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第百九話 透参謀長の旅Ⅰ

 魁世は主任参謀で少将だが、宗方透は参謀長でずっと大佐である。

 階級はもちろん魁世が上になるのだが、現在も変わらず透が参謀長をやって主任参謀の魁世よりも役職は上だった。

 透の階級が大佐で止まっているのは、宮廷内で軍師としての透の働きが評価されていないどころか認知すらされていないからだった。惟義は正直に透の功績を宮廷でも語っているのだが、そこから昇進にはつながっていない。

 だがこれは、作戦の勝利は参謀の作戦を取り入れた上官の功績になるというある種極めてまっとうな考えからきている処置であり、当の透は昇進できないこととなど全く気にしていなかった。


 武官連は平時で透と共に仕事をすることはできない。

 魁世、明可、直は司令本部の廊下で遭遇し、雑談をしていた。


「透は時に藁の中、河川敷、倉庫の中で昼寝かなにかしていて、俺たちが基本見つけ出すことは不可能だ」


 そう語るのは主任参謀の魁世だったが、聞いた直は別の見解を示した。


「魁世、貴様は透の部下でありながら上司の居場所も把握できないのか?少・将」


 直の階級は准将だった。魁世の一つ下ということになる。


「あぁ耳が痛い」


 明可も苦笑交じりに加えた。


「だが今回は魁世でも流石に肝が冷えただろ。勝手に一人旅行に行ったそうじゃないか」


 一週間ほど旅にでる。武瑠を護衛につけた。しんぱいごむよう


 という一文が透の癖のある字で書き記されていた属領南奧州公用便箋が、普段まったく本人が使わない参謀長デスクに無造作に置いてあるのを魁世が見つけたのは昨日の話である。


「誘拐の可能性もある。探しに行くか」


 直の言に明可はまっすぐ首肯し、文句を垂れる。


「さすがに自由人が過ぎるし、見つければ説教しなとな」


 二人に魁世は大仰に、心底意外そうな声をあげる。


「直が人の心配をするんだなあ」


「ふん、透は我が軍の頭脳だ。心配では無い、危機管理だ」


「魁世だって既に手は打っているんだろ?」


 魁世はとくに心配するでもなく、すんなりと既に行っていることを謂った。


「一個小隊を向かわせている。武瑠とも何度か魔法通信で連絡をとった」


「武瑠なのが不安だ。あいつは前科がある」「ああ、奴は吸血姫エルジェベートとの遭遇時に仲間を置いて逃げたことがあったな」


 明可、直に散々な言われようだが事実なので仕方ない。


「話は変わるが帝都でまた出兵論が持ち上がっているらしい、今度は聖櫃帝国だ」


「またか、宮廷連中は戦闘を俺たちに押し付ける割に好戦的だな。魁世貴様は何か知っているか」


「大したことは知らない。うちの月餅翁の話だと千年帝国は何十年か前に聖櫃帝国を主力とする軍に大敗した過去があるらしい。他は昌斗からの情報で、旧ドラクル公国領が聖櫃帝国に小規模な領土侵攻を受けていて、そこを治める帝国貴族が怒っている。知っているとすればここまでだ」


 明可は首を振りながら溜息をつく。


「結局、俺たちは他動的に出兵しなければならないのか」


「南奧州はあくまで属領。独立した国では無いからだ、なぁ?魁世少・将」


 直は魁世を横目に言った。魁世はその訴えかけるような目をさらりと躱した。

 ……

 …

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