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序.
それはほんの些細な綻び。なかったことにだって、できたかもしれない。けれど、それは許されなかった。
誇りがあった。未来があった。兆しがあった。脅威があった。だから男は、許すことを選ばなかった。
これが罪である。これが喜びである。これが祝福である。これが呪いである。
もう二度と帰れない場所に至って、少年は振り返らず進むことを選ぶ。
置いてきたものは、思い出だけではない。
罪は嘘となって、喜びは嫉妬となって、祝福は災禍となって、そして呪いは報復に形を変えて、そしてそれはいつしか彼を過去に呼び戻す。
置き去りにされた影は、暗闇から手を伸ばす。
熟れすぎた果実が枝から落ちてしまうように、その甘い蜜をたっぷりと蓄えたその身も、腐り落ちてしまえばいいのに。
その世界の先を、自分も見てみたかった。