【第10話】『 ホテル - 白猫ハウス - 』
49.花束の約束【第1章】- The Twilight World -〈第10話〉『 ホテル - 白猫ハウス - 』
ここはベーゼル地域の中でもかなり田舎の方らしい。
あのおじちゃんの話によるとこの辺りに旅人専用の宿屋があるって聞いたんだけど………。
僕はひたすら見知らぬ道を歩いて辺りを見回していた。
貰った地図を頼りにしつつも、その地図があまりにも大雑把な出来に正直冷や汗をかいていた。
「ベーゼル地域の北らへん、進んで右向いてポンだぁ?!後は注意書で、この辺を真っ直ぐ行けば地獄行きって…………。バカにしてんのか!!!!」
そんな時だった、1人の少女が民家の屋根から全速力で駆け降りてきた。
「待て!!この盗人が!!」
どうやら警察?いや民兵と言うべきか、も後ろに着いてきており、少女は追われている様子だった。
「どいてっ!!」
「おわっ!!!」
ドン!!!!!!!!
状況を掴もうとするのも束の間、気がつけば少女は後ろに気を取られて僕の体に猛スピードで体当たりしてきた。
「イテテ、大丈夫?そんなに急いだら怪我するよ!」
僕は頭が回りながらも大人としての注意を図った。
しかし、よく見てみるとその少女の顔はどこか見覚えのあるような気がした。
「………ち……さと……くん?」
この世で僕を君付けする人は、一人しかいなかった。
でも、もうその一人は別の世界でお別れしていた。きっと聞き間違いに違いはない。
そう思って僕が顔を上げるとその少女とピッタリ目が合った。
その時、少し懐かしい気分を感じたのを覚えている。髪色は深い青色の少女。歳は10歳くらいの幼い見た目をしている子で、どこか昔の椎菜に似ている目をしていた。
「止まったぞ!!このパン泥棒め!!!」
そう言って追いかけてくる民兵達を横目に感じ、その少女は一言「コク……」と言うなり、その場で異様に姿を消してしまった。
「‥‥聞き間違い‥‥‥かな。」
僕の口からポロッと言葉が溢れた。
「クソ、あのガキ。また逃げられたか?!」
「おい!!この女性にぶつかったらしいぞ?!お姉さん、お怪我は?」
「ばっか!!この人は男だろうが!喉を見ろ!喉仏がある。」
「あっ!!これは申し訳ない。失礼しました!!」
僕はその場で腰を床に着けていた。
そんな中、二人の民兵が僕の元までやってきて、上官らしき人と新兵らしき兵隊さんが僕に話しかけて来た。
「巻き込んでしまって申し訳ない。奴はこの町で食料や魔導書を盗み出す常習犯でして、いっつも我々が捕まえようとするのですが、不思議な力で突然姿を消してしまうのです。お兄さん、旅人でしょう?ここへは何をしに?」
上官らしき兵隊さんが帽子を深く被り直し、僕の元まで来て優しく手を差し伸べた。
その手に僕は右手を翳して立ち上がった。
「ありがとうございます。ここへは、その、観光に。」
僕がそう言うと2人は驚いた様子で僕を見た。そしてここから一番近い旅人専用の宿屋、ホテル - 白猫ハウス - に案内してくれた。




