自分の子ども(小学生)にスマホを持たせるべきか
「おはよ〜」
「来たわねヒロアキくん。今日こそねじ伏せてやるわ!」
ディベート対決という言葉をご存知だろうか。
ある論題について肯定派と否定派に分かれて討論をし、論証の強さで勝敗が決まる対決である。
俺をねじ伏せると息巻いている美少女はミオ。
こいつは毎日俺にディベート対決を挑んでくる変なやつだ。
【今日こそ】という言葉を使っている時点で察するだろうが、俺はミオにディベート対決で負けたことがない。
「はいはい、で?、今日の論題は?」
「今日の論題はこれよ!」
ミオは毎回持参したホワイトボードに論題を書き、俺に見せてくる。
【自分の子ども(小学生)にスマホを持たせるべきか】
「わたしは持たせないべきだと思うわ!」
「じゃあ俺は持たせるべきで」
あらかじめ言っておこう。
ディベート対決が好きなだけあってミオはちゃんと論議する。
だが俺はこいつとのディベート対決では負ける気がしない。
なぜなら論破された時に、いかにもダメージを食らったかのようなリアクションをするからだ。
そして論題に対して不利な方を選択しがち。
勝敗を決めるのは俺の親友であるタカヤだ。
親友ではあるが、俺をひいきにするようなやつじゃない。
いつも客観的に判断してくれる優秀なジャッジマンだ。
そしてこのディベート対決で敗れた方には罰ゲームがある。
その罰ゲームもタカヤが決めることになっている。
「本日の罰ゲームを発表します」
(ごくりっ・・)
「勝った方が負けた方にしっぺ」
タカヤの合図で俺達の対決が始まる。
「では、ごほんっ・・開始っ!!」
戦いの火蓋が切られた。
【本日の論題】
自分の子ども(小学生)にスマホを持たせるべきか
【罰ゲーム】
勝った方が負けた方にしっぺ
【意見】
ヒロアキ:肯定派(持たせるべき)
ミオ:否定派(持たせないべき)
「ネットリテラシーって言葉知ってる?まだなにもわかっていない小学生にそんなのわかるわけないじゃない。小学生にスマホなんて言語道断よ!」
ネットリテラシーとはネットの情報を正しく理解し、それを適切に判断、運用できる能力の事だ。
たしかにネットリテラシーは小学生には難しいかもしれない。
ディベート対決で大切なのは最終的にどこで着地させるかを意識して論議することだ。
今回俺が考える着地点はここだ。
【ネットリテラシーを教育する為にも早めにスマホを持たせるべき】
そしてもっともらしいことを言う。
もっともらしいことを最初にに全て言ってしまうとジャッジマンの記憶には残りづらい。
小分けにして発言し、最後にトドメを刺すんだ。
それにつきる。
「もちろんネットリテラシーは知ってる。そんなものは親がちゃんと教育をすれば良いだけの話だろ。」
「小学生にそんなこと理解出来ないでしょって言っているの。小学生に高校生で習う問題が解ける?勉強しても中々できるものじゃないでしょう。」
さすがミオだ、もっともらしい事を言ってきやがる。
「高校生で習う問題はもちろん難しいだろうな。でもネットリテラシーと高校生で習う問題を比べるのは違うだろ。ネットリテラシーは小学生でも理解できる。むしろ小学生の頃から学ばせた方が良い。学ばせずに親に隠れてスマホを触ってなにかあったらどうするんだ。」
「ス、スマホを持ってないのにどうやって親に隠れて触るのよ!」
「親が寝てる間に親のスマホを触ったり、友達のスマホを一緒に触ったり、色々あるだろ。」
「じゃあ親はスマホを子どもに絶対触らせないようにして、小学生はそもそもスマホを持てない法律でも作っちゃえば良いのよ!」
「今回の論題は『自分の子どもに』スマホを持たせるべきかだ。論点をズラすな。」
「う、うぐっ」
ミオにダメージを与えた。
「じゃあ子どもがスマホばかり触って勉強しなくなったらどうするのよ!」
「親がスマホを触れる時間に制限をつければ良いだけだろ」
「ぐへっ」
ここで一気にたたみかける。
「確かにイッターネットは子どもの教育に悪いコンテンツもたくさんあるだろう。だがそのようなコンテンツを見ても動じなかったり、正しい理解ができる教育をするべきだと思う。そういった教育をした上でスマホを持たせるべきじゃないだろうか。いつかは持つことになるんだし。」
「小学生にはまだ早いわよ!」
「ピッピー!終了ー!」
「只今の勝負・・・ヒロアキの勝利!」
「ぐわぁぁぁあ!くっ、また負けてしまったわ・・」
「んじゃ、罰ゲームといこうか」
「いいわ、来なさい」
今日も無事勝利することが出来た。
ヒロアキがミオの手を取る。
ミオの顔が引きつる。
「準備はいいか?」
「ええ、もちろんよ」
(ふわわわわわ・・ヒロアキきゅんがわたしの手を握ってりゅ〜♡)
ん?
――ぺしっ。
「痛っ・・」
(痛い〜♡ヒロアキきゅん全然容赦無い〜♡でもそうゆうところが可愛い〜♡しゅき〜♡)
「す、すまない。強くやりすぎたか?」
「強すぎよ!あなた加減ってものを知らないの!?」
(全然良いよ〜♡もっとやってもっとやってぇ〜♡)
「す、すまない・・」
「ふんっ、罰ゲームも終わったことだしそろそろHRも始まるから早く自分の席につきなさいっ。」
(・・なんでわたしはいつもヒロアキきゅんに強くあたっちゃうのかしら)
これがミオの本性だ。
もちろんミオはわざとディベート対決で負けているわけではない。勝負にはいたって真剣なのであった。