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【最終章突入】群蒼列伝~異世界に召喚された征服系主人公はクラスメイトと共に世界征服を開始した~  作者: 大ミシマ
第二章 征途洋々

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間話 奴隷と仕事と対価

 ナンオウ州に派遣されたばかりの話。

 ナンオウ州の最高意思決定機関、それは三頭会議あるいは三頭体制と呼ばれる。文字通り三名、領主の惟義、内政全般を担う雨雪、内政の一領域と軍政を担う魁世で構成されていた。群蒼会でも意思決定を下すこと(めんどくさいこと)に積極的な者は少ない、そして戦災の傷が残る南奧州にはもっと居ない。そうして半ば自然発生的に生まれた体制だった。

 三頭会議の冒頭、魁世と雨雪を前にして、惟義が些か不機嫌に宣言した。


「奴隷制度は良くない。いますぐ廃止だ」


 長距離行軍中、惟義は太った商人風の人物に首輪に繋がって歩かされる暗澹とした表情をした者達を見た。その場で商人風の男を詰問し、言い合いになった惟義は抜刀、奴隷商人と判明した人物を叩き斬った。その奴隷は近隣の荒廃した村落から連行されてきたらしく、惟義はその場で奴隷たちを解放した。とのことだった。


「魁世、雨雪さん。これは領主権限だ。奴隷制度と、それを引き起こす存在を廃絶させる」


 まだ魁世と雨雪が口を開く前に、惟義は熱っぽく拳を握り締めた。


「世界とか時代が違うから、必要悪とかそういう理屈の話じゃないからな。断固としてやる」


 熱弁は終わり、おずおずと魁世は手を挙げる。


「解放した奴隷はどうしたんだ?」


「?たぶんだが村に戻ったんじゃないか」


 それがどうしたとばかりな惟義の顔に対し、雨雪は目を瞑って危険信号のように眉を叩き、魁世は苦笑い気味に腕を組んだ。


「彼等の村は荒れているんだろ。そこに戻しても生活はどうする」


 惟義の気持ちも分かる魁世は穏当でも、雨雪の声は冷徹だった。彼女は睨んだつもりは無くとも、惟義と隣に座る魁世は雨雪の鋭い目つきにたじろぐ。


「最悪、生活困窮で野盗化しかねないわ。すこし無責任じゃないかしら」


「まあまあ、その人たちは僕の方で預かるよ。工業部は人手がいくらあっても足りないからさ。全員、奴隷は失くした方が良いのは賛成だろ」


 さすがに魁世が助け船を出す。元の世界の学級委員から、惟義と雨雪の意見相違はあった。魁世はそれを上手く調整してきたつもりだった。


「賛成だとも」


「賛同はするわ。やり方はもう少しよく考えてから」


 実際のところ、元の世界においても、魁世が問題を生み出すないし大きくすることの方が多かった。文化祭や体育祭で学級の自立と自由を守るために行ったそれらは、常に雨雪の頭痛の種となる。それが魁世の意思によって引き起こされるのだから始末に負えない。


「雨雪のつくる法律に、自由意志を奪った強制労働を禁じる条文を加えよう。奴隷と、それを売りさばく商人の対策は僕がやる」


 こうして南奧州においては奴隷そしてそれらを売買する行為を禁じる運びとなる。この世界では最初の珍しい条文だった。


 …


 帰りで魁世は雨雪に手を張られて、歩きながらまず持論を述べさせられる。


「自由意志が制限され、強制的に労働や売買させられる事は見てて気分は良くない。ただ、社会構造として存在する以上、簡単では無いね」


「制度をつくるのは良いわ。けれど、実際に強制させるのは大変よ。また警備部長の足柄琥太郎にやらせるの?」


 冷厳とした雨雪の言葉が刺さっていく。きっと帝都防衛戦で琥太郎に雨雪たち残留組を保護という名の監禁をさせていた事を根にもっている、そう魁世は理解していた。


「いやいや、僕はもっと根本から見直していこうと思う。自由意志を奪い、強制させた奴隷を持っていることがマイナスになる社会を構築する。例えばそうだな」


 歴史上、奴隷とは負の存在だった。魁世もそれに異論はない、自由意志を奪われることの屈辱は、飛躍するがドミトリーズ世界政府という天空から圧迫する存在で知っている。奴隷がこの世界で存在するに足る有用な存在だとしても、それが不幸を振り撒くのなら廃絶に越したことはない。


「脳汁をドバドバ流させる対価を払えば、自由意志をもった作業員でも馬車馬の様に働かせられる。十分な給料を払い、仕事に目的を持たせ、奴隷を使っても生み出せないモノを作る。そうすれば自然と奴隷は消えていく」


 引っ張るのを止め、雨雪は振り返った。


「それは薬物を使えば行えることでもあるわ。奴隷廃絶と同時に危険な薬物の摘発も行う、いいわね」


「御意のままに」


 こうして南奧州、隠密に帝国中に跋扈する奴隷商人の掃討が開始される。鎖を切られた奴隷の多くはナンオウ州工業部に所属していく。後に正式に誕生する魁世の直属部隊がそれらの実行に当たった。

 これがまた奴隷を利用する貴族や商人連との衝突を生むが、魁世は上手くそれらに対処していく。貴族には質の良い高級娼婦を提供し、労働力には安くした農作物を買わせ、それでも云う事を聞かなければ、魁世自ら、彼等を自然死(暗殺)していった。後になって藍もとある特務機関として協力することとなるが、それはまだ先の話。

 魁世はまた新たな元奴隷、職を求めてきた者達を工業部へ連れてくる。


 「新しい従業員だぞー!」


 「おお、有難いです。これで作業がはかどります。それと、私めの管理許容量が圧迫されまする」


 冗談を言えるくらいならまだ大丈夫と魁世は判断した。


 「何を云うんだアライ工業部長代理!まだまだ来るぞ!仕事も増えるぞ!この世界を科学と良質な量産品で征服するんだからな!」

 

 魁世は上機嫌そのもの、不安を感じさせない。これにはアライも仕方ないと腕を振るうのだった。

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