【170】春の貴族は忙しい
「ツェツィーリア、そろそろどこかにデートにでも行こうか。何が食べたい?」
「オススメは何ですか?」
「近場だとアスパラガスを作ってる村があるから、そこはどうかな?」
「アスパラガス。良いですね! そこに連れて行って頂きたいです」
「じゃあ決まりだね! 明日あたり視察に行こうか」
ここのところ、社交に非積極的な我が家にしては珍しく来客続きだったが、お客さんが帰っていったので、心置きなく二人でラブラブしている。
今日は温室がメンテナンス中なので、二人だけではあるけれど、ティールームで午後のお茶。メイドさん達が三段のケーキスタンドもご用意してくれる。
スコーンは焼きたてで、片方はプレーンでもう片方は干したクランベリー入り。ケーキは苺のムースケーキと、白鳥型のシュークリームとオレンジコンポートのタルト。サンドイッチはサーモンのソテーとレタスに、ハーブと砕いたクルミを混ぜたクリームチーズ入り。
美味しいもの食べながら視察の打ち合わせをする。幸せしかないな?
私とアルバンは視察のことをデートだと思っている。
二人で並んで馬車乗って、ラブラブくっついてお喋りして、ちょっと遠出して、領民の方々のお仕事眺めて、特産品を食べる。
アルバンが無知な私のために、あの作業はこうで、これのためにはこうで、とか色々と教えてくれつつ、最後は「あ〜、楽しかった」なんて平和に帰宅する。
うん。デート。これは間違いなくデート。
去年はアルバンとたくさんデートをした。
ジャガイモ、小麦、カボチャ、大豆、キャベツ、葡萄、林檎、チョウザメ、サーモン、岩塩……どれも全部新鮮で楽しくて美味しかった。
私は領地ではずっと遊んでいるだけだったから、仕事というものを知らなかった。実家の周辺の農夫たちを見て、なんとなく、それだけは見たことがあったのだけど、具体的にどんなことをしていて、どんな大変さがあるのかとかは、よく分かっていなかった。たまに、自分から近寄っていって、これは何をしているんですか? とか聞いたりはたまにしていたから、淡水パールと蓮のことだけほんの少し知っているのだけれど、他はあやふや。
アルバンは私の知らないものを見せてくれる。
フリートホーフ領は広くて寒くて豊かで、一年のほぼ半分は雪に覆われていて、それで、短い春が夏が秋が、瞬く間に過ぎてゆく季節が、息を呑むほど美しい。
「今年はじゃあ、アスパラガスからだね。他は? 何が知りたい? 僕としては豆類がお勧めかな」
「連作障害の予防と土作りのためには豆類が良いんですよね?」
「そうそう。大豆も悪くないけど、青い豆類、そら豆とかえんどう豆とかの方が土には良いね」
「そうなんですね。そら豆、去年はシェフがチーズと一緒にサラダにしてくれましたよね」
あれも美味しかった。
そら豆、実はちょっと、去年まで苦手だった。あの独特の臭いがそんなに好きくなかったのだが、シェフの手にかかるとそら豆のホットなサラダに早替わり。茹でたてで薄皮剥いたところに削ったチーズを沢山かけてのシンプルな一品だったのだが、チーズとステキにマリアージュ。あれで苦手意識がなくなった。
「えんどう豆の若いやつがグリンピースなんだけど、採れたてのグリンピースは甘くて柔らかくて美味しいよ。豆類は保存の効く大切な食糧だし、麦よりも栄養価が高いから、ツェツィーリアにも見て知って食べて欲しいな」
「はい。ぜひ行きたいです」
私とアルバンのデート、大体こんな感じ。
ほぼ食育である。
まあでも食育は大事。なんでかって、作物がどうやって育ってどんな条件でどのくらい収穫できるのかを知っておくのも領主のお仕事。特産品なら尚更。実際に育てるためのテクニックとか諸々は農夫の方々にお任せするが、知識は頭に入れておかねばお話にならない。
領主というか、貴族って、案外幅広い知識が必要。特にフリートホーフ辺境伯領は広くて、特産品も多岐に渡るため、得なくてはならない知識もそれ相当に多岐に渡るのである。道理。
とはいえ、それはあくまで理想論。人間そこまで有能になれんのが実情。実情ではあるのだが、アルバンは人並外れて優秀で、動植物とか魔獣に興味津々だからやれてしまっている。
なんならちょっと、いやかなり、アルビレオのことが心配。
アルビレオはアルバンに似て天才みたいではあるが、興味の分野が領主向きの方面にいってくれるかは分からない。更に言うのであれば、アルバンは竜の血を浴びて強化された特別仕様の肉体の持ち主。人並外れた体力、持久力、耐久力が搭載されているが、アルビレオは白銀とはいえ人の枠組みの中に居る。いわば、肉体的には普通の人間。
父と息子だと、どうしたって、誰からも比較されてしまうだろうから。
「アルビレオは早熟だし、本だけだと退屈しちゃうだろうから、歩けるようになったら一緒に連れて行きたいね」
思わず、息を止めた。
アルバンは本当に楽しそうに笑っている。
未来になんの不安もないかのように。笑顔が柔らかい。結婚したあと、すぐの時とは違う柔らかい微笑み。
「僕は子供の頃、ずっと退屈だったんだ。本が沢山与えられて、与えられるままに貪るように読んだけど、もっと刺激が欲しかった。文字の知識も面白いけど、本物の生き物や植物の方がもっとずっと刺激的で面白いから……アルビレオにも、色んなものを見て、触って、本当の意味で知って欲しいな」
目を細めて、小さい銀色の瞳の奥が、極光のようにオパールのように、微かな美しい光を湛えている。
きれいだ。
私は、今、すごくきれいなものを見ている。
「この世には沢山面白いもの、興味深いものがあるから、アルビレオはきっと夢中になるよ」
「ど、どうして、そう思うん……ですか?」
「うん? だって、アルビレオはもう、カヌレのことが大好きだし、ミトンのことも好きみたいだから。この世が人間だけで出来ている訳じゃないって知っているからね。温室の鉢植えにも興味を示していたから、きっと土いじりも好きだよ。アルビレオはそうだと思うけど、出来たら、オーギュストにもアマーリアにも、色んなものに触れてみて欲しいな」
「ええ。ええ……! そうですね!」
どうしてそんなこと聞くの? って感じで首を傾げてキョトンとするアルバンが、私の目の前に居るのが、言葉に尽くせないほど嬉しい。
ああ、この人は、山ほど辛いことがあった筈なのに、今、この人は……この世界のことを、面白くて楽しくて、良いところだと思っているんだ。
大切な自分の子供たちに、ここはこんなに良い所だよって教えてあげたいと、紹介したいと考えるくらいに。
良かった。
私の好きな人が、大切なアルバンが、そんなふうに思って、息をして、笑って、隣に居てくれるんだから。
とどのつまり、この人はきっと、世界というものを愛しているのだ。
理不尽と不幸によって傷付いても、それでも見放せないくらい、壊したくても壊せないくらい、なんだ。生きていたくない、全部なくなってしまえと願っても、願うだけに留めて誰一人、なにひとつ壊せないくらいに、この世界を愛しているんだ。
それで、アルバンは私のことを好きだって、愛しているって言うから、私はきっと、アルバンがこの世を楽しくて良いところだと思う手助けが、ちょっとだけでも出来ているってことなんだろうから。
私はそれが、胸が痛くなるくらい嬉しい。
「ぁ、と、えっ、と……ツェツィーリア?」
つい、ニコニコ笑っていたら、アルバンがソワソワし始める。今は二人きり。真昼で、窓からの光が明るくて、暖かい。
さっきまで宝石のようだった銀の瞳が左右に泳いで、それから、目元が少し赤く染まって、私の方を伺って、大きな背中を窮屈そうに丸めて、ゆっくりと近寄ってくる。
名前を呼んだその語尾に「キスしていい?」が乗っていて、そのまま受け入れる。
もうきっと何百回もキスしているのに、ずっとこうして照れて、緊張して、真剣になってくれるところ、大好き。
アルバンは変なタイミングで照れたり緊張したりするので、口にしてくれても良かったのに、頬にキス。すぐにパッと離れて顔を上の方に向ける癖。恥ずかしいとか照れ臭いのを誤魔化す時にはいつもこう。
駄目。逃がさない。
「アルバン様」
名前を呼ぶだけで、アルバンはチラッと横目でこっちを見て、様子を伺って、それから、観念したようにまた背中を丸めて、目を閉じてくれる。
傷跡のある方、瞼の上に私もキスした。
顔の傷跡と、右目の斜視を特に気にしているから、私がアルバンの分も、大事だよ大好きですよって、沢山キスしなくっちゃ。
うふふ、なんて声が漏れてしまう。アルバンのぶっとい首に腕を絡めて捕まえる。チュッチュッと傷跡の範囲に重点的に何回もキス。
簡単に振り払える筈なのに、アルバンはワタワタ、オタオタしながら慌てて手をワヤワヤさせている。かわいい。愛おし過ぎる。
「あっ、や、えっ、と……ツェツィーリア? ど、どうしたの?」
「いっぱいキスしたくなったので」
「そ、そっかぁ……!」
至近距離でバチっと視線がぶつかる。
あ、これは。
「エッチしたくなりました?」
「…………なっ、てない!」
「私はしたくなりました」
「ごめんね。嘘。すっごいしたいです」
「なぜ敬語に……。」
「誰よりも大切な君に嘘を吐いたから」
「り、律儀! えっ、どうします? 今なら私はその、良いのですけれど……ベッド行きます?」
「行かない! 一年はしないからねっ! 僕は間違ってない!」
「意思が堅い」
目をギュッと閉じて眉を寄せて、物凄く頑張って我慢している。意地を張る子供みたいな仕上がりになって堪えている。凄く頑張っていてなんだか可哀想になったので、腕を解いて解放。
善良過ぎる。
というか、ストイック過ぎる。
私は既にエリクサーで回復しているし、疲労に関しても自己認識としては全くないし、体調が良いし、何より同意があるのだし……一時の快楽に身を委ねても良いと思うのだが、アルバン的には駄目らしい。
この夫、私のことが好きすぎる。
愛が深くて濃ゆい。
感服するしかない。世間では、妻の妊娠中に性欲を持て余し、浮気したり娼婦の元に通ったりする男性はそれなりに多いと聞くのだが……妊娠中どころか産後一年は妻の体が心配だから駄目だと言って自粛するタイプの夫、珍しいのでは?
あとあの、シンプルに頑固過ぎる。
「ツェツィーリア……離れて。距離取って。君を今すぐにこの場で襲いかねないからっ……!」
久々にハァハァしている。
本当に限界らしく、壁際まで後ずさって両手を前に突き出してステイのポーズまでしている。
最早猛獣、いや魔獣の気分である。
何もしていないのに夫が後退して警戒している。なんなのこれは。
しかして、真っ昼間の寝室なら兎も角、真っ昼間のティールームでことが始まってしまうのは私も避けたい。それは余りにもなんというか、品がないというか、ちょっとあの、ワイルド過ぎるので。
「すみません。つい。アルバン様を好きな気持ちが抑え切れず……。」
「ぐっ……! クソッ! ツェツィーリア……! 今は君の体が大事だから死んでも一年経つまでは手を出さずに見守るけど、来年、来年になって……君の体調が良くて、尚且つ嫌じゃない気分の時になったらすっごいのをしてやるからな!? 覚えていろよ? 覚えていろよ……!?」
「あっ、ハイ。覚悟だけしておきます」
どちらにしろ、私の体調とか気分とかを前提条件に組み込んでくれるあたり、優しい。
ごめんねアルバン。
正直、そっち方面に関してはもう完全に舐めている。
あなた家族とか身内に対して酷いことをする力がないのよ。もうね激甘。甘やかすのが趣味というレベル。家庭内暴力の才能がない。
「その時が来たら横暴な夫としての権利を行使してやるからね!? 本気だからね!? 覚悟しといてねっ!?」
「横暴……具体的にはどの程度なのでしょうか? 私はどちらかというと、優しく虐められるのが好きなのですが」
「えっ、は? えっ、いじ、えっ、そ、そうなの……? ほ、ほんと? いいの? いやっ、そ、そんな、そんなこと、言っちゃダメだよ、ツェツィーリア! き、君は、そんなに綺麗で、可愛いんだからっ……!」
あ、久々に茹で蛸状態に。うんうん、結婚して半年ぐらいまでこんな感じだったな。懐かしい。妊娠が発覚してからは当然、エロいことは皆無だったし、これは気持ちが逆戻りしてしまったのかも知れない。でも、練習するところからまたもう一度一緒にやるの、凄く幸せなことだと思うから、一年後が凄く楽しみ。
とはいえ。
なんか知らんがアルバン、前々からずっと、私のことを同じ一人の人間だと思っていないっぽいので、そこだけ不満である。
むぅ。不満。とても不満。
なので、トコトコ近寄って、ばふっとアルバンの分厚い胴体、高さ的な問題で脇腹に抱き付くなどしてみる。
「私はアルバン様が大好きなのに、どうして正直な気持ちを言っちゃいけないんですか」
「いっ、けない、って訳じゃ、ないんだけどっ……!」
「あっ」
「あ」
パタタッ、とアルバンの鼻から滴る血。
ひ、久しぶりの鼻血だ。
いけない。興奮させ過ぎてしまった。
「ご、ごめん。ハンカチ、ポケットから出してくれる?」
「はい。これで良いですか?」
「あ、いや、これは君がくれたやつだから……もう一枚の方で……。」
「こっちですね。ありました。服に散ってしまいましたね。メイドを呼んできます」
「うん。ごめんね。ありがとう」
イチャイチャするどころではなくなってしまったので、今日はここまで。
メイドさん呼んで念のためタオル持ってきて貰って、アルバンの上着脱がせてクリーニングに。ランドリーメイドさんにお願いし、上着脱いだ状態では寒いだろうからアルバンにブランケット羽織らせて首周りから大判のタオル巻いて座らせて応急手当て。まるで赤ちゃんのスタイみたいな仕上がりになっており、申し訳ないがちょっと可愛いというか、面白い。
「ごめんなさい。私が意地悪したせいですね」
「うん……いや、意地悪っていうか、役得ではあるんだけど……あんまり誘惑されると僕、どうにかなっちゃいそうだから……ちょっと控えて欲しいかな。嬉しいんだけど、酷いことしたくないし……。」
「すみません。押せばいけるかなと思ってしまいました。反省します」
「それは本当に反省して?」
ガチトーンで叱られてしまった。
これはほぼ初かも知れない。アルバンから叱られるというか、明確なクレームが来たのは多分これまでなかった筈。
ごめんねごめんね、と謝り倒して、安静にしてねあったかくしてね、お水飲みます? 顔洗いに行きますか? 付き添います。あったかいおしぼり頼んできますか? とか周りでウロウロしていたら、5分くらいで許された。
「ツェツィーリア」
「はい」
「座って? もう血は止まったから、僕の隣に来て?」
語尾に、目に見えないハートが付いている。ような気がする。
言われた通り、壁際の二人掛けソファで休んでいるアルバンの隣に座る。アルバンは体の全てのパーツが大きいため、二人で座るともうむぎゅむぎゅである。全自動で密着せざるを得ない。
「大した量じゃなかったから大丈夫だよ。そんなに心配しないで」
「でも……私のせいなので」
しょんもりしてたら、アルバンがきゅむ、と優しく手を握ってくれた。もう怒っていないらしい。寛容。
「うん。でも……君が僕とそういう手段で愛情を確かめ合うのが嫌じゃないって、したいって思ってくれていること自体は凄く嬉しいよ。ありがとう。ただ、僕はうっかりでグリズリーも簡単に殺せてしまうから、君に何かあったら、僕が間違って、何か失敗してしまったらどうしようって思うと、怖いんだ。それは分かってくれる?」
「はい。アルバン様はいつも、頑張って慎重に触れてくれているんですよね?」
「そう。だからね、君の方から僕にキスしてくれると凄く助かるし、愛されているって分かるから、それは良いんだけど……僕は君より力も強いけど、体力もあるんだ。まあ、なんていうか、僕は君限定でケダモノだからね。夢中になり過ぎたらって思うと、それも怖いんだ」
「体力……それはあんまり考えていませんでした」
「やっぱりそうか。ツェツィーリア、体を使うことは全部、体力勝負だよ。端的に言うと、結婚記念日の後に迎えたあの蜜月期間。僕はその気になったらあの三倍くらい頑張れるから……。」
「あっ、ハイ。理解しました。それは私には無理ですね」
具体例を出されてやっと分かった。
体力の差があり過ぎる。貧弱な私と、人の枠組みから色々はみ出てるアルバンでは天と地の差。常時手加減して貰わないと無理。死んじゃう。
「でも、好きなので……ハグとキスはしても良いですか?」
「勿論。ハグしようか」
ギュッと抱擁。嬉しいくてあったかい。二人してほかほかになって仲直り。
うん、冷静に考えると、私たち、これ、初めて喧嘩をしたのかも。
新鮮。私、人生で初めて人と喧嘩した。ぼっち生活をエンジョイしていた一人っ子だったから、ちょっとだけ、喧嘩とか仲直りとか出来るのかなと心配だったのだけど、なんかできた。良かった。
なんか二人でポワポワしつつ「うふふ」なんて笑ってたら、部屋の外から家令がノック。
やはり、使用人とはいえ人前でくっつく姿を晒すのは気恥ずかしいので、パッと離れる。
「入れ」
声ひっく……!
半月形の半眼になってるし猫背。イチャイチャタイムに水を差された時のアルバン、分かりやすく不機嫌だしやる気ない。
「ご歓談中失礼致します。旦那様、ラヴェンデル伯爵がお見えになっています」
「コンラートが? すぐ通せ」
名前を聞いた瞬間に機嫌が治るあたり、かわいい。
コンラートさんはアルバンの親友。おまけに、四つ年上の憧れのお兄さんというポジションなので、いつでも大歓迎である。
本来ならアポ無し訪問やめてよね、という感じなのだが、アルバンの方が先にアポ無し訪問かました挙句に王都まで拉致ったので、いつ来てくれても文句は言えない。なんなら、あちらはモニカさんが妊娠中だったのに、長いことコンラートさんを議会のお仕事に駆り出してしまったので頭が上がらないまである。
メイドさんに急いでティールームのテーブル片付けて貰って、新しいお洒落なティーセットと交換。コンラートさんが相手なので、トレンド抑えたカップ。私たちは今食べたばかりだが、来客用にお菓子も用意して貰うよう指示は出す。
余ったら……誰かしら食べてくれる人は居るので。主にニーナだけど。
「何かあったのでしょうか?」
「うん……仕事の話かもね? コンラートは去年、議会でかなり働いたみたいだし、議員になるための準備かも」
「ありそうですね」
議会は主におじさんたち、素敵な叡智あるナイスミドルの皆様で構成されているが、ある程度、後を任せられる若者は確保しておきたいところ。コンラートさんなら有能だし正義の心に溢れているし、情熱的に議論を展開してくれそう。確かに適任。
お祝いの言葉をご用意しなくっちゃ、なーんて、呑気して油断してたところ、ティールームに颯爽と入ってきたコンラートさんは、挨拶もそこそこにこう言った。
「アルバン、君、最上位礼装は持っているだろうか? 夫人も……黒一色以外のものはありますか?」
私もアルバンも真っ青になった。
悲鳴を上げたいくらいの気持ちである。
コンラートさんの手には一枚の書状。羊皮紙。王宮からの公文書である。
「王太子殿下の結婚式典の予定は……五月の頭、約二週間後に決定した……!」
「あ、ぁ、あっ、あの……クソバカ王子!!!!!」
立ち上がって大声でアルバンが叫んだ。
嘆きと憤りと焦りのセット。
「と、とりあえずニーナ、ニーナを呼びますね」
ヨロヨロしつつベル鳴らしてメイドさん召喚してニーナをなる早で連れて来て! とお願いしておく。
なんなのこの急展開?




