中編
死刑囚田辺和也は世界を救うと信じて、殺人を犯した。
本当に和也は正しかったのか?
3部作の中編になります。
殺人の描写がありますので、苦手な方はご遠慮願います。
○○刑務所についた俺は刑務官に囚人名 丸谷明に面接を申し込んだ。
暫くして、刑務官が戻ってきた。面会は拒絶されたとのことだった。丸眼鏡の女のことについてと伝えてくれと頼み込んだら、看守は渋々、中に向かった。そして面会は許可された。
アクリル板越しに丸谷と向かい合った。坊主頭に鋭い目つき、その眼はギラギラと輝いていた。
「初めまして、○○出版から来ました田辺和也といいます。」
「あんた、あの丸眼鏡の女について、聞きたいんだって?」
丸谷は顔を顔を近づけて、すかさず本題に入ったので、俺も会話に入る。
「ええ、30年前にあの女を見て、数日前にあの時と全く変わっていないあの女を見たんです」
丸谷は顔を歪めて、舌打ちをする。
「とうとう、現れたか」
「どういうことですか?」
「記者さんは○○共和国の工事ミスによるホテルの事故で大勢の人が亡くなったのを知ってるか?」
「はい」
「その記事を見ていた俺はあの女を見た。そして、」
突然の告白に驚く俺の反応を確認したら、丸谷はフンと笑い話を続けた。
「何故か分からないが、印象に残る女だった。そして、歩いていると翌日にあの女を見かけたんだ。そして、手帳を落とした。それを拾って数ページ見ているとホテルで事故を起こした会社の人間の名前が書いてあった。」
俺はごくりと息を飲んだ。
「それで?」
「俺は思ったね。これはあいつからの挑戦状だとね。止めたかったら、新しく書いてある人間をやってみろとね。そして、俺は決行した。一人逃したがね。おかげで、大勢の命を失った。完全に止めたければ、全員をやれとね。あんたはできるかい?」
丸谷はそう言うと口を開けなかった。俺は絶句していた。
翌日、俺は伊藤圭介いとうけいすけにアポを取り付けた後、ヨシさんが自ら命を絶ったと連絡があった。
葬儀に参加した俺は冷たくなったヨシさんに会った。ヨシさんは悲しそうな顔をしていた。
伊藤圭介の元を訪れた。
「初めまして、○○出版から来ました田辺和也といいます。」
圭介は作り笑いを浮かべた。
「ようこそ、遠路はるばるお疲れ様です。吉野さんは大変残念でしたね。」
そう言った圭介の顔は歪んだ笑みを浮かべていた。まるで、ざまあみろというように、確かにヨシさんの記事のせいで彼は周囲の人間からは大分、誹謗中傷を受けたようだ。仕方ないとはいえ、不快に思った俺は本題に入ることにした。
「ええ、ところで、例の件についてですが、」
圭介は顔を真面目な顔に切り替えた。
「はい、何について聞きたいのですか?」
「事故の件についてですが」
「ああやはり、その件ですか」
「ええ、報告が遅れたことについてですが、どう思いですか」
圭介は顔を歪ませる。
「あれはあの殺人事件がなければ」
俺は自分の能力のなさを棚にあげて、自分を弁護する。この男の態度に怒りを覚えた。
「自分の能力のなさを他人のせいですか」
圭介は真面目な顔から一転、眉を顰めた。
「何だ君は!!君たちの会社の記事のせいで、息子が学校でいじめられて、自殺したんだぞ!!」
ものすごい剣幕の圭介に、俺は唯黙って俯いた。
「お前らのせいで、俺がどれだけ苦労したか知ってるのか!!お前が来る少し前に来た。あの吉野という奴の書いた記事のせいで、」
一旦、言葉を区切った圭介は俺を見据えた。俺はヨシさんがここに来てたことに驚いた。
「どうせ、お前はあの男からここに来たことを聞いて、俺への謝罪文を書いて、売り上げを伸ばして、点数を稼ごうとしてたんだろう」
俺は考えていた。なんのことだ?ヨシさん?謝罪文?どうなってるんだ。
「なんだ、だんまりか、お前は見るからに仕事が出来そうにないものな」
そういわれた俺は頭に血が上り、近くにあったガラスの灰皿で圭介の頭を殴打した。頭から血を流した圭介は屍と化していた。その顔は俺を蔑んでいるように見えた。
俺は部屋から出た。捕まったら、災害を防ぐことができないと感じた俺は名前が書かれた5人を排除することに決めた。
一人目は浅野を見かけると、一人になる時間を見つけると、背後から手に持った縄を首にかけて、背中合わせになり、縄を締め付けた。暫くすると、浅野は動かなくなった。更に20秒くらい締め付けて、浅野を残し、去った。
二人目の中井は他に誰も居ない駐車場にいる時、近づき、目の前で物を車の下に落とし、中井が取ってくれている所で容器に入れたガソリンを浴びせ、火をつけ、転がる中井を見ると逃げた。
3人目の源田は一人の時、すれ違いざまに包丁で腹部を2度、刺した。
遠藤と回の二人は、仲良く舟で釣りをしている所、自作の爆弾を投げ入れて、船を沈没させた。
岸に戻った時、事の顛末を見ていた客たちに俺は取り押さえられた。
そして、今に至る。
ありがとうございました。