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群蒼列伝~高校生二十三名は召喚された異世界で征服戦争を開始した~  作者: 大ミシマ
第二章 征途洋々

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第五十九話 魁星と龍公Ⅲ

『ハハハハハ!!貴様はこれらを全て敵に回す気か?馬鹿、大馬鹿だな!』



 脳内に稀に現れる雑音を振り払いながら、魁世はふと気になったことを口にする。


「どうしてそこまで来て世界を直接支配しないんですか?統一国家をつくった方が色々と楽なのではないですか」


 全てに目が行き届くようになれば群蒼会のような存在の出現を未然に防げるだろう。


「面倒だからな。お前は楽と言ったが、歴史を通してみれば巨大国家は存続させるだけで骨折り損なのだよ」


 うーん


「銃や火薬はこの世界の戦争を一変させるまで広まっていませんし、調べたら大型船舶は建造さえ何故か許されていないそうですね。この辺も関係あるんですか?」


 実際に魁世はこの世界で火薬が使われた場面を見ていない。過去に使われた歴史も無かった。使用せずに抑止力として機能していたという事実も無い。仮にドラクル公国の軍隊が常備した上で技術などを秘匿していたとして、果たしてそれは維持できるだろうか?この世界の人々は無能では無いし、秘密というものは往々にして漏れるものである。


「それも含めて委員会に入るのならば教えてやろう」


 ドラクル公の目を見て魁世は呟いた。


「技術の抑制?なんでそんな縛りプレーをしているんですか?」


 魁世は以前に昌斗と琥太郎で考えた“奴ら”、つまりドミトリーズ世界政府に関する考察の内容を思い出す。


 “ドミトリーズ世界政府という連中は、何かしらの理由でこの世界に直接かつ強力に干渉できない。保持している技術力に見合わないやり方でこの世界に限定的に干渉する。素人目に見ても下策としか思えないやり方を用いて”


 ドラクル公が以前、惟義たち三人を前に言った、零れた言葉を反駁する。


 “お主らを殺すことは私の為でもましてや愛する公国のためでもない。この星、世界のためだ。お主らが生きていてはいつまた“奴ら”が空の彼方から現れこの世界ごと火の海にするか分からん。”


「うーん、“奴ら”を天の(わざわい)と認識している、そしてその災いから目をつけられない様に技術の進歩を遅らせる。奴らの抹殺対象にならないように、この広い宇宙の中でひっそりと生きていくために存在を消す。それを頑張っている。そんなところですか、先輩」


 目が届く世界では自分たちが支配者であることを疑わず、空の向こうに対してはひたすら卑屈に興じる。それは究極の内弁慶ではないのか。魁世は続ける。


「ここからは想像ですが、委員会の先輩方はあんまり仲良しじゃ無いですよね。

 理由は、ええと、長年の不和とか、各国の委員会メンバーに出し抜かれることを恐れているとか…。統一後のトップが誰になるかでけん制し合っている、とか。

 だから統一国家なんて夢のまた夢。しかも」


「“奴ら”の名前も知らないようじゃ、先輩たちも大した事無いですね。更にその名も知らない存在を恐れて人類を進歩させることも出来ないでいる」


 魁世はほんの一瞬だけ口角を上げる。


「魁世、だったか。お前の想像力の豊かさは目を見張るものがある

 その言い方だと“奴ら”の名を知っているのか」


「知っていますよ。僕らの群蒼会に入ってくれるならお教え致します」


 魁世は意趣返しのつもりかのように言う。

 今度はドラクル公が面白いものを見た目をして、口端を歪ませた。


「名前なんぞ知っても仕方が無い。相手は宇宙からやってくる連中だ。台風でもハリケーンでも暴風をもって全てを薙ぎ払うのは同じだ」


 両者の間に沈黙が降りる。


「………相容れることは出来ないようだな」


「ドラクル公はそう思っていても、僕らはいつでも門戸(もんこ)を開いています。進む者に限って、ですがね」

 

 魁世が謂ったことは、技術を抑制し、伸長を恐れ、その場で地団駄を踏んでいる異世界合同委員会とは徹底的に戦うという宣言である。

 一拍おいてドラクル公は席を立つ。


「今夜は奢ってやろう。次会う刻まで壮健なれ」


「え⁈本当ですか?ありがとうございます」


 魁世は礼を言ったが、ドラクル公はそれを待つこと無く店を後にした。


 魁世も少し時間をおいてから店を出る。

 すっかり空も月光藍を帯び、家々から発される大小の光が帝都を照らす。

 ふと空を見上げると一羽のカラスが首を(かし)げつつ屋根にとまっていた。

 ……

 …

 ドラクル公は自国の城に帰った。

 おもむろに自室の机の引き出し、更にその中の隠し戸の中からあるモノを取り出す。

 耳に当てて口を開く。


「大元帥、いいや委員会議長。聞こえるか」


 しばらくして妙齢の女性の声が返ってくる。


『本当に唐突ね。心臓が飛び出るかと思ったわ』


 冗談にしては声音も低く、とても驚いたようには聞こえない声がした。


「最近は委員会の方に行けていなかった。申し訳ない」


『そうよ。そのせいで貴方が裏切ったのではないかって委員会は紛糾した上に、討伐令の決議を議題に挙げる者もいたわ』


 ドラクル公は低く笑う。


「…はっ、それは一大事だったな」


『それで用はなに?例の異世界人たちは何か分かった?早めに滅ぼしておかないと、いつ宇宙の向こうの奴らが私たちとその異世界人集団を一緒くたに攻めてくるやら…』


 儂らを臆病と吐いてくる若造と出会ったぞ。そう言ったら委員長はどんな顔をするのだろう

 昔の日記を読んでいるようだとでも云うのだろうか


「いいや。特に話すことは無い。用も無い。久方ぶりに話したくなっただけだ」


『…。忠告しておくけれど貴方を疑い始めている委員がいる。辺境にいるとはいえ、少しは気を配ってちょうだい』


「わかった。善処しよう」


 それと。ドラクル公は呟く。


「体は昔と変わらないが、精神が老けてしまった。柄にも無く話し過ぎてしまったよ」


 会話の相手は話を続けようとしたが、ドラクル公は持つ手を耳から離した。

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