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群蒼列伝~高校生二十三名は召喚された異世界で征服戦争を開始した~  作者: 大ミシマ
第六章 魔王と覇王

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第二百九十一話 ウォーテルロー決戦XIII改造戦艦

 地上の委員会軍が後方への撤退を開始した頃、大空の戦いにも変化があった。

 群蒼会の平群美美と桑名鶴夏が操縦する旧千年帝国の遺物こと巨大な長方形の“箱”と、異世界合同委員会の面々が駆る聖櫃帝国の背櫃そのものである長大な“櫃”。二つの摩訶不思議な宇宙船、ないし浮遊船、あるいは世界転移船、時空転移船の二隻は、互いに一隻の敵を発見してからというもの、熱光線やミサイルを飛ばし合って、物理防壁やシールド防壁を張り合い、乗っている船と地上の自軍に影響がないように戦っていた。

 だがなかなか決着はつかない。元は同世代も羨むキラキラという修飾語のつく女子高生、平群美美は艦内指揮所で舌を出す。


「ああもう!こっちは地面も気にしないといけないなんて!」


 それは艦の所有者である魁世から言い含められていたことだった。

 なにせ今回、魁世はこの艦を作戦に取り入れることはせず、あくまで委員会から用いてきたら対抗で出撃させるという手法のみ採用する。

 まったくもって消極的な運用で、それこそレーザー熱光線で敵兵を軍団ごと薙ぎ払うことも出来ると、美美と鶴夏は魁世に高く可愛らしい声で抗議していた。

 研究や実証を繰り返し、この“箱”への探求心は十分だったものの、魁世はこの艦をこの決戦で用いることには消極的だったのは、不確定要素が多すぎること。また戦場で大規模な兵隊同士の戦いで決着をつけることが、れからの国家運営に欠かせない“物語”あるいは“神話”として有用と考えたからだった。

 しかしその消極性、相手が出すまで出さない姿勢が、結果として委員会側の“櫃”を有効な一手で用いることを阻害させる。

 先制積極防衛と言い出すカイザー・カイセが、まさか空間移動の出来る船を手に入れて先制攻撃に使わないわけが無いと、委員会の思考を狭窄にしたのである。


「美美ちゃん、魁世くんに“奥の手”を使ってもいいか聞いてみたら?」


「やっちゃう?じゃあ、やっちゃうか」


 美美は艦内に取り付けた魔法通信の装置で魁世へ連絡した。


「魁世、前やったヤツやっていい?」


 地上の魁世は、大幕営の通信機材から声を聞いている。


『それが無いと勝てないか?』


「うん」


『うん、て…ちゃんと考えているんだろうな』


 呆れたような声だったが、この奥の手をつくったのは魁世その人だった。それもこうした艦同士の戦いの為、使わない手はない。


「考えてるしー。そんな意地悪しないでよー」


 美美は、どうして魁世が自分と鶴夏に、この“箱”の操縦を任せてくれたのか、いまだ釈然としていない。魁世は「ゲン担ぎだ。幸運の女神が操縦する船ならきっと沈まない。しかも二人だ」と恥ずかしげもなく言ってきた。

 いつの間にか不思議とそれで操縦担当を「OK」と云っていたのも、魁世へ不快や不信が無いことが大きかった。


 鶴夏ちゃんも乗りたいって言ってたもんねっ!


『ま、いいよ。やってみせろ!美美!鶴夏!』


 美美は「ゲンチとったー」と変わらず軽い、

 それを聞いた鶴夏が、どこか魅了されそうになる元気な声で“決め台詞”をマイクへ声に出した。


「改造変形!グンソー・ゴー!」


 すると“箱”は空中で瞬きの間に音もなく、だが見る者、委員会の面々には音を想像させるように“変形”していき、腕を、足を、胸部装甲を、顔を、背面に羽を展開した。

 鉄の巨人。否、宇宙戦艦の鋼鉄擬人である。

 ——千年帝国の遺物である“箱”について、ほとんどの群蒼会メンバーは興味を示さなかった。というより、原理も何も分からないソレを自分勝手に弄り回す心臓に毛が生えている程度の度胸が無かったというのが正しい。ただ中には、そうした事に物怖じしない人物が二人ほどいた。魁世と但木翠、この二人は“箱”の操作系や駆動系を触っては実験をし続け、ついに箱の最大の特徴を導き出した。自己修復、変形分離合体、そして座標移動である——


「超越改造!グンソーハオウ!!押して参る!!!」


 対する委員会の“聖櫃”は、逸ったのか動揺したのか全武装を開門し、目の前の攻撃を開始する。

 群蒼覇王(グンソウハオウ)、命名者は但木翠だが、後になって恥ずかしくなったのか魁世が名付けたと触れ回っている。

 指揮所の搭乗席で鶴夏は、かわいらしくモニターにむかって叫んだ。


「戦艦刀装着!」


 グンゾーハオウは鋼鉄の右腕を繰り出し、人間らしからぬ動きで背面から城塞サイズの武器を取り出した。

 戦艦刀。人間が使うには余りにも大きいが、戦艦——実際の大きさでは駆逐艦が近い——が人型になって使うのでは若干大き過ぎる程度の大業物だった。箱の内部にある、魁世と翠が弄り回して発見した工作機構を利用して鋳造され、今回群蒼会にも当然だが委員会にも初のお披露目となる。

 鶴夏は操縦桿を操作する。グンソーハオウもそれに従って動く。

 その巨体からは考えられぬ挙動で戦艦刀を振り回し、次々とミサイルを破壊していった。レーザーに至っては刃紋の傾きの偏光で明後日の方向へ弾かれる。


「突進蜻蛉衝き!(とっしんとんぼつき!)」


 いきなりの吶喊攻撃、刀の先をあろうことか聖櫃の方へ向けて飛行を加速させる。

 聖櫃は回避行動をとったがもう遅かった。

 戦艦刀は聖櫃の中央シールド、物理障壁を貫通、そのまま聖櫃側の指揮所を粉砕した。中の人間は豆腐が販売容器ごと潰れたような結果になる。

 そしてこれでは終わらない。


「大輪転斬り!」


 鶴夏の掛け声でグンソーハオウは一度聖櫃に刺さった戦艦刀を引き抜き、刃を上向きに持ち替えて下から聖櫃を一刀両断にした。剣先は僅かに赤い、それは戦艦刀という長大な武器に比して、だったが。


「エネルギー充填ひゃくにじゅ——」


 ただ、聖櫃もグンソーハオウと同様に自己修復機能を持つために、高速修繕を開始する。鶴夏と美美の駆るグンソーハオウにここまで失点無し。あとは必殺確殺の兵装で対象を仕留めるだけ。


「まって待って!鶴夏ちゃん」


 ただ一つ欠点があるとすれば、


「もうエネルギー切れ?」「じゃあもう帰っちゃうかー」


 グンソーハオウは再度変形して“箱”の姿に戻り、大皇国内にある秘密基地へ、魁世が謂うところの“ワープ”をした。委員会の聖櫃は空中をふらふらになりながらバスティーユ要塞へ帰還し、墜落するように着底する。

 美美と鶴夏には自己判断で戦線を離脱してもよいとしていた。魁世にとってこの“箱”は切り札であって、その辺で常時晒していい存在ではない。

 委員会にとってこの聖櫃は起死回生の一手だった。だがそれは内部の操縦していた異世界合同委員会の四名が意識不明の重体——五体満足で復帰するのが不可能——となって不発に終わる。

 時刻は昼下がり、ここから陽光は垂れ落ちてゆく。


 …

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