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群蒼列伝~高校生二十三名は召喚された異世界で征服戦争を開始した~  作者: 大ミシマ
第二章 征途洋々

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第五十三話 打毬の会Ⅲ

 時間は少し遡る。

 観客席で試合をぼんやりと眺めていた雨雪と早紀は優雅な打毬の会に似つかわしく無い動きで試合を支配する者たちを見せられた。二回戦開始前に観客の雨雪を含める賓客の前にいきなり現れた例の公爵が汗を拭いながら説明していた急遽参戦した皇女麾下の者たちがまさか興壱や武瑠のこととは知らず素で驚いた。


「魁世のところに行ってくる」


 雨雪の断固とした表情を見て早紀は止めに入る。


「あの!ちょっと待って下さい。この状況はおそらく何か理由がある筈です」


「どうして止めるの?私は単に事情を知りたいだけ。いくつか質問するだけよ」


「今それをやっては多分話がややこしくなります!」


 雨雪がどう言おうと、聞いてしまった魁世はまた何かやりかねない。今しがたコート内で繰り広げられたもの以上に厄介な何かを発生させるだろう。早紀には勘で分かるのである。

 魁世という人間が自分からは特にアプローチしないくせに、こと雨雪が絡みだすと変なスイッチが入って方々で動き出してしまう。早紀にとっては群蒼会としても南奧州行政としても、そして雨雪のひとりの友人としても看過できない事象であった。

 また早紀としてはせっかく合法的に仕事を休めるのに面倒事を増やしたくないのである。


「今日のところは黙って見守ってみるのはどうでしょう?今更ですし、ね?」


 そもそも今回の雨雪たちの立場はあくまで公爵から招かれた多くの賓客の一組であり、静観するのも手ではないのか?早紀はそう言いたかった。


「そうね、そうするわ」


 雨雪は武瑠たちが既に出場してしまった以上、魁世を詰問しても仕方が無いと判断した様だった。

 ……

 …

 皇女チーム、惟義チームは二回戦を勝ち抜き、惟義チームは三回戦に勝てば主催者の公爵チームとぶつかり、予定通り負けることになっている。つまり惟義チームにとってはこれがガチンコ対決のできる最後の試合であった。

 三回戦は午後から始まるため、今は群蒼会の男子全員で昼休憩をとっている。

 八人は昌斗が当初いた丘の上に集まり、車座になって地面に座り込む。


「うむ、朝早くからこんなに立派な弁当を作ってくれるとはありがたい、能代には帰ったらしっかりお礼をしなくては」


 惟義は榛名のつくった弁当を頬張りながら言うが、明可は一応といった雰囲気で聞く。


「そういえば惟義、手は洗ったか?手拭いで拭くでもいいが」


「?してないぞ」


「とうとう染まってきたな。この世界に」


 明可は感嘆半分、呆れ半分で呟いた。

 明可はいちいち指摘するつもりは無かったが群蒼会の男子メンバー、特に武瑠は顔に泥をつけた状態で弁当を開けており、これは問題ではないかと感じた。歴史の授業で看護師の母と呼ばれた女性を習った、その女性は戦時医療において衛生環境を整えたことで負傷者の死亡率をぐっと下げらしいと。これは軍を率いる自分たちに必要不可欠な事項なのではないかとも思った。

 実は執権の雨雪を中心とする女性陣が南奧州の衛生観念を前の世界に近づけようとしていた。医療施設といった場所から徐々にであったが惟義たちがその流れに呑まれることは時間の問題だった。だがそれはまた別の話である。

 しばらく舌鼓(したつづみ)を打っていた惟義だったが、ふと思ったことを呟いた。


「今思ったんだが、俺たちは誰が一番強いのだろうな。真剣で勝負ともいかないから今回がいい機会になりそうだ」


 聞いていた男子全員に電流が走る。


「そんなこと言ったって、たかがゲームだぞ」


 魁世は自身の妙な震えを自覚しつつ火消しに走る。だがそれで収まるものでは無かった。


「そうだね、たかがゲームだ。それはそれとしてボクと魁世はガチ勝負でいいね!」


「なぜそうなる」


 さっそく武瑠が宣言した。こうなると他の男子たちも止まらない。


「確かにこれを機に強さに基準を設けておくべきだろう。そうだろ?明可」


「おおむね同意だがお前と俺は同じチームだ。間違っても後ろから刺してくるなよ」


「ふっ、分かっている」


 明可と直はそうのたまう。


「惟義たちがその気ならこっちもやるしか無い。な、琥太郎!」


「え⁈ええ、まあ、うん、そうしようか」


 興壱に無理やり肩を掴まれた琥太郎だが、彼も満更ではなさそうだった。

 魁世は最後の希望として昌斗を見る。昌斗なら冷水を浴びさせてくれると信じて。

 だが昌斗は黙々と弁当を()んでいた。まるで自分は関係無いかのように。

 …

「フラーレン殿下、先ほどの試合は個人技で乗り切りましたが次の相手(魁世たち)はこうはいきません。いかがいたしますか」


 昌斗は試合前のミーティングをフラーレンと始めた。


「そんなこと言われてもね…アンタのやりたいようにやりなさい」


「殿下の美点は他人に任せることができることです」


「それって皮肉?」


「いいえ違います」


 フラーレンは無表情を貫く昌斗が本当は内面、感情豊かな人ではないのかと思った。


「余から言えることがあるとすれば、今日姉上と余が皇帝(お父上)に秘密でここに来た理由は単なる好奇心、そろそろ本格的に自由でなくなるから最後に無茶したかったの」


 自由ができなくなる、それは他国もしくは帝国の政略のために嫁ぐことを意味する。

 昌斗は興壱たちに向き直った。


「それでは各々、作戦を伝える——」


 魁世は何やら話し込んでいる昌斗たちを見て嘆息する。


「なんだか負ける気がしてきたなぁ」


 魁世の言葉に惟義は漫然と返す。


「それは困る。先ほど一番強いのは誰とか言ってしまった手前、負けるわけにはいかん」


 直と明可からしても同様だった。


「ふん、そうは言うが勝てる算段はある。違うか?」


「正攻法でいきたいものだが、この際は奇策でも構わないぞ」


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