東の神と西の神
一年に一度の祭は、夏の夜に行われています。
東の神輿が勝てば無病息災、西の神輿が勝てば大豊作。どっちが勝っても良いことばかりです。
「今年はどうかな?」
神様が二人、西と東の神輿を見つめながら楽しそうにお酒を飲んでいます。
「西の勝ち!」
神様は勝負の結果に満足げな笑みを浮かべました。
「よし、約束通り大豊作にしてやろう」
そして村は大豊作になりました。去年の話です。
「西の勝ち!」
神様が満足げに大豊作をもたらします。今年も大豊作です。
「西の勝ち!」
神様は踊りながら大豊作をもたらしました。来年も大豊作です。
村は米であふれかえりました。そのせいで米の値段が下がり、せっかくの大豊作も薄利多売に移行し出しました。
村長が手をあげました。
「今年は大豊作の願いをやめて、天下泰平にしないだろうか?」
皆が頷きました。こうして、祭は少しの変更でいつも通り神輿が行われました。
「東の勝ち!」
その一年、村人は風邪すらひきませんでした。
「東の勝ち!」
次の年も無病息災でした。
「東の勝ち!」
村に医者が居なくなりました。
「いかん!!」
村長が手をあげました。そして無病息災をやめて値段が上がってきた米の大豊作を願いました。
「東の勝ち!」
狙い通り大豊作になりましたが、病が流行りました。
「医者がおらん!!」
村はパニック状態になりました。
「西も東も勝ちにすれば良いのでは?」
子どもが手をあげました。
仕方ない。と渋々その意見が通りましたが、神輿を担ぐ大人はいまいち乗り気がしませんでした。
「なんだ今年の神輿は? まるでつまらないぞ」
雲の上で見ていた神様は、退屈そうにあくびをして寝てしまいました。
その年は何も願いが叶いませんでした。