第五十四話 打毬の会Ⅳ
両チームはフィールドの中央で馬に乗ったまま並ぶ。
「ボクを出場させなかったことを後悔させてやるからな!ベー!」
武瑠は惟義チームに対して舌を出し、片目を広げて言い放つ。
かくして三回戦は始まる。
一ゲーム七分、四ゲーム一試合の一ゲーム目は開始され、合図と同時にそれぞれが動き出した。
最初にボールを取ったのは明可だった。
「直、パスッ……は⁈」
「隙しか無いぞ!明可イィー!」
興壱はとても普通の人間には発せない声を出し、スティックでボールを奪う。
前の世界で培われた馬術を駆使し、興壱はゴール前に一気に突出する。
そして自信顔で宣言した。
「まずは一点」
そうしてボールは豪速でゴールに入る。ポールで仕切っただけのゴールであり、ボールは一般の観客たちの方に向かっていった。
「むむむ、まだ本気じゃない」
魁世は悔しそうに下唇を噛む。
「なんか言いよるわ、早おボール取って来いよ~」
興壱に勝ち誇った顔で言われた魁世は仕方なくボールを取りに行く。
魁世はボールを取りに行く時に群衆たちの表情を見る。
それは目の前で繰り広げられる試合を見つめる好奇の目だった。
公爵いわく打毬の会は毎年開催しているらしく、毎度こうして多くの所謂平民が観客として訪れるという。半ば見世物となっていることを帝国貴族たちはどう思っているのかは兎も角、盛り上がっているのではなかろうか
試合は再開される。
昌斗は右手を肘から上だけ挙げる。すると四人は四方に散らばった。
「フォーメーションX!」
武瑠は楽しそうである。
フォーメーションXなる攻守どちらにも応用できる型をとった昌斗たちは攻めてこない。こちらの手を伺うためか、それとも作戦の内か。
「来ないならこっちから行くぞ」
惟義はそう言って駆けだす。スティックにはボールを保持しつつ、両側に明可と直を配して最短でゴールに向かう。
ボールを持った人を両脇で守る。何とも単純だが正面から激突必至で突っ込まない限り、ボールをとることはできない。
「突進!」
武瑠はフォーメーションXから離れ、前試合で勝った方程式のままに真正面から突っ込んでくる。
毎回それが通用すると思うな。直は内心でそう思った。
惟義、直、明可は一気に散開する。
「わっ…!せっこ!せこいぞ」
意図的にできた惟義と明可の間を武瑠は素通りさせられる。
すると惟義三人はまた密集し、昌斗たちはそれを追う。
めげずに武瑠は突進するだろう、そうすれば惟義三人は再び散開する。残る自分たちがその瞬間に惟義に殺到しボールを奪取する。
昌斗はこのやり方を想定していた。当然その時の対処も考えていた。
武瑠は後ろから再び突進する。想定通り、惟義たちは散開する。
示し合わせたように興壱と琥太郎は惟義の方に殺到する。
だが惟義はボールを保持していなかった。昌斗はボールをいつの間にか直が持っていることに気付く。
時はすでに遅く、直はスティックを振り上げていた。
ボールはゴールに吸い込まれるように届く。
後ろから魁世がパカパカと馬蹄を鳴らしてやってくる。
「まさか、あのレベルにまで上達していたのか」
昌斗の呟きに魁世は答える。
「確かに馬を走らせた状態でボールをパスし合うことは簡単じゃ無い。けどできる。特に直や明可は実戦によって急速に成長するタイプだからな」
本当にあれは意図してやったのだろうか?見るに惟義は散開する直前までボールを保持していた。事前に予測し、散開した後の刹那に直の進む地点へボールを打ったことになる
だが全て偶然の可能性も十分にある
その後互いに得点を得ることは無く一試合四ゲームの内の一ゲーム目が終わった。
フラーレンは小言を言う。
「ちょっと大丈夫なの?」
さっきは任せるとか抜かしたくせに何様だ。と武瑠は思ったが口には出さなかった。
「ご安心ください。今は相手の手札を出させる時ですのでご容赦を」
もっとも魁世も同じことを考えるだろうと昌斗は感じていた。魁世とは十数年の知己の仲であり、考えは予想がつく。
興壱は琥太郎に耳打ちする。
「昌斗は何を考えているんだ?得点は取れるときに取った方がイイに決まってる」
「うん、多分だけど魁世くん達の持っているかもしれない秘策を早めに引き出しておきたいんじゃないかな?」
「だがこっちが先に圧倒しないとアイツらはコタローの言う秘策を使わないだろ」
「うーん、その辺のタイミングは昌斗に任せるしかないよ」
興壱と琥太郎の会話はそこで終了した。昌斗は武瑠たちに振り向く。
「各々考えていることはあるだろうが、次は積極的な攻勢は避ける。先ほどと同じ両脇を固めて進むやり方ははじめだけ通用したが次からは得点できていない。よって再び使われる可能性は低く、同じ手を使うような愚を犯すとは思えない。
次で魁世あたりが考えた作戦を出してくるだろう。こちらはそれを十全にして受け止め、三ゲームから対策を練って反撃する」




