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夢tube断章、スカイ・エリアス編  作者: grow
断章 世直し新婚旅行編
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第7話 マリナス共和国2



~幼馴染の恋物語~




公園のベンチに腰掛け、


ラネーゼ――愛称ララと向かい合う。


海風が彼女の長いウェーブヘアを優しく揺らし、


不安げな瞳がスカイとエリアスを交互に見つめる。


エリアスが穏やかに微笑みかけると、

ララは緊張を解くように小さく息をついた。


ララは、おずおずと手を胸に当て、


「あの……改めてご挨拶を。

私、ラネーゼ・マリドネルと申します。

親しい方はララと呼んでくれます。お二人の

ことはかねがね父から伺っておりました。


お会いできて、本当に光栄です。

エリアス陛下、スカイ様。」




スカイが苦笑しつつ手を振る。


「いやいや、そんなかしこまった呼び方はいいよ。

ここじゃ『クライム』と『エイラ』で通してくれ。

観光客の解決屋夫婦ってことにしとこうぜ。

公にされると少々厄介だからな。」



エリアスも優しく頷き、ララの手をそっと握る。

「ええ、そうね、ララさん。私たちも気軽に話しましょう。あなたのお父様とはサミットでお世話になりましたもの」



ララがホッとしたように微笑み、頷く。


「はい、クライムさん、エイラさん……

ありがとうございます。それじゃあ、失礼して……

お二人はレオナルド議員の息子さんをご存知ですか?」



スカイとエリアスが顔を見合わせ、

レニールの熱血漢な顔を思い浮かべる。



スカイがニヤリと笑い、


「ああ、あの熱い兄ちゃんか!さっき海鮮食堂で会ったよ。

海運業を自分で立ち上げて、親父の路線に反発してるってよ。

いい奴だな、気に入ったぜ。」




エリアスも目を輝かせ、


「ええ、レニールさんったら前向きで素敵でしたわ。もうすぐ婚約だなんて、おめでたい話ね。」



その言葉に、ララの頰がポッと赤らむ。

恥ずかしそうに視線を落としつつ、嬉しそうに微笑み、


「ふふ……ありがとうございます。レニールは昔から、そんな感じなんです。私をいつも守ってくれて……」



甘い空気が流れる中、スカイが首を傾げ、

真剣な目で切り出す。


「でもさ、ララ。選挙で父親同士があんなにバチバチなのに、お前らが婚約間近ってのは

不思議じゃないか?


レニールも親父の軍事路線を嫌がってたぜ。

何でそんな状況なんだ?」



ララの表情が一瞬曇り、切なそうに海の方へ視線を落とす。


「……そうですね。それを説明するには、

私たちの馴れ初めからお話ししないと、

わからないかもしれません……少し長くなりますが、聞いていただけますか?」



スカイとエリアスが頷く。


「もちろんよ、ララさん」


「あぁ、聞かせてくれ」



ララがゆっくりと語り始めた。


「新人議員時代からライバルだった

レオナルド議員と私の父ガドリンは、互いを

認め合い、切磋琢磨する好敵手だったらしいんです。


私とレニールの母親同士が親友で、お互いに

結婚。先にレニールが生まれて、その2年後に

私が生まれました。


母親同士の仲で、私達は、一緒に遊び、育ちました。

私は幼い頃からレニールを『頼れるお兄ちゃん』として慕い、密かに恋心を抱いていました。」



エリアスが目をキラキラさせ、頰に手を当てて、


「まあ、なんて素敵なの! 幼馴染の恋物語だなんて……!」



スカイが苦笑し、エリアスの肩をポンと叩く。


「おいおい、エイラ。恋バナにグイグイ

食いつくなよ。俺まで照れくさいだろ」



ララが頰を赤らめつつ、話を続ける。

少し照れながらも、懐かしげに、


「でも、当時のレニールは私を『妹みたい』にしか見てくれなくて……

私、必死で背伸びしてたんです。

レニールを振り向かせたくて、料理作ったり、一緒に海で遊んだり……」



エリアスがうっとりと両手で頰を押さえ、


「甘酸っぱいわ~! ララさん、可愛い努力ね。

きっとレニールさん、心動いたのよ♪」




しかしララの表情が暗くなり、


「そんな時でした。レニールが12歳の時――

レニールの母が病で亡くなったのは。」




スカイとエリアスの表情が曇る。


「……そりゃ、きつかったろうな。」


「お母様が、可哀想に……。」





ララが切なく続ける。


「葬儀の日、私が見たレニールは……

魂が抜けたみたいに、何も言わずに

ただ泣いてて。


何ヶ月経っても立ち直れなくて、私、必死で

支えましたの。

手紙書いたり、一緒に海に行ったり……


その献身が通じたのか、少しずつレニールが

立ち直ってくれて、そして、レニールが私に

愛の告白をしてくれたんです。」




ララは嬉しそうに一筋の涙を流し、


「あの時の喜びは……言葉にできません。


『ララのおかげで俺は救われた。

俺にとって、ララが特別な存在だったんだと

やっと気づいた。遅くなったけど、

俺も、ララを愛してる。』


そう告白されて、私、嬉しくて、

思わずファーストキスを……。」



ララは顔を両手で覆い、顔を真っ赤にした。



スカイとエリアスが感動で目を潤ませる。


「(ズズッ)、すげぇ話だな……

ガキの頃から支え合って、愛が深まるなんてよ。」


「美しい恋ね……ララさん、幸せそうで

私まで嬉しくなっちゃう!」




だが、ララの表情が再び曇る。


「でもレニールの母が亡くなってから、

レオナルド議員は変わってしまったんです。

軍事強硬路線を推し進め、


『防衛力が必要だ、海軍を作れ』


と軍国主義に傾き、父ガドリンとは正反対に。」



スカイが疑問を口にする。


「レオナルドは何でそんな物騒な考えに? 妻を失って辛ぇのは分かるが、急に軍拡なんて……」



ララが海を切なそうに見つめ、前置きして答える。


「これは私の考えですが……レオナルド議員は、本当に奥様を心から愛していたんだと思います。


そして、奥様が愛したこのマリナスを、

自分の手で守りたい……と。


あの時、奥様の葬式の日にレオナルド議員は、人目をはばからずに奥様の前で、

ものすごく大きな声で泣いていましたから。」




スカイとエリアスがハッとして顔を見合わせる。

レオナルドの悲しみが、守りたいという愛に変わった瞬間を察する。




エリアスは瞳を潤ませて、


「そうね……。

愛する人を失って、それでも

大切なものを守ろうとするのね。

切ないけれど、深い想いだわ。」



スカイも静かに頷き、


「ああ……分かった気がするぜ。」



ララが続ける。


「レオナルドの議員の路線転換後、親子の仲

は悪化しました。

レニールは母親から海の話や世界の話を

昔から聞いていてその影響で世界に憧れ、


『ララを連れて世界を見たい』


と夢見て、15歳で父親の反対を押し切り、

海洋航海大学へ行きました。


私は父の跡を継ぐ為に政治学を学びつつ、

レニールとの文通で航海術を習い、

医療も独学で勉強しました。


レニールは卒業後、大学の仲間達と解決屋を頼り海運業を始めて今に至ります。

私達は愛を深めてやがて婚約を考えるように

なりました。


レニールは、


『大型船を絶対に手に入れて結婚したら、

ララを世界に連れていく』


と約束してくれました。」




ララは切なげに微笑み、


「それを心待ちにしてるんですけど……

この選挙が壁になって、私たちを引き裂こう

としてるんです。父親同士の対立が、

私たちの未来を……」



スカイとエリアスは言葉を失う。

どう励ませばいいか、分からないほどの深い恋物語に、胸が熱くなる。



スカイは真剣な表情で、


「ララ……お前らみたいな純粋な想い、

潰させねぇよ。俺たちで、何とかしてみせるぜ。」



エリアスも優しくララの手を握り、


「ええ、ララさん。私たち、必ずお手伝い

します。あなたたちの幸せ、祈っています。」



ララが涙を浮かべ、感謝の笑顔。そして声を震わせて、


「ありがとうございます……

クライムさん、エイラさん。本当に……」


公園の海風が、三人を優しく包む。


マリナスの恋と選挙の渦が、スカイたちをさらに深く引き込む――。




公園のベンチで、ララの馴れ初め話を聞き終えた

スカイとエリアスは、胸がジーンと熱くなる

のを感じていた。

幼馴染の純粋な愛、母の死を乗り越えた絆――

美しい物語に、思わず涙ぐむ二人。

エリアスがハンカチで目を拭き、スカイが

鼻をすすり上げる中、



スカイがふと気付いた疑問を口にする。


「なあ、ララ。そういえばよ、ガドリン首相は……

お前ら二人のこと、認めてんのか? 

婚約間近って聞いたけどよ。」


ララの表情が一瞬凍りつき、困ったように

視線を落とす。


「……実は、お父様には、まだ言ってないんです。私とレニールが付き合っていて、婚約を

望んでること……」


「えっ!?」

「えっ!?」


スカイとエリアスが同時に声を上げ、目を見開く。


エリアスが慌てて口を押さえ、


「まあ、ララさん! どういうことですか!?」



スカイも身を乗り出し、


「マジかよ!? やっぱり親父同士バチバチだから隠してんのか!?」



ララが苦笑し、指を絡めて説明を始める。

少し照れくさそうに、しかし切なげに、


「レニールのことは、お父様も知ってますよ。

私の母が今もレニールを気にかけていて、

様子を伝えてるんです。海運業を始めたことも、

『私の理念を理解してくれた』と父は喜んでました。

ただ……母は、レニールの母親のこともあってレオナルド議員を気にして、

私たちの関係をお父様には濁してるんですの。」




スカイが腕を組み唸るように、


「なるほどな……母親同士の友情か。

複雑だぜ」


エリアスも頷き、しみじみと


「お母様の優しさね。でも、ララさんの

お父様は気づいてないの?」


ララが首を振る。困った顔で海を見つめ、


「それが……父がただ鈍いのか、気づかないフリなのか、私にもわからないんです。

そしてこの選挙が、ますます問題をややこしくしてて……

レオナルド議員と父の対立が、私たちの未来を塞いでるんです。」


スカイとエリアスが顔を見合わせ、苦笑する。


「なんとまぁ……恋愛と政治が絡みすぎだろ」


「マリナスの恋、波乱万丈ね……。」


事情を聞いたところで、今度は選挙の話へ。




スカイが、


「傍目から見てもガドリン首相の方が支持

されてるんじゃないか?交易開放って国民も前向きだぜ。」


と率直にいった。




ララも頷いて同意し、


「ええ、今のところはそうですね」


と答えるが、不安げに付け加える。



「でも、数値教テロを受けて、

最近レオナルド議員のやり方が……

より苛烈になってるんです。

何か起きるんじゃないかと、心配で」




スカイが眉を寄せ、


「何が起きるか分かんねぇってことか……

ヤバい匂いしかしないな。」



エリアスも深刻そうに頷き、


「選挙が暴発したら、マリナス全体が危ういわね。」



ララがさらに前置きし、

周囲を警戒して声を小さく下げながら、


「これはオフレコですけど……現在、

マリナスでは最新の大型船が三隻完成してるんです。


そのうち一隻が、投票日の2日前に処女航海でお披露目されて、マリナスの周りの海を一周

するんですって。


そこで最終演説として、レオナルド議員と

父がそれぞれ『その船をどう使うか』を

プレゼンするんですの。おそらく、

そこが選挙の行方を決めると思います……」



スカイが目を光らせ、ニヤリと


「大型船のお披露目か……面白くなってきたぜ!」


エリアスも頷き、


「私たちで、何とか支えましょう」


ララが立ち上がり、感謝の笑顔で手を差し出す。

そして深く頭を下げ、


「色々お話しできて、ありがとうございます、

クライムさん、エイラさん。本当に……

どうか、レニールの力になってくださいませ。」



スカイが力強く握り返し、


「もちろんだ。レニールの力になるぜ――

お前、ララの力にもなる!」


エリアスも優しく手を重ね、


「ええ、あなたの幸せも祈ってますわ、

ララさん。」


ララが涙ぐみ、笑顔で別れを告げる。


「お二人とお話しできて、元気が出ました。またお会いしましょう!」



大使館に戻る道中、スカイとエリアスは固い決意を交わす。


スカイがエリアスの手を握り、


「レニールとララのためにも、出来ることは全部やろうぜ。あの純粋な恋、潰させねぇ。」



エリアスが頷き、寄り添う。


「ええ、クライム。私たちなら、マリナスの選挙も船不足も解決できるわ。一緒にね。」



大使館に戻り、職員に報告。


「選挙のこと、大体分かったぜ。大型船三隻のお披露目が山場だってな。」


職員が頷き、深刻な顔で続ける。そして声を潜めて、


「しかし、ここ最近港で不審な人物や事件が目撃されてまして……何かの前触れでなければいいのですが。」


スカイが身構え、


「不審者? 選挙絡みか……

なんだかヤバい匂いがすんぞ。」


エリアスも頷き、


「油断できないわね。私たちで守りましょう。」





その夜、港の波止場。レニールは最後の三隻の小舟が帰るのを待っていた。


レニールは少し不機嫌そうに


「少し遅れてんな……帰ってきたら説教だぜ。

漁師の網運び、時間厳守だろ!」


だが、戻ってきたのは二隻だけ。港に着き、

船を見たレニールが目を疑う――


乗員全員がその二隻に押し込まれ、

全員が怪我や傷を負っていた! 

血まみれの腕、裂けた服、青ざめた顔。


レニールが駆け寄り、焦りながら叫ぶ。


「オイ、お前ら大丈夫かっ!?

何があったんだよ!? 三隻目は!?」



仲間の一人が、息も絶え絶えに報告した。


「すまねぇ、レニール……

海で海賊に襲われたんだ! 

全員やられて、無理矢理小舟一隻に

俺たちが積んでた荷物を運ばされて……

全部、全部持ってかれちまった!!」



レニールが絶句。周囲の船乗りたちに緊張が走る。


「海賊だと!?」「マリナス近海で!?」


「選挙前だぞ、ヤバくねぇか!?」



港の夜空に、暗雲が垂れ込める。


マリナス共和国に、新たな嵐の予感が漂っていた――。




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