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夢tube断章、スカイ・エリアス編  作者: grow
断章 世直し新婚旅行編
39/51

第36話 紫雲東方帝国6


スカイから告げられた残酷な未来、

それが自分に降りかかる。


そう言われた蓮姫は、震える手を握り締め

――不安を振り払うように強がって声を張る。


「で、でも! 母上は違う!!

そんな未来の問題など、絶対に起こさせん!

帝国を完璧に統治するはずじゃ!!」


最前列の女官たちが、即座に拍手で応える。



「そうよ! 紫蘭華(シランカ)様は無敵!!」


「幸福数値トップなんだから!!」


「蓮姫様も同じく素晴らしい統治者になれる!!♡」


劇場内に、再び安堵の空気が広がる。





だが、スカイは――静かに首を振る。


「それがな、蓮姫。紫蘭華(シランカ)の統治が、

このまま30年続くとは限らないかもしれないんだ。」



「えっ!?」


蓮姫の大きな瞳が見開き、

劇場全体に動揺の波が広がる。


「何!?」


「どういう意味!?」


紫蘭華(シランカ)様に何かあるの!?」



スカイは、


「これは、王国の歴史学者たちが最近発掘した記録だ。今は存在しない、ある国々の歴史――」


と誤魔化して夢tubeで調べた、

前世の『悪女』たちの末路を話し始めた。



「まずはマリー・アントワネット。

贅沢の象徴、王妃の権力者。

民の不満を無視してドレスと舞踏会三昧。

その後に革命が起こり、最期はギロチン。


『パンがなければケーキを食べれば?』

の一言で永遠の悪女に。」



「ひぃっ…!」


女官たちから血の気が引いた。



スカイは続ける。


「次に、血塗られた王冠を持つ女帝、

エカチェリーナ。


愛人政治と領土拡大で一時は絶頂。

しかし後継者争いと農民反乱で

国はボロボロ、そして最期は暗殺。

華やかな宮廷の裏で、血が流れ続けた。」



……。

女官たちは息を呑む。



スカイは最後に、


「古代の女帝。褒姒ほうじ

美貌で王を惑わし、国を傾ける。

最終的に国滅亡、西周滅亡。

永遠に語り継がれる事になる。」



女官たちは絶句した。


顔を真っ青にしてハンカチを握り潰す者も。



悪女の末路に震える蓮姫、

ガタガタと全身を震わせ始める。


「う、嘘…そんな…妾は…母上は…」


扇を落とし、

ステージ上で膝をつきそうになる。


ワガママ姫の仮面が完全に崩れ落ち、

恐怖に支配された少女の表情。


蓮姫はすがるようスカイに、


「わ、妾は一体、どうしたらいいの…!?

お願いじゃ、スカイ!!! お主なら、

この問題の答えを知っているのじゃろ!?」



スカイの手を掴み、泣きそうな顔で縋り付く。


劇場中、息を呑んで見守る。


だがスカイは蓮姫の手を静かに外し

――顔を横に振る。


「確かに俺は、その答えを知ってる。

でもな――それには、この紫蘭華(シランカ)の統治を

終わらせなきゃならない。」



劇場中――完全な静寂。


「…え?」



女官たちも動揺する。


「…!?」


「終わらせる!?」


「革命!?」


誰も言葉を発せない。

スカイの言葉は、あまりに残酷で、

あまりに現実的だった。


蓮姫は呆然とスカイを見つめる。

震えていた手が、今度は力を失ってだらりと垂れる。


「母上の…統治を…終わらせる…?」


華劇場内に、重い沈黙が落ちる――


絶望と沈黙で重くなった華劇場に、かすかな声が落ちた。




「そ、そうですわ姫様! 今度の夜宴には、スカイ様も参加されるのですか?」



場の空気を変えようとした女官の一言に、

スカイはきょとんとする。


「夜宴?」


一方、蓮姫は、はっとしたように顔を上げた。



「そ、そうじゃった! 忘れておったな……!もちろん!! 

我が愛しのスカイも参加するぞ!!」



「「「おおおおおーーー!!!」」」


女官たちから一斉に拍手と歓声が上がる。




スカイだけが状況を飲み込めず、目を白黒させた。


そのとき、別の女官が身を乗り出して叫ぶ。


「では、夜宴の余興に姫様の舞も観られるのですね!? きゃー!!♡」


その言葉に、蓮姫の顔からスッと血の気が引いた。


「あっ……。」



ぽかんと口を開けたあと、がっくりと肩を落とす。



「そうじゃった……余興には、妾の舞を披露することになっておった……

しかし、全然練習などしておらん……!!」



頭を抱える蓮姫。

女官たちが慌てふためく。


「で、でも姫様! 

例えうまくいかなくても、

舞われる姫様は絶対可愛いですわ!!」



ぎこちないフォローに、蓮姫は床にめり込みそうな顔で呻く。


「可愛いだけでは済まんのじゃ……!!

夜宴はもうすぐだというのに、

今からでは間に合わん! 

ただ恥をかくだけじゃ〜〜!!」



スカイは、そこでようやく口を挟んだ。


「そもそも、その夜宴って一体なんなんだよ?」


蓮姫はため息をつき、スカイへ説明する。


「近々、母上――紫蘭華(シランカ)主催の夜宴

が開かれるのじゃ。

諸国の使節や女官たち、

選ばれた男たちが招かれる大きな宴よ。


そこでの余興のひとつに、

妾がこの華劇場で舞を披露することに

なっておるのじゃが……」



視線を落とし、髪の先をいじりながら、

もう一度ぼそり。


「……全然、練習しておらん……」


女官たちは、あああ、と顔を覆う。




スカイは、その様子を見て、小さく息を吐いた。


(大勢の前で一人で滑るのは、さすがにキツいよな……)


そして、ぽん、と手を打つ。


「じゃあさ」


スカイは蓮姫の正面に立った。


「オレも夜宴に強制参加ならさ、二人で恥かけばよくね?」


「……は?」


蓮姫がきょとんとする。



「ど、どういうことじゃ?」


「ちょっとやってみるから、

言われたとおりに動いてみてくれ」



スカイはそう前置きすると

――蓮姫の前に進み出て、片膝をつき、

ひざまずいた。


「えっ……?」



女官たちが一斉に息を呑む。



スカイは顔を下げ、目を閉じ、ゆっくりと

右手を差し出した。


まるで「Shall we Dance(シャル ウィ ダンス)?」と

誘うかのような、優雅でキザな所作。



蓮姫の胸が、どくん、と跳ねた。


「な、何を……」


「ほら。早く手を取って」


スカイに促され、

蓮姫は真っ赤になりながら、

おそるおそるその手に自分の手を重ねた。


スカイは立ち上がり、蓮姫の両手を軽く握る。


「いいか? ここからは、オレの足を見て真似するんだ」


言うが早いか、スカイはゆっくりと前世の

フォークダンスのステップを踏み出した。


右へ一歩、左へ一歩。

前に出て、後ろに下がる。

リズムに合わせて、軽く回転。


「ひゃっ……!」


突然の動きに、蓮姫は完全についていけず、足がもつれそうになる。


「落ち着け。右、左、前、後ろ。

ほら、もう一回。右、左――

そう、そうそう。いい感じだ」



スカイは、

一つ一つの動きを丁寧に言葉にして伝えながら、

蓮姫と一緒に何度も何度も繰り返しステップを踏む。


本来なら途中で入れ替えや回転が入るところだが、

今回は単純な往復だけを徹底的に反復。


最初は見ていられないほどぎこちない二人の

動きに、女官たちは苦笑していた。



「姫様、足が逆です!」


「スカイ様のつま先、踏んでます!」


しかし、十回、二十回と繰り返すうちに――

いつの間にか、二人の動きは驚くほど滑らかになっていった。



リズムに合わせ、蓮姫の衣装がふわりと広がる。


スカイの手に導かれ、蓮姫の足が自然と正しい場所へ降りる。


「……あ」


見守っていた女官の一人が、小さく声を漏らした。

ぎこちなさは消え、そこには一組の踊る男女がいた。


右へ、左へ。前へ、後ろへ。


単純なステップなのに、なぜか目を離せない。


「姫様……」


「スカイ様……」



頬を赤らめながら、女官たちは二人の踊りに見とれていく。


やがて、スカイが軽く蓮姫を回し、

すっと手を離した。


「ここまで。とりあえず、今ので“基礎の基礎”だな」



華劇場に、拍手が湧き起こる。


「すごい……!」


「さっきまでのあのバタバタどこ行ったの!?」


「本番でも絶対映えますわ!」


息を整えながら、蓮姫は自分の左胸に手を当てた。


「はぁ……はぁ……

こ、こんな踊り……初めてじゃ……」

掌の下で、心臓が激しく打っている。


(な、何なんじゃ……このドキドキは……)


スカイは、そんな蓮姫を見て笑った。


「じゃあさ、夜宴までは――二人でダンスの練習しようぜ」


「えっ……?」


「お前一人に恥かかせるのも気分悪いしな。

だったら、仲良く一緒に恥かいた方が、

まだマシだろ?」


「スカイ……お主……。」


蓮姫の顔が、一瞬で真っ赤になった。


「よ、よかろう! そこまで言うなら、

付き合ってもらうぞ、スカイ!!

妾と共に、夜宴で見事な舞を披露するのじゃ!!」


女官たちが、再び大歓声を上げる。


「「「きゃああああ!!」



「練習覗きたい!!」


「本気で結婚しそう!!」」」



こうして――紫雲東方帝国、

記念すべき第一回「花嫁講座」は、

涙と笑いと、ときめきと、ダンスの約束を

残して幕を閉じたのだった。



そして、舞台は紫蘭華(シランカ)主催の夜宴へと移るのであった。




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