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群蒼列伝~高校生二十三名は召喚された異世界で征服戦争を開始した~  作者: 大ミシマ
第六章 魔王と覇王

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第二百九十二話 ウォーテルロー決戦XIV本陣急襲

 バスティーユ要塞の本陣で、ヨシムラは続々と後退してくる味方の残存委員会軍を収容して、その作業に忙殺される。コガミとナイト(新田昌斗)ジョーカー(浪岡為信)の戦いなど気にする暇もない。

 大皇国軍はウォーテルローから撤退する委員会軍の背後を執拗に追い回し殺戮してくる。ヨシムラはそれを助けるはおろか、敵の大皇国軍がバスティーユ要塞へ侵入しないよう、撤退した最後尾の部隊を見捨てる選択をせざるを得なくなった。

 反撃の手立ては準備さえできない。要塞に戻ってきたフォーミュラ女伯や副王オースビス、大公義兄プリナコフら諸将はたった敵二名の奇襲で荒れ果てた本陣の中で、なにやら打開策を練っていたが、ヨシムラは負傷兵の収容を手伝いながら独り言つ。


「正面で敵と戦い、一大戦力を敵の南翼へ一気に回り込ませる。ここでその南翼を撃破できれば良し、そのまま側面と正面から圧迫。南翼を撃破できず敵の救援が間に合えば、集中された敵戦力を総力を挙げ続けざまに包囲する。それが第一の策」


 これは彼にとって自分自身の思考を纏める役割もあったが、ヨシムラにしては既に反省会をしている気も沸いていた。


「第二の策が今さっきぼろぼろに敗れて帰ってきた浮遊船。ワンサイドゲームになると期待したものの、カイザー・カイセも浮遊船を持っていた。しかも変形超人なんて、無茶苦茶だよ」


 続けてヨシムラは要塞外を見やる。


「第三の策も今、駄目になった」


 第三の矢は今回選抜された一〇〇〇〇〇の兵を除く、後方に控えていた残りの二〇〇〇〇〇の兵を、ウォーテルロー全体を囲う形で急行させるというものだった。

 余りに兵が多いと指揮統制がとれないという統帥上の問題もあり、邪魔だと切り捨てていた、いわば残り物を今更になって呼び寄せた形になる。


「作戦ではウォーテルローの勝敗に関わらず、群蒼会の大皇国軍を包囲できるところだったが、あのカイザー・カイセがそれを座視するわけもない。よな」


 結論からいえば残り二〇〇〇〇〇の兵がウォーテルローに到着することはなかった。

 ウォーテルロー外周を駆け回り、競技のごとく敵将を矢でつぎつぎ仕留めてゆく男は、群蒼会一の弓取りにして、大皇国一の弓取り。


「将帥狙撃三十三連ッ!!!矢も避けられない武将と兵隊しかいないんじゃ話にならいぜー」


 黒耳長人で構成された大皇国軍の外人部隊こと白鯨戦闘団、その副長で弓使いの興壱。

 元の世界由来の和弓で剛矢を連射し、駿馬を操る那須興壱は、縦横無尽に平原を駆ける。ウォーテルローへ向かう数々の部隊へ殺到しては指揮官を狙い撃ちして行軍不能にしていく。


「相手は弱兵だ、戦うことなく避けて通れッ!」


 白鯨戦闘団指揮官のニュー・ティオ・トゥアンは、副長に謂われるがまま戦場へ部隊を動かし、面白いように敵将を射かけてゆく。

 後方の兵二〇〇〇〇〇の実態とは、精鋭を引き抜かれたという単純な話ではない。精鋭には部隊長や指揮官も含まれ、そうした中級指揮官まで精鋭一〇〇〇〇〇へ引き抜かれたことで命令系統が脆弱、あるいは意味を成さなくなり、一度一番上の指揮官を討たれては次の行動がとれなくなってしまった。


「要塞で迎え撃つか、あるいは」


 委員会軍の手札は、もうここバスティーユ要塞で徹底的に籠城戦をして、敵大皇国軍の損耗を待つしかない。それが普通の戦法だった。


「……オースビス」


「…そうだな、それしかあるまい」


 本陣の中での将帥二名の言に、フォーミュラも無言の肯定を示した。

 委員会軍が全てをひっくり返す手はあと一つしかない。コガミ・ガイゼンはどこかへ消えた。

 ヨシムラとしても、もうどうにもならない状況でも、それでもなにか打開策があるのなら。そしてソレが過去に成功した手段なら縋りたくもなる。自分には帰りを待つ妻と娘がいて、必ず帰るのだから。

 敵軍の総指揮官で、役職は最高司令官。世界を支配せんと目論む首魁、大皇カイセ・ニイロを討ち取る。

 委員会軍の残存兵力の全てを以って、敵本陣へ奇襲。斬首作戦を開始する。


 …


 バスティーユ要塞の城門は開かれる。

 委員会軍は最後で死力の突撃を繰り出した。

 大皇国軍はバスティーユ要塞を囲うために広く再展開したために、魁世のいる中央の戦列が比較的薄くなっていた。委員会軍はそこへ最大の攻撃を叩き込む。

 次々と大皇国軍の戦列、槍衾が破られていく。

 それを眺め、己の武具の再点検を始めたのはカイザー・カイセ。


「この銃剣、軍刀こそ、僕の聖剣だ」


 彼は伝説的な武器を持たない。

 魁世は大幕営、保衛部、直隷部隊の兵達に向かって、大皇国軍共通の量産軍刀を握りかざす。


「諸君らの銃火は僕の銃火であり、諸君らの殺戮は僕の殺戮。僕の血肉は諸君らであり、僕の栄誉は諸君らの栄誉である」


「勝利しようと攻めたてろ。幻想空想おおいに結構!されど敵の形を見失うな。己に問い続けて答えを求めつづけよ」


「真の防御は己の胸中にあって、戦果は足にあり。積み上げた果てで幸運は揺らめいている」


「幸運を、勝利を、戦果を、その果てにある全てを掴むときは今!これより新生世界の開闢は当来する!全兵進め——!!!」


 兵達は熱狂する。将校たちは大地の震動とは別の震えを覚え、これは陛下がかつて仰った武者震いと己を納得させる。

 味方の幾重にも構築された戦列を突破する敵を前に、大幕営は前進を始めた。ウォーテルロー決戦は終幕を迎え、バスティーユ要塞の戦いが始まる。

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