹乱班リーダー林秋水リン・シュウスイ、待機班リーダー馬雲得マー・ウンデが集結。



空気は血と汗の匂いで重く、皆の顔に疲労と決意が刻まれている。


林秋水リン・シュウスイは息を切らし、血まみれの報告書を広げる。


「状況は最悪だ。中央広場で陽動班リーダーの

趙昇明チャオ・ショウメイと同志60名が女兵士部隊に捕まった。


双方に犠牲者多数――

我々15名、女兵士側も20名以上。

原因は姫捜索の女兵士たちと鉢合わせたことだ。


紫蘭華シランカは見せしめで近々公開処刑を計画中。

帝都全域に布告が出た。」



蓮姫は顔を覆い、震える声で、


「そんな…女官や女兵士にも犠牲が…

趙昇明チャオ・ショウメイさんたちまで…なんでこんなことに…

これは妾のせいなのか…?」


一同、沈黙が広がる。


蓮姫の自責の目に、誰も言葉をかけられない。

林秋水リン・シュウスイは深刻な顔で続ける。


「さらに傍受した宮廷通信から判明した。

女官長――盧玄清(ロ・ゲンセイ殿の娘・盧婉蓉(ロ・エンニョ)

紫蘭華シランカの直々の命令で監禁された。

『人質として使う』と。忠臣の娘をあっさり

切り捨てたんだ。」



盧玄清ロ・ゲンセイは膝をつき、拳を石床に打ちつける。


婉蓉(エンニョ)が…やはり人質に使ってきたか…っ!

紫蘭華(シランカ)め、どこまで腐ってるのだ…!」


盧玄清ロ・ゲンセイの声が嗄れ、肩が震える。

父としての苦悶が一同を圧する。



蓮姫は涙を流し、絶望の表情。


「そんな!!婉蓉(エンニョ)は…母上を長年支えてきたのに…

妾にだって幼い頃から宮廷で

私を見てくれて、優しくしてくれた…

それを人質として監禁だなんて…

母上、どうしてそんな冷たいことを…」




部屋に重い静寂が落ちる。

蓮姫の純粋な悲しみが、革命の重みを増す。



スカイは静かに蓮姫に近づき、肩に手を置く。


「蓮姫。これでもまだ紫蘭華(シランカ)が正しいと思えるか?

忠臣の娘を切り捨て、民を犠牲にしても

自分の統治を貫く…それが本当の女帝の姿だ。

幸福数値の裏に隠された、血塗られた真実だ。」



蓮姫はスカイの言葉に詰まり俯く。

瞳に葛藤の波が揺れる。


エリアスは厳しく、だが励ますように、


「目を覚ましなさい!あなたの母は暴君よ。

趙昇明チャオ・ショウメイさんも婉蓉(エンニョ)さんも、貴女の母の犠牲者よ。

私たちが変えるのよ! 貴女も一緒に!」


蓮姫、涙を堪えて俯く。



盧玄清(ロ・ゲンセイ)は立ち上がり、涙を拭い、声を張る。


「…胸が張り裂けそうだ。

だが革命を止めるわけにはいかん。

娘のためにも、同志のためにも!

馬雲徳マー・ウンデ、陽動班の予備戦力を確認したか?」



馬雲徳マー・ウンデは地図を広げ、冷静に


「残り50名を確保済み。武器庫から棍棒100本、

弓50張、矢500本を押収。

帝都外縁の隠れ家に待機中。即座に動ける状態だ。


陽動班の予備リーダー・陳鉄也が士気高く待機している。」



盧玄清ロ・ゲンセイは、地図を睨み、拳を握り締める。


「良し。作戦はこうだ。

予備戦力50名を率いて、公開処刑前に

趙昇明チャオ・ショウメイと同志60名を解放。

その勢いで紫雲宮廷に総突入、

紫蘭華シランカの統治を終わらせる!

二段構えの電撃作戦だ!」


一同、息を呑む。

盧玄清(ロ・ゲンセイの眼光が鋭く光る。


林秋水リン・シュウスイ、引き続き帝都全域で撹乱を継続。

市場、港湾、市政厅――

不満分子を扇動し、民衆を味方につけろ。



馬雲徳(マー・ウンデ)、予備戦力の援護と後方支援を頼む。

趙昇明チャオ・ショウメイ救出時の陽動もお前に任せる!」



林秋水リン・シュウスイは拳を胸に、


「承知! 帝都を炎上させてやる!」



馬雲徳マー・ウンデも頷き、


「援護は完璧だ。処刑台を灰に変える!」



スカイも作戦に加わり、


「侵入班は俺とエリアスも参加する。

蓮姫は…最終対峙の切り札だ。」



蓮姫は涙を堪え、拳を握る。


「わかった…妾が母上を止めよう。

趙昇明チャオ・ショウメイ婉蓉(エンニョ)、皆のためにも…」


一同、拳を天に掲げ、円陣を組む。



地下室に革命の誓いが響き渡る。


紫蘭華シランカ)打倒! 新時代を! 

趙昇明チャオ・ショウメイ婉蓉(エンニョ)救出! 紫雲宮廷制圧!」



松明の炎が激しく揺れ、一同が決戦に集中する中、

蓮姫は心に迷いを抱えていた――



帝都地下通路・隠れ家



作戦会議直後一同が散会し、松明の灯りが揺れる中、



蓮姫がスカイ、エリアス、盧玄清(ロ・ゲンセイを呼び止める。



他の同志たちが去った後、

4人だけが残る薄暗い一角。

蓮姫の瞳に迷いが揺れる。



蓮姫は、自信がなさそうに小さい声で、


「皆…どうか待ってほしい。

妾は…母上を捕らえることに、まだ躊躇いが…。

本当の気持ちを話しても、いいかの…?」




3人、静かに頷き、蓮姫を取り囲む。


重い空気が流れる。

蓮姫は震える声で吐露する。


「妾は…これまで何も知らなかった。


ただ好き放題に遊んでいた甘ったれな姫じゃった。

だが、スカイが花嫁講座で語った

帝国の悲惨な未来を、直視したくなかった…。


男たちが仕事も家族も奪われ、

女官たちが孤独に怯える現実を…。


そして…もし妾が女帝になったら、

あの重い責任を背負えるのか…?


母上の治世は確かに歪みつつある。

でも今、妾を含めたこの国の女たちが謳歌

している自由を、それを終わらせることが

本当に正しいのか…分からないんじゃ…。

母上を裏切るのが、正しい道なのか…。」



蓮姫、涙が頬を伝い、石床にぽたりと落ちる。


未熟な少女の告白に、3人の胸が締め付けられる。



スカイは解決屋らしく説明した。


「蓮姫、このクーデターが紫雲東方帝国を

救う理由は明確だ。


紫蘭華(シランカの女尊男卑が続けば10年後、

男半分が餓死か国外逃亡、女は男不足で独身地獄。

20年後には帝国は崩壊、内戦か他国侵略で

滅亡コース確定だ。


今回の作戦で趙昇明チャオ・ショウメイを救出し宮廷制圧、

そして男女人平等統治に舵を切り

お前が新女帝。これで幸福数値は本物になる。


経済も人口も回復だ。

これは俺の解決屋としての意見だ。

そりゃあ分からないことはあるさ。

だから知ってる人を頼れ。


紫蘭華(シランカ)は独りよがりで誰にも聞かなかった。

だが蓮姫、お前は違う。俺たちに聞け、

盧玄清(ロ・ゲンセイ)殿に聞け、そして民の声を聞け。

それが賢い統治者だ。」


スカイ、ニヤリと笑う。


「独りよがり親子そっくりだな」


と蓮姫を軽くからかう。




エリアスも腕を組み、蓮姫を見つめた。

そして、過去の自分を重ねながら、


「蓮姫、私も昔は貴女と同じだった。

王族としても孤独で、完璧に見せかけて

実は何も分かってなかった。


私はスカイと出会って初めて変われた。

――彼の解決力を借りて、民の声を聞き、

初めて『本物の女王』として行動できたの。


でも正直、今回貴女にスカイを攫われた時――

貴女に図星を突かれて、気づかされたわ。


私、スカイに頼り切りで、

自分一人で何も考えてなかった。孤独になって

初めて自分を見つめ直して、学んだのよ。」



エリアスの言葉にスカイは慌てて庇う。 


「おいおい、そんなことねえよ。

俺たち夫婦だろ?」



エリアスは微笑みつつ顔を横に振った。


「違うの、スカイ。今まで私がどれだけあなたを

頼り切りにしてたか…自分を反省したわ。


だから今度は本当の意味で力を合わせたい。

蓮姫、あなたのおかげで私も成長できたの。

ある意味感謝するわ。

もちろんスカイは渡さないけどねっ!!」



蓮姫はエリアスの率直さに目を見張る。

女王の人間臭さに心打たれる。



盧玄清(ロ・ゲンセイ)は2人の話を聞き、蓮姫を見つめると、

静かに目を伏せ、重い過去を語り出す。



「姫よ。私も同じ葛藤を抱えてきた。

兄――先代皇帝ワンの傍若無人を見て見ぬふりをした結果だ。

王ワンの無道が紫蘭華(シランカ)という怪物を生み出した。


私が止められなかった罪だ。

紫蘭華(シランカ)の統治は男にとっては酷いが、

男達が優遇された時代に女たちが味わった皮肉な過去の差別…


それが自分たち男の罪だと、今は気付く。

女を蔑ろにした報いだ。

その二つの罪を経験してもなお、


姫に何一つ大事なことを伝えられなかった

後悔がある。


だが今度こそだ。

そんな毒親たちの破滅政治に終止符を打ち、

国と民を想う貴女を支え、未来を見守りたい。


この盧玄清(ロ・ゲンセイ)

命を賭けて蓮姫様に忠誠を今ここに誓う!」




盧玄清(ロ・ゲンセイ)は蓮姫の前で片膝をつき、拳を胸に当てる。

涙を堪えた眼光が蓮姫を射抜く。



3人の話を受け、蓮姫は涙を拭い、立ち上がる。


「そうか……

スカイの未来計算、エリアスの学び、

そして盧玄清(ロ・ゲンセイ)師父の後悔…

皆の言葉を聞いてようやく迷いが晴れた。

母上は確かに独りよがりじゃった。

じゃが妾は同じ道は選びとうない。


民に聞き、皆で支え合い…

妾が皆に認められる新女帝になろう!!。

母上を、妾の手で止めて見せる!!

皆の未来を妾に託してほしい!」


4人は手を重ねる。松明の炎が力強く揺れる。

一同は声をあげた。


「共に新時代を!」






深夜、紫雲宮廷・女帝私室



深豪華な天蓋付きベッドに横たわる紫蘭華(シランカ)

絹の寝衣が乱れ、額には冷や汗。

窓から差し込む月光が、部屋に不気味な影を落とす。


紫蘭華シランカ)は震える声で独り言を呟き続けていた。


「私は…間違っていない。

クーデターなど、ほんの小さな騒乱。

蓮姫は…一時的に攫われただけ。すぐに取り戻せる。


私の統治は完璧だ。幸福数値帝国1位…これが証明だ。

この数値の高さが、私の正しさを物語っている…」



紫蘭華(シランカ)は最近の自分の数値を思い出し必死に呟く。



「民は私を愛している。女官も兵士も…

盧玄清(ロ・ゲンセイ)の反逆など、塵だ。

その娘の盧婉蓉(ロ・エンニョ)を監禁したのは

私の正しい判断。忠誠の証明だ…

私が正しい、私が正しい、私が正しい…!」



突然、窓の外から民衆の遠い怒号が聞こえる。


紫蘭華(シランカ)打倒!」


「男にも自由を!」



紫蘭華(シランカ)、ビクリと跳ね起きる。


影が動き、幻聴が襲う。

その幻聴に紫蘭華(シランカ)は錯乱した。


「誰だ!? 誰が私の名を汚す!?

蓮姫! 蓮姫どこだ!? お前まで私を裏切るのか!?」


ベッドから転げ落ち、

割れた鏡の破片を掴む。手から血が滴る。


紫蘭華(シランカ)は狂ったように笑い泣き、


「見てろ…数値が証明してる…私が…正しい…はず…」


扉の外で、女官たちが息を潜めて見守る。


完璧女帝の仮面が崩れ落ちる瞬間。



紫蘭華(シランカ)の狂気じみた叫び声を聞いた

女官たちが、顔を見合わせ震える。


「紫蘭華様…あんな声…初めて…」


「幸福数値1位の女帝が…こんな風に…

女官長を監禁したのも…」




花嫁講座を受けた女官たちは息を呑む。


「スカイ様の言ったとおりだ…。

悪女の末路よ。私たちが受けた講座の通り…

孤独と狂気で自滅する。


紫蘭華(シランカ)様も同じ道を辿るわ。

私たちまで巻き込まれる前に…」



女官たちは覚悟を決める。


「…盧婉蓉(ロ・エンニョ)様を解放しましょう。独断で。私たちだけで」


女官たちが静かに動き出す。

鍵束を手に、地下牢へ向かう。



鉄格子の奥で鎖に繋がれた盧婉蓉(ロ・エンニョ)

やつれた顔に、しかし気丈な表情。


そこへ数人の女官たちが駆けつけ、鍵を開けた。


盧婉蓉(ロ・エンニョ)様…遅くなって申し訳ありません。

私たち、独断で参りました。今解放します。」


盧婉蓉(ロ・エンニョ)は驚愕した。


「あなたたち…紫蘭華(シランカ)様の

命令に背くと言うの?」


花嫁講座を受けた女官は、悲痛な表情で、


紫蘭華(シランカ)様はもう…壊れました。

私室で狂ったように叫んで…


長年、紫蘭華(シランカ)様を支えた婉蓉(エンニョ)様を

あっさり監禁するような統治に、

私たちも未来はありません。

悪女の末路を繰り返させたくないんです。」



別の女官も頷く。


「花嫁講座で教わった『帝国の歪み』…

男尊女卑の報復が女尊女卑になり、

今度は女同士で潰し合う。

これ以上犠牲を出したくありません。」



鎖が外れ、盧婉蓉(ロ・エンニョ)が立ち上がる。


女官たちが短剣、松明を手渡す。


盧婉蓉(ロ・エンニョ)は涙を堪え、力強く、


「ありがとう…皆。紫蘭華(シランカ)様は長年、私の主君だった。

だが今は違う。共に諌めよう。正しい道を示そう。

私が直接、紫蘭華(シランカ)様に伝えるわ。皆、力を貸して。」



女官達が頷く。



地下牢から静かに、

しかし確実に、内側からの革命が始まる――






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ