第十四話 終結へ
ディーオン半島をほぼ奪還、攻略し勢いに乗る嶋津惟義率いる義勇軍。
ここで惟義は義勇軍を大きく三つに分けた。
一つは引き続きディーオン半島を鎮撫する惟義の紫電隊。
一つは黒耳長人の集団と友好関係を構築するための興壱の内海を横断する小隊。
そしてもう一つは直の青菱隊、明可の百足隊による帝国周辺の異種族連合によって踏み潰され現在は国家の空白地帯となっていた小国家群の占領である。
異種族連合の圧倒的な数の暴力により滅ぼされた小国、例えば旧ガノア王国だが、異種族連合の同地占領部隊が突如として撤退したことを機に旧ガノア王国の貴族達によって王国を復興させようという流れになった。
だがそれは疾風の如く現れた明可の百足隊によって脆く崩れ去る。
百足隊は旧ガノア王国に侵入し、異種族に占領された結果まともな軍隊のいない王城を一気に制圧、同地を帝国領とした。
直の青菱隊はディーオン半島周辺の島々に位置する都市国家の占領において先ず沿岸の一つの都市国家を有無を言わさず蹂躙、降伏も認めなかった。
早く従属しなければこうなる。これを他の島々の都市国家に喧伝、広めた。事態の性急かつ重大さからこの話題は急速に広まり、都市国家の全てが使者を直の元に送り従属を願った。
これらは明可と直の速度を重視した進撃と兵の士気の高さといったことも重要だが、降伏または従属すれば基本的に行政権を委ね、人員や金品の要求をしないことが小国家や都市国家の心を傾けたと云えた。
もちろん“有志”の“寄付”は大歓迎だったが。
そんな絶好調の惟義達に、義勇軍の主に侵攻する南とは逆の北側から惟義達と同じ思惑で軍を動かし始めた国が現れた。
「申し上げます!ホンダ様麾下の先遣隊より早馬で、北から武装した大部隊が此方に向かって来ているとのことです!」
その国の名は“ドラクル公国”、西側人類国家の五列強の一つである。
元首はドラクル公ヴァルド・ノヴァーナ。人々は彼を“竜公”と畏怖していた。
「うむ、きっと強いだろうな。だが強敵だからこそ燃えるというもの!」
新納魁世の意図しなかった形で第三の敵が現れ、戦いが起きようとしていた。
……
…
帝都帝城の御前会議はいつになく室内空気が滞留している。
ここ最近権勢を振い始めた内務尚書ハウゼン率いる保守派は他の貴族達を睥睨しながら演説する。
「あの自称義勇軍は現在生死の分からない皇女殿下お二人を誘拐し帝国に害を成そうと“皇帝陛下の賓客を騙る”ならず者達が率いています。
このまま状況を座視していてはこの千年続く神聖なる帝国の沽券に関わるでしょう。畏れ多くも御宸襟を安らかにするためにも早急な義勇軍への投降勧告、謀反人の捕縛を急ぐべきです」
この話し合いはここ一ヶ月ほぼ動いておらず、ただハウゼンが自身の主張をしておしまいであった。
貴族や廷臣たちの話し合いが何一つ進んでいないのに対して、皇女誘拐の謀反人として帝都では指名手配となっていたコレヨシやナオにアキヨシと名乗る者らと、彼ら三人に率いられた自称義勇軍が破竹の勢いで帝国領土を異種族共から奪還しているという報は時報の如く届いてくる。帝都に籠っても何もできない廷臣らへの当てつけであるかの様に。
他の貴族達も大した反論もしないし、宰相という最高位の人物も口を噤んでいた。
ここ数日のハウゼンの動きは如才なかった。他方では帝国廷臣を上手く自陣営に引き込み、また他方では他派閥の領袖と会合を開き友誼を結ぼうとしていた。
現在の宰相は高齢、次の宰相はハウゼンではないか。そんな言説も廷臣達の間で流れ出している。
そんな時だった、カビの臭いさえしてきそうな部屋の締まっていた扉が大きく開け放たれたのは。
「あら、皆さんお揃いね」
そう凛として現れたのは中央に伊集院雨雪、左右に新納魁世と朽木早紀。雨雪の声に魁世は「茶番開始」と自嘲の感を覚えながらも、彼女に芝居内容を伝えた張本人として口にはしなかった。
三人の顔は、皇帝の客人として宮廷に招集されたときに、その場にいた貴族たちも存じている。
知っている者の一人であるハウゼンは怒鳴りつけた。
「貴様らはあの謀反人であろう!何故ここに——」
「何故?それは貴方にこの帝国を滅亡されるのを避けるためよ」
ハウゼンは状況が飲み込めていなかった。周りの貴族、廷臣達も同様であった。
謀反人がどうやって?何が起きている?
丁度先日の謎の義勇軍出陣と同じ心持ちであった。
「この私が帝国を滅ぼそうとしているだと⁉︎貴様ら無頼の輩…いや、謀反人の戯言なぞ誰が聞き入れるものか」
雨雪は顎を指で摩りながら目線を上に向けて話しだす。
「そう、そこなのよ。なんで私たちが謀反人になっているのかしら」
ハウゼンは目の前の黒髪をたたえた美人が言っている意味が分からなかった。
だが同時に不安にもなり始める。いつから自分はこうして宮廷内で偉ぶるようになったか、さては別の要素によって操られているのではないのか。
上座に座るエヴァルー皇帝はただ沈黙を守る。
「皇女殿下のお二人が夜中のうちに宮殿から消えていた。帝都に面した沿岸で深夜に不気味に燃え盛る謎の船。先日から皇帝の客人として何かと動いている集団。
確かに容疑者に私たちが上がるのは分かる。けど直ぐに帝都中で指名手配と言うには少し強引、無理矢理な気がしないかしら」
ハウゼンは反論しようとするが何故か言葉が出ない。
雨雪は続ける。
「確か私たちがメーリア、フラーレン両皇女殿下の御身を害そうとしている。又は害している。として謀反人としたのは確かハウゼン内務尚書殿、貴方だったわよね?」
ハウゼンは唐突に雨雪から水を向けられ一瞬動揺するも、毅然と反論しようとする。
「はっ⁉︎我ら廷臣は僅かな可能性であっても帝国そして帝室に害なす存在はひとり残らず駆逐する!それが私、帝国貴族としての忠誠と義務である。“お嬢さん”には少し難しいかもしれんがな」
「今、“僅かな可能性”と言ったわね」
周囲で様子を伺うことしかできなかった他の廷臣達も状況が分かってきた。
「皇女殿下の消息不明、その後の千年城壁への攻撃。これらの事象の後から急速にその政治的活動を活発化させている方がいらっしゃるようね。
たとえば畏れ多くも皇帝陛下に“過失”例えば“友人を重用したせいで娘を誘拐される”みたいな分かりやすい過ちを犯させる、もしくはそんな流れに持っていく。こうすれば役職である国務尚書の肩書きが役立つ。間違いを犯された皇帝陛下に代わり自分が実権をなし崩し的に担う。
こんなところかしら?」
ハウゼンは目を充血させ顔を真っ赤に染めて怒鳴り散らす。
「先程から訳のわからぬことを!貴様のソレも推論に過ぎぬではないか!」
すると雨雪は皇帝の方を向いて軽く鮮やかに礼をしつつ言葉を重ねる。
「皇帝陛下、ご無礼をお許しください」
黙っていた筈の皇帝は口を僅かに動かした。
許す、と。
「よし、おーい琥太郎!出番だぞ」
今まで突っ立っていたままだった魁世は開け放した扉から廊下に大声でなげかける。
クラス随一の大柄な男、周囲の人間からは気が小さいと言われ女性には弱い。実は柔道五段のかなりの剛の者、そんな彼と魁世はずかずかとハウゼンに近づく。
そしてハウゼンは気づいた。
これは皇帝陛下も織り込み済みの“茶番”であると。皇帝陛下はハウゼンを宮廷から“除く”ためにここまで芝居をしていたのだと。
ハウゼンは抵抗も許されず二人に拘束される。
布を口に詰められ手を縛られたハウゼンは御前会議から廊下に出される。
一時は皇帝を諫めるまでになった男。ハウゼンが拘束されるまで僅かな時間しか要さなかった。
三月二十九日 召喚されてから二十日目
こうして日誌を書くのにも慣れてきました。
今日は雨雪さんがなんか凄いことしてました。魁世くんの考えた“帝国を救う大作戦”の予定の最後のフェーズを雨雪さんが担ったそうです。
雨雪さんの活躍について詳しいことは別に書こうと思いますから今回は感想だけ書こうと思います。
なんだか事の黒幕はハウゼンさんみたいな感じになったんですけど、実際はどうだったのでしょうか。雨雪さんが言葉で丸め込んで魁世くんと琥太郎くんが物理的に縛って…なんだか一見落着風ですけど、なんかおかしくないですか?
あの後魁世くんから教えて貰いましたけど
『皇帝陛下は元から一応の忠誠心はあるがその力に驕り危険な上昇志向を持つ内務尚書ハウゼンを除きたかった。これまでの忠節と能力の高さから理由なく除くことはできないので、それらしい理由をつけて除きたかった。
そこで僕がそれらしい理由でハウゼンを宮廷から除けて尚且つ異種族連合を崩壊させる策を実行したんだ
皇帝は凄いなぁ、僕がやったことを座して見逃してくれたんだからさ
惟義たちが既に戦果を出していた頃で、お尋ね者だの指名手配だのという風聞は消え去るだろうっていう打算もあったけど、ともかく、何がどうあれコレで事は為った
まぁあれだよ“狡兎死して走狗煮らる”的なアレだよ』
うーんなんか引っかかるんですよねー。
魁世くんに大役を任されて必要とされて貰ってご機嫌な雨雪さんには申し訳ないけど、これって喜べるものなんですかね。
走狗煮られるなら私たちもいずれはってことですよね、いいんですか?それ。
あと昌斗くんは一体今の今まで何してたんですか?遊んでたんですか?魁世くんは『昌斗?あーアイツはハウゼンが俺たちに矛先むけるように仕向けたり野心剥き出しにするように扇動したり最後の雨雪と俺たちが宮殿に楽に侵入…じゃなくて入るために微調整してくれたんだよ』って教えてくれましたけどね、やっぱなんか隠してないですかね。
…と言いましても早紀のできることなんてほぼ無いんですけど。
あと、魁世くんが、どうしてこんな無茶苦茶な事をやったのかやっと判明しました。魁世さんが雨雪さんに地べたに正座したまま説明したらしいです。わたし朽木早紀には、魁世くんの秘匿名“帝国を救う大作戦”は足柄琥太郎くんが教えてくれました。
以下言われたことをそのまま写しています。
「敵を騙すにはまず味方から。これが魁世の最初におもいついたことだった。
十万の異種族連合を帝都包囲から撤退させるためには総氏族長を騙すことが必要だった。ただ、魁世は帝都の連中に異種族に内通しいる者の可能性をまず考えたんだ。
同時にクラスメイトでこの非常時に働ける人とそうで無い人に分けた。魁世から見て、その…雨雪さんは有事に見切り発車でも積極的になれる人とは魁世は思わなかったんだろうと、予想します…
首都にまで敵が攻め寄せるのは普通でないし、味方に内通者がいても不思議じゃない。ここで異種族を騙す案を帝都の連中に漏らして、いざ異種族のところに千年城壁の情報持って行った時に、内通者に異種族連合に全てバレていたら話にならない、らしい。
だからまずは帝都、帝国を騙す必要があった。けど魁世には帝都のどこに異種族連合の内通者がいるかなんて分からないし調べようがなかった。だから帝都にいる人全てを騙すことから始めようって、魁世は決めたんだ。
そこからの皇女誘拐。皇女には皇帝陛下のご命令の帝都脱出と言っておいて、海路で逃げようと海に出たところで船から落とし、陸上部の吉川さんと中井優輝さんに帝都郊外まで連れていってもらい、昌斗には海上で船を盛大に燃やして帝都と異種族連合の全てに“何かがあった”と認識させる。あとは僕ら皇帝の客人を名乗る者達が何かしたって少し吹き込めば、僕らは晴れて、晴れて?皇女殿下誘拐のお尋ね者になったわけです
国務尚書が魁世達を警戒しているだろうってことは最初会った時に分かっていたから、それもあって上手く騙せるとあったかな。ちょっと燃やせば焚き付けられるだろって
万が一の為に、本当に皇女を人質にとるという考えも、まあ魁世の最終手段としてはあったかもしれない。
十万の軍を数人で撤退に追い込むにはこのくらいのことをしないといけないって、魁世は考えたんだろうし、聞いてる朽木さんは無茶苦茶だって感じるだろうけど、魁世はみんなの為にここまでしたんだよ」
ま、なんか聞いてるとそんなものかなって感想が出ましたよ。けど
“クラスメイトをあえて危険な目に合わせることで自分に強制的に従わせよう”っていう思惑があったから、最初にクラスメイト全員が帝都で逃亡生活せざるを得ない状況をつくったんじゃないかって、そういう私の考えはちょっと歪み過ぎですかね
追記 これ日誌というか私の日記
時間は雨雪と魁世達が宮殿で弁戦を繰り広げる少し前に遡る。
北より五大国のひとつドラクル公国の軍隊が現れた。ドラクル公国軍は惟義達と同じように異種族連合に占領され、連合のいなくなった現在は空白地帯と化している小国家群を次々と併呑している。
惟義を筆頭に明可、直は新たな強者の登場に強敵を夢見てドラクル公国軍に向けて出陣しようとする。
だがこれは宗方透のいつにない真面目な声音で説得され取りやめになった。
実は透は僅かなお供を連れてドラクル公国軍を偵察しに言っていた。
透は軍旗が“全く動じていない”ところを見て自分達とは比べものにならない鍛錬と経験を積んだ強者と理解した。
明可は云う
「確かに強いんだろうさ。けどだからこそ打ち負かした時の心持ちというものは何物にも代え難…」
「これはマジメに言ってる。今戦えばみんな死ぬ」
そんなに透が言うならば、ということで出陣は取りやめとなる。とはいえ状況は決して傍観できる状況には無い。ドラクル公国軍とは凡その境界線を決めるといった平和的交渉を以て対処することになった。
……
「ほお、其方らがあの義勇軍とかいう者らの頭目か」
黒の長髪をもつ偉丈夫は、顎髭を摩りながらそう言った。
黒と灰色の甲冑に真っ赤なマント、見るものを圧倒する風貌に漲る王の風格。この男こそが西側人類国家の五つの強国の一つを率いる者であることは否が応でも確認できた。
「こちらもお初にお目にかかる。こうして突然ではあったが仲良くしていきたい」
嶋津惟義はヴァルドとは風格の点で劣るかもしれない、だがそれはこれから身につけていけばいいと本多直には思えた。
交渉はドラクル公国軍と惟義の義勇軍の布陣した平原の丁度中央に天幕を下げた場を設けて行われる。
話し合いで決まったことはこの交渉している地から北側をドラクル公国、南側を帝国の切り取り次第となった。切り取り次第とはその地を武力で制圧しようが占領しようが自由であると認めるということである。
ドラクル公国軍も此処まで義勇軍と同じくかなりの強行軍で来たようで、ここでまた新たな敵を作ることは双方望ましく無いという考えから交渉は極めてスムーズに進んだ。
惟義の隣で突っ立っていた明可は案外簡単に終わりそうだと安心したが、同時に物足りないと少し残念だった。
ふとドラクル公は、何でもないように明可に話しかける。
「お主、随分と雅な腕時計をしているのだな」
明可は目の前の一国の主からの声かけに内心動揺しつつも、外面は平然を努力し繕って答えた。
「え?ま、まぁな。太陽光発電だから此処でも使えるんだ」
聞いたドラクル公は一瞬黙った。そして指で顎を掻いて何かを思案しているようだったが、いきなり鷹揚にして言い放つ。
「いやぁ、すまんがお前達を生かしておく訳にはいかなくなった」
惟義は一瞬聞き間違えかと思ったが、ドラクルの放つオーラが変わったと感じ、これは本気で言っているのだと肌で感じ取った。
表情はあくまで明るく声音も穏やかそのもの。だがその手に握られている長剣を流れるように抜き取り、明可の首めがけて一閃してきた時には、明可も直も椅子から転げ落ちるようにして離席し、なんとか地面に立って剣を抜いた。
明可は隠し切れず、自身の感情の起伏についていけないようだった。
「は、は⁈は⁈⁈」
ドラクル公は惟義たち三人に対して平然と長剣を向けている。つい先程まで平和に話していたではないかと、明可は言語を逸し、彼を心配した直も声端は震えていた。
直は落ち着かせようとして何か言おうとするが、彼も琴線の揺れの挙句に思ったことをそのまま口にしてしまった。
「明可!落ち着け、斬りかかるなっ」
明可の言葉もあって天幕の内側は一瞬にして騒然となった。
その場にいる義勇軍側の傭兵団長の面々だけでなく、ドラクル公国の家臣達らしき騎士達も状況を飲み込め切れていないようだった。とにかく反応は遅れたものの、双方剣を抜いて構える。
ただ一人、泰然として椅子に座る惟義はドラクル公の意図を掴みかねていたが、目の前の強き王は自分達を本気で殺める気でいることはよく分かった。
ドラクル公は自ら陣頭に立つ勇将で、名将の余裕を以って剣を構えたまま話し始める。
「お主らを殺すことは私の為でもましてや愛する公国のためでもない。この星、世界のためだ。お主らが生きていてはいつまた“奴ら”が空の彼方から現れこの世界ごと火の海にするか分からん。
言っている意味がわからんかもしれない、だが此方も必死なのだ。すまんがここで死んでくれ」
明可と直が生存本能のままに虚勢でも殺気立ったのに対して、惟義はふと疑問に思ったことを口にする。
「うむ、多分俺たちを殺さなければならないのは、あれだろう?俺たちが“外”から来たから。先に言っておくが俺たち以外にも来ている奴はいる。しかも数十人だ。
ここで俺らを殺そうとするのは自由だが、うむ、今殺せば間違いなく他の者達は身の安全のために方々に散らばる。折角なら一網打尽にした方が得とは思わないか?」
惟義の言いたいことを理解した公は長剣を鞘に収めた。惟義も剣を収めたが直と明可はまだ剣を構えている。
ドラクル公はまた指で顎を撫でて言った。
「そうだな——お主らは此方の全力で以って叩き潰そう。あぁ安心したまえ今日決めた条約はちゃんと履行するとも」
ドラクル公はなんでもなかったかの様に天幕から出ようとする。だが、ふと振り向いて問いかける。
「お主らの名はなんだったかな」
惟義はしっかりと目線を据えて返答した。
「嶋津惟義、この世界の言い方ならコレヨシ・シマヅ。ここにいるのはナオシ・ホンダとアキヨシ・モリだ」
ドラクル公は鼻で笑ったかに見えたが、一言云ってその場を去った。
「お主らの全力の悪あがきを期待する」
こうして惟義達と惟義達を“殺さなければならない”勢力との初の邂逅は終了した。
「うむ、帰るぞ。全速力で」
「帰るとは帝都か?」
「帝都、いいやクラスメイト達の元へだ。これは相当面倒なことになったぞ……それとも魁世なら敵を早めに察知できたのだからギョーコウと言うかもな」
僥倖といえどもそれは問題が立ち消える訳では無く、油断する理由にはならない。
惟義は思案する。
あの時ドラクル公は“此方”と言ってきた。俺たちを殺さなければならない勢力は下手するとドラクル公国以上、もっといるかもしれないということだ
惟義達は帝都に帰還する。




