【第1話】『 異世界転生 』
40.花束の約束【第1章】- The Twilight World -〈第1話〉『 異世界転生 』
森の香り、鳥の囀り、太陽の光。
まるで久しぶりに感じる光景がそこには広がっていた。
と言うかココはドコだろう?
僕は今まで長い夢を見ていたんだろうか?
何だか凄く忙しかったような気がする。体がボロボロになって心がボロボロになって‥‥‥。
目が‥‥痛くて‥‥?
「アレ、ここほんとに何処だっけ?」
僕は草木の上で寝ていたようだ。気がついたら周りに小さな虫達が近づいてきた。何だか穏やかな感じがしてしまうな。
そっか、僕空から来たんだっけ?
だからこの大木をへし折ってクッション代わりにしてしまったんだろうか。
「あぁ、ごめんごめん。すぐに退くよ。」
僕が大木から降りると木はすぐに元通りになった。
それにしても変わった森だなぁ。ここにあるのは見たことの無い植物ばかりだ。
いや、植物だけじゃ無い。
動物も、虫も、花も、僕が今まで知ってる種類は何一つとして存在していないみたいだ。代わりににココじゃ新種の生態系があるんだろうか?
木は僕が見てきた木よりもはるかに大きいし、虫は見たことの無い新種ばかりだ。花は元々詳しい訳ではなかったが、ここの花はとても綺麗に咲いている。
「あぁ、何だか心地がいいな、ココは。もう少し寝ていても良かったかな‥‥。」
ずっと長い夢を見ていたような気がする。優しいくらいに残酷な夢を。
「ん〜? んん〜?? んんん〜?!?!」
僕は腕を組みながら考えた。
しかし、結局何も思い出せなかった。
まるでポケットの中からうっかり落としてしまったみたいに、記憶を探し求めても見つけられない。
最後に覚えているのは、ある1つの“約束”だ。
それだけは今でも覚えている。確か僕はとっても多くの人達と約束をしてここに来たんだ。
「世界が無くならないように頑張る‥‥んだっけ‥‥?」
今はお昼13時頃だろうか?凄く明るくて木の枝の間からお日様の光が差し込み、僕を照らした。
チョロチョロチョロチョロ〜
どこからか水が流れる音がする。
僕はその音に向かってゆっくりと歩き始めた。
この森を見て気づいた事は、とにかく色んな物が大きいんだ。巨大きな岩、巨大なキノコ、巨大な鳥。木は50メートル以上もあるし、木の実や葉っぱなんかは全部僕の体より大きい。
ぼくの身長が178ぐらいだから、ここの植物は大体2メートルは超えているのかも知れない。
巨大すぎる‥‥‥。
全て初めて見る物ばかりだ。でも、森の香りだけは僕の知っている森と同じな気がする。
この澄んだ空気はどこか懐かしさを感じさせるなぁ。
「よく学校の友達と山に潜って探検ごっこしたような‥‥‥。あれ、とも‥‥だち‥‥?」
少し歩くとそこには小川があり、その川に沿って歩いていると大きな湖があった。奥には大きな滝に虹がかかっている。
その向こうで大きな鳥達が数十匹程の群れの中で水浴びしている様子も見えた。そして何より湖の中には小さな小魚達がスイスイと気持ち良さそうに泳いでいる。
「まるでファンタジー映画の世界に迷い込んだみたいだ。ここはなんて幻想的な世界なんだろう。日本とは大違いだ!!‥‥‥あれ?にっぽんって何処だっけ‥‥‥。」
そんな事を言いながら1人で湖の周りを少し歩いていると、僕が着ている服のポケットの中に何かが入っているのを感じた。
ポケットの中の物を取り出すと、僕はここに来るまでの全ての記憶を取り戻した。それは赤いお花の髪飾りだった。
「しい‥な‥‥。」
これは‥‥。京都で椎菜に買ってあげた髪飾りだ。
式典用なのに学校にも付けて来て、大切にしてくれてた赤いゼラニウムの花飾り。
僕が“あの日”預かったんだ。
そうだよな‥‥‥。
君との思い出を忘れる所だったよ。僕は約束したんだ、必ず世界を救ってみせるって。
「ここは異世界なのか?」
あたりを見渡せば分かるように、そこは僕の知る世界とは全く違っていた。まさに幻想的なファンタジーの世界だ。
僕は“時の崩壊”から世界を救う為にこの世界に降り立った。
「つまり僕は異世界に転生したんだ。」
✴︎
あれから何日歩いただろう‥‥‥?
目的も無く、ただひたすら人に出会うために森の中を何時間も歩き続けた。
全ては誰か人に出会うため‥‥。
蔓草に含まれる水分や小川の水を飲んだり、葡萄のような丸くて美味しい果物を食べながらずっと森の中を彷徨っていた。
この世界に月や太陽は2種類存在しているようで、今の時間も方角も全く分からなかった。星座も気候も全く意味がない。元々居た世界の常識は異世界では通用しないみたいだ。
「‥‥‥あ〜。」
試しに声を出してみたが誰かが来てくれる訳でも無い。
反応するのはこの森の大きな獣やモンスターのような奇怪な生き物達。夜は特に危険だから大きな葉っぱの裏に身を隠して睡眠を取っている。
幸いな事にこの世界の気温は低すぎず高すぎずの丁度いい感じだ。ほとんど晴れている事が多かったが定期的に雨も降る。この森がどうしてこんなに巨大なのか今じゃ少し分かる気がする。
しかし、一向に人里は見えない。
それどころかこの壮大すぎる世界に人里なんてあるのか?と疑問すら浮かんできた。
そもそも人のいない異孵世界があるなんて当然の事だろうし、もしかすると僕は一生ここで生きていくしか無いのかも知れない。
そんな事を思っていると心が折れそうになる。どうしても“孤独”や“静けさ”は僕の体よりメンタルを消費させる。
あぁ、お腹すいたなぁ‥‥。
天世界では、何も食べなくてもお腹が空く事はなかった。眠たくなくてもいっぱい寝られた。
でも今は違う。
食べないと体は動かないし、寝たくなくても体は眠くなる。
恐らくコレが“生きてる”って事なのかも知れない。転んだら血が出るし、歩くとお腹が空くし喉も乾く。徐々に声も出せなくなってきた。
生きる事ってこんなに大変だったのかなぁ。“時の崩壊”から世界を救う前に死なないように頑張らないと。
しかし、ずっと孤独が続いてる。僕の心が折れるのが先か、誰かに会えるのが先か‥‥‥なんてね。
初めてここに来てからそろそろ9日が経つのか?1日のサイクルは僕の世界と同じだから分かりやすい。
人に会えない代わりに虫や動物とは仲良くなれた気がするよ。
今日はずいぶん歩いたなぁ。
よし、
今夜はこの辺でキャンプをしようと思う。
昔お父さんから教えてもらった火起こしのやり方を今も覚えていたおかげで火には困ってない。
火起こしに必要なのは「木」と「熱」と「酸素」だ。
異世界だからかも知れないけど、ココ特有の破ると発火する木の実はとても使いやすい。乾燥した木の枝に引火させれば簡単にキャンプファイアーの出来上がりさ。
他の木々は水分を含んでいるようで山火事になる心配も無い。火をつけると夜でも安心して睡眠が取れる。
小さい頃はよく家族と一緒に森で釣りをしたりバーベキューなんかもしたっけ‥‥‥。
「懐かしいなぁ〜。」
ふと声が溢れた。
そうだ、もう戻らない過去の話だ。でも過去からは沢山学べる事がある。忘れないようにしっかり心のポケットの中にしまっておこう。
さっき作った炎を眺めながらそんな事を考えている。
火を見ているとなんだか落ち着くんだ。
時々バキバキっと鳴る音もとても新鮮で心地がいい。今まであった嫌な事も全て忘れられるような気がするんだ。
この世界に来て明日で10日目か。
もちろん寂しいと思う瞬間もあるけど、なんだか冒険しているようで楽しい気もする。
スマホとWi-Fiがあればこの異世界の様子を動画に撮ってインターネットに投稿出来たかもしれない。
そしたらきっとみんな驚くだろうなぁ。こんなに神秘的な空を見る事が出来るなんて思いもしなかったよ。
空一面に広がる星々は僕の心をポジティブにしてくれる。
「はぁ、今日はもう疲れた。明日こそ誰かに会えるといいな‥‥‥。」
僕はそのまま干し草のベットに横になった。
最後まで読んでいただき、
誠にありがとうございました。
今後とも、
この作品を完結まで描き続ける所存であります。
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また、アドバイスやご指示等ございましたら、そちらも全て拝見させて頂きたく思います。




