ゴミ捨て場
私の住むマンションのごみ捨て場は、いつも不透明の黒いごみ袋が置いてある。規定では問題ないそうだが、いつも回収の曜日の早朝には必ず置いてあるので、誰かが置いているのは間違いないだろうが……やはり他が半透明の袋を使っているので黒い袋は目立つ。ただ、まぁ気にはなっていたけどそれ以上何かするわけではなかった。だが……朝にごみを出すのが面倒なので、深夜2時。ごみを手にごみ捨て場に向かうと……
「ん?」
誰かが、ごみ捨て場にごみを捨てて、去っていく。だが、その方向は私が住むマンションではない。というか、このマンションには10年以上住んでいるけど、あんな人は見たことがない。
「もしかして、住人じゃない人のごみ……?」
だとしたら問題だ。管理人に通報しようと思いながらも、夜のごみ出しは禁止されているため、少し逡巡してしまう。そして、黒い袋が目に入る。ごみ捨て場にはそれしかなく、先ほどの人が捨てていったのは間違いない。
「………」
他人のごみを開けるのはマナー違反だ。だけど……好奇心が、抑えられなかった。ごみ袋を開くと、中には……
「ひぃぃぃ!?」
大量の、人形の頭があった。日本人形、フランス人形、マネキンの様に大きなものもある。大声をあげ、袋を投げ出し、家に逃げ込む。
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翌朝。管理人にあのごみ袋について相談しに行ったところ……
「今朝は黒いごみ袋はありませんでしたが」
「え?」
管理人曰く、いつもあるのは知っていたが、今日はなかったのだと言う。昨夜見たものを話すも、適当に返されてしまう。それどころか、深夜ごみを捨てたこと、他人のごみを開けたことを咎められてしまう。それはその通りなのだけど……
「まぁ、不審な人物がいるかもしれないことは通達しておきますから」
しかし、それ以降黒いごみ袋が出ることは無くなった。だが……私の部屋の前に、人形の体の一部が置いてあったのは……無関係だと思いたい。
完