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群蒼列伝~高校生二十三名は召喚された異世界で征服戦争を開始した~  作者: 大ミシマ
第三章 龍公討伐

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第六十三話 ランカの戦いⅠ

 群蒼会の男子メンバー、つまり南奧州軍はウル・ハム国侵攻を行う帝国軍麾下と黒耳長人の援軍に分かれる。

 惟義の紫電隊と明可の百足隊が北へ、東には直の青菱隊。そして——


「何故貴様が、俺と一緒に行くことになった」


 直は明らかに不満顔で隠しもしない。己を武官だと規定する直は、魁世が文官武官で働く姿が中途半端に見えてならない上。元から魁世の“にへら”として強引に事態を動かす風体が好かない、そう魁世本人に伝えるくらいの関係だった。。


「そうは言われても困る、新兵教育だと思って付き合ってくれ」


 第三行政局局長、軍務局局長、主任参謀、“保安隊隊長”の魁世は馬上で口角を上げる。


「ほとんど戦闘未経験と聞いたが、貴様の兵は逃げはせんだろうな」


「保安隊、と呼んでくれ。ただ保安隊って名前もまだ仮だ。いつかカッコいい正式名称を付けようと思っている」


 魁世は握りこぶしをつくるが、直は鼻で笑った。


「勝手にしろ。名札で強弱は大して変わらん」


 魁世は新部隊をつくった。表向きは領土防衛を専門とした部隊だが、魁世には別の思惑があった。

 英雄のいらない軍隊の創設である。

 複数の兵科を偏りなく持った数万人規模の師団を編成し、専門の学校で教育された士官が部隊を指揮する。どんなトップにも最良の作戦を提案する幕僚部が存在し、物資補給から占領地統治まで取り扱う後方支援組織が存在する。


「まだ人数は千にも満たない。だがいずれ数万規模の組織にしてみせる」


 殆どが新兵で構成され、結成から現在までの訓練等は帝都包囲戦から群蒼会と縁のある元傭兵団団長のアムストンが魁世から頼まれていた。

 他に魁世自身が南奧州を歩いて見つけてきた人材を、半ば誘拐して入隊させている。

 いまだ一〇〇〇人、しかも未経験ときた。ただ、ここで兵を信頼せず、戦場で死ぬ恐怖より戦場の危ない高揚感に呑ませることが出来るか。魁世はまたもやひとり今回も博打の形である。


「貴様に軍の指揮ができるのかは知らない。が、実質はアムストン殿がやってくれるのだろう?なら安心だな」


 アムストンの経歴はかなり特殊になる。傭兵業で名を馳せたアムストンは、とある西方の国から滅亡寸前の帝国の救援のために派遣され、そこの傭兵たちを纏める団長の役割を任される。そして包囲中の帝都で惟義たちに出会う。

 アムストンは単なる一定期の雇用関係ではあったが、雇用主の商業国から指揮官を任されており、義勇軍の時は云ってしまえば惟義たちに傭兵団の指揮権を奪われたことになる。

 だがアムストンは結果として何の反発もしなかった。指揮権を奪うなかで、魁世がどんな手管でアムストンを篭絡させたか、後になって夢を見せたと彼は語る。


 南奧州軍には外人部隊とも謂える部隊、三〇〇の黒耳長人で構成された白鯨隊が存在する。南奧州と黒耳長人族の秘密の盟約と、とある黒耳長人の好奇心の産物であるその部隊は、指揮官を大神官のニュー・ティオ・トゥアンが務め、副部隊長に群蒼会一の弓取りを自称する那須興壱が任されていた。

 今回の援軍要請には参謀長の宗方透は当初「うーん、とりあえず白鯨隊(はくげーたい)を船で送ればいいと思うなあー?」といつもの眠たげな目で提案し、援軍はそれで済ませるつもりだった。

 だが再度の援軍要請と「なにやら今回は違う」とトゥアンからの証言で群蒼会は再び援軍を送ることにした。


 青菱隊と保安隊は陣地を設置し、魁世と直に加えて各隊長は仮の司令部に集合する。

 指揮官は魁世と直の二人体制だった。


「イギキュウチョウの計を使う。黒耳長人のところへ軍を向けるのではなく、侵略者の鬼人の領域へ軍を進める。別に本気で占領するつもりは無い。要は鬼人の気を黒耳長人から僕らに引かせさえすればいいんだ」


 この方針は魁世の考えたことであり、出発する前から決まっていたことだった。だが詳細な侵攻ルート等は決まっていなかった。直は机上の地図を眺めて言う。


「では奴らの本拠地を狙おう。それなら十分に引き付けることができるだろう」


 魁世は微妙な顔をする。


「それだと距離がなあ、補給線の維持が心配だ。領域付近で陣地を造成するのはどうだ」


 直は口元を歪める。


「そんなお茶を濁すようでは駄目だ。もし奴らが黒耳長人の連中を片付けてからこちらの迎撃に向かおうと考えたらどうする。やはり本拠地を叩く、少なくともその素振りは見せるべきだ」


「叩くだって、そこまでやっては今後の鬼人との関係に支障が出る」


 魁世の慎重に、直は声音の調子を上げていった。


「まだまともに連絡もとれない勢力との関係など気にしてどうする。異種族と人間は基本的に相容れない存在だろう?そもそも黒耳長人に与している時点で今更良好な関係など望めるか」


「あのな、お前は目の前の敵を倒せばそれで満足かもしれないが、僕らは今後のことも気にしないといけない。もしかすると友好関係を築けるかもしれない。どうせ対立するなら今から対立しても良いというのは短絡的だ」


 周囲の隊長たちは二人の雰囲気に焦りを覚える。もともと二人も頭のいる状態は正しいと思えなかった隊長たちにとって、二人の指揮官が対立することは避けねばならなかった。

 だがそれはあっさりと収まる。魁世が意見を収める形で、であったが。


「まあいいか。直のやり方でいこう」

 ……

 …

 黒耳長人の領域、深い森の中に白鯨隊はいた。技術部部長の高坂寧乃に中継された魔法通信によって魁世たちの様子を知ることになった。


「へえ、おもしろい事考えるじゃん」


 興壱は通信で得た情報と地図を見比べる。


「だが直接来てくれてもいいのではないのか?どうしてこんな婉曲なことをする」


 トゥアンの言葉に興壱は返す。


「多分だけど考えることを減らすためだろうね」


「どういうことだ」


 更なる疑問に、興壱はどこからしくなく、つらつらと述べていく。

 

「言ってしまえばオレら人間と黒耳長人はまだ他人に近いんだよ。オレとトゥアンちゃんでさえ仲良くなることに時間がかかった。オレはまだ見知っていても、知り合いの知り合いという他人がわらわらと家にやって来たらどう思う?なんだか嫌だし警戒するだろ?そんな状態でここを戦場にすることは魁世にとっては避けたかった感じだろうな」


 だが最後の言葉が、興壱の本音であり、要求だった。


「けどまあ今仲良くないなら、これから仲良くすればいいと思うケドね」


 白鯨隊は鬼人との戦いでゲリラ戦を用いて戦果を上げていた。ゲリラ的な戦い方は従来の黒耳長人はやっていた。だがいかに平時から弓矢を扱っているとしても、常に訓練を重ねている白鯨隊との戦力は歴然だった。特に顕著なのは持久力である。ゲリラ戦というのは根気強く長時間潜伏したり、片や常に移動し続けたりする必要があった。


「そういえばナンオウ州より補給の船が到着したと連絡があった。これで益々戦えるな」


 黒耳長人はよく領域内の果物を食べるのだが、白鯨隊はこの何百年の食事習慣を止めて肉や炭水化物をよく摂取していた。これも白鯨隊の強さの一つと言える。

 補給が来ても、遊び人らしくなく興壱の本音は冷ややかだった。


「戦う、かあ。オレたちは予定の通りに後退しつつ戦っている。魁世は“遅滞戦術”と言っていたけれど、ずっとは無理だろーな。誰だって家が荒らされるのは辛い」


 魁世は保安隊の創設もそうであるが、自身の曖昧に知っている知識とも呼べぬ知識を根拠に作戦を立てていた。現在の興壱たちのやっている遅滞戦術も農地といった固定された資産を基本持たない黒耳長人だからこそ行えることであった。

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