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群蒼列伝~高校生二十三名は召喚された異世界で征服戦争を開始した~  作者: 大ミシマ
第六章 魔王と覇王

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第二百九十五話 異世界合同委員会Ⅲ

 ヨシムラたちがもう味方を兵二〇ばかりになりながら進んだところに、彼はいた。

 見つけた途端、よく通る声で言ってくる。いぜんプラウハで会ったときの声とは違う、どこかの大英雄を思わせる余裕があった、


「待っていました。諸先輩方」


 背後には大幕営の天幕。左右に片眼鏡(モノクル)の大皇補佐官、元修道女にして金砕棒——鋼鉄指揮棒を握る保衛部長が立つ。周囲には黒灰の軍服で統一された兵達が数百にもなって銃剣を構えている。中には軍刀らしきものを下げていて、指揮官クラスの将校なのだろうとヨシムラたちには想像できた。

 そして中央、床几らしき腰掛けに大股で座るの人物こそ、ヨシムラやオースビスたちがその命を狙う存在。大皇カイセ・ニイロ。


「わざわざの出迎え感謝します。カイザー・カイセ」


 なるほど英連王国情報第六部の情報は確かだ。オースビスが共有してきた話の通り女性二人ともえらく美人だし、これで宰相代理や黄金髪の総裁も凄く綺麗らしいのだから、英雄色を好むというのもあながち間違いでは無いかもしれない


「のこのこ出てきたか。ヨシムラ、一気に決めるぞ」


 副王オースビスがヨシムラに短く耳打ちしてきたところで、彼等のいる一帯に急速に魔力が満ちてきた。

 魁世は量産軍刀を抜き、剣先を向けていた。


 教科書57ぺージ、第三項、重多面構造結界

 教科書113ページ、第一項、結界離合

 教科書666ページ、第六項、不可触生命体・三体召喚

 同ページ、第七項、不可触生命体簡易支配


 ここまで三秒。但木翠の生徒や並の魔法使い、大魔法使いとも謂われる人物でも魔法の発動には一つに四秒はかかった。しかもこうした規模の大きな大魔法は一日に一度すれば発動者に心身の疲労と、脳に隙間が出来るような激痛を生じさせる。


「結界か⁈」


「悪魔召喚、カイザーの割に環境汚染、世界の敵が」


「…歴史を巻き戻す気でいるっ!」


 ヨシムラ、オースビス、フォーミュラは即座に武具を握り締めた。

 結界の中に閉じ込められ、中を皮膚の赤黒く蝙蝠の様な翼をつけた悪魔が飛翔している。悪魔と呼ばれた不可触生命体——翠が命名した——は一発で人を殺戮できる魔法、教科書で50ページ以降の魔法を、対空しながら連続で発射してくる。

 悪魔の攻撃は生き残っていた委員会軍の兵達を一瞬で蒸発させた。魁世が平易に命じたのだから当然だったが。

 すると錆銀の鎧を纏うフォーミュラは、手にしていた黎明戦旗レタンダール・ドゥ・ローヴを身体を芯にして回転させる。


「この地を再び浄化する。レタンダール・ドゥ・ローヴッ!」


 その戦旗は白百合王国の王朝が今とは別の血統だった頃、頸烈の戦乙女と戦場で畏れられ、あがめられた女将軍の武具。旗は紺の下地に銀糸の白百合が花開き、先端には古より変わらない鋭利な矛がついていた。

 黎明の名が示すように、この戦旗は白百合王国の夜明けを呼び起こした。頸烈の戦乙女とその戦旗は長く内戦と飢餓に苦しんでいた白百合王国の民の前に降り立ち、王国を再び一つに纏め上げたとされる。

 守り、そして回復せよ。レタンダール・ドゥ・ローヴはフォーミュラに導かれ、悪魔の魔法を弾き飛ばす。すぐさま周囲に光の粒子をつくり出し、それは高速に動いて滞空する悪魔の方へ殺意をもって襲い掛かり、体内を容易く貫通させた。それは他の悪魔にも同様に襲い掛かり、撃墜させていく。地面に堕ちた悪魔は黒い粒子になって消えた。


 オースビスは結界に向けて躊躇なく武具を振るう。

 七王騎槍ヘプター・ランケアー、英連王国開闢の祖王グレート・アルビオン(白亜王)が、当時七つの王国に分かれていた英連本島を平定する中で開発され、幾度の戦場で活躍してきた伝説の武器。

 形状は騎槍、柄や金獅子の装飾は黄金色で覆われ、剣に刻まれた文様は血を想起させるほど赤い。おおよそ王国開闢の五百年前らしからぬ意匠のランスは、王家伝来の、名だけは伝わる代物だったが、いまオースビスが持っている。

 騎槍はおもむろに正面から十文字に開き、中央から見るも凶悪な光線が放たれる。

 それは魁世の形成した重多面構造結界を次々と破っていく。溶岩が鉄板に落とされ、貫通卯していくように。

 つい先ほど魁世が構築した結界と悪魔が、ものの一瞬で溶けていく。

 魁世の周囲は少なくない動揺が噴き出す。


「わかったかフィーリア、ラウラ。あの人たちは正真正銘の英雄、かつてこの世界に人を襲う魔人や魔物がいた時代を終わらせた傑物、それが今僕らの相手している敵だ」


 ただ一人なにも発さなかった魁世は、すこし勢いつけて床几から立ち上がった。腰には量産軍刀と、またもう一振りの業物を佩いている。


「……かしこまりました」


 保衛部長であるのに、これから始まる戦線に参加できない悔しさを滲ませるラウラに、魁世はなにか言って元気づけようとするが止める。そして必要事項だけ告げた。


「砲撃はここまで届くだろう。だからここから十分に離れて、大幕営を頼む」「御意」


 大幕営。大皇となった魁世のテント住みとしての生活と、政務そのものを広く包括したそれの守護を任される。ラウラはほんの少し機嫌が上方(じょうほう)した。

 ひとり徒歩でまっすぐ、オースビスらの方へ向かおうとする魁世の背後からフィーリアが叫ぶ。


「陛下は必ず凱旋なされます!お待ちしておりますので、どうかご無事で」


 確定したり、お願いしたり忙しい補佐官だな

 愛されていると思っておこう。僕も愛しているさ


 …

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