四話
いやぁ、さすがです繁華街。人が暴れておる。走り回っておる。
というより、昨日にはもう、ある程度死人が歩いていたはずだ。ニュースにもなっていた。
なぜこの人たちはこの街に繰り出しているのだろうか? 私と同じ混沌の覗き見か?
それとも信用していなかったのか? テレビに映った惨状を。
死人:5 生存者:2 負傷者?:3 と言った割合だろうか。
そこらに死人がうようよとしている。繁華街の中心に行くにつれ、さらに数が増して言っているような気がする。
なんとはなく、道路の中心に転がっていた金属バットを拾った。人の汗が染み込んでいるのが、すぐにわかり、私はちょっと、やだなぁと思った。
意外と車が走っている。だいたい、その行く末は、追突、のちに炎上だ。
煙草をふかしながらぎょろぎょろと視線を動かす。前方の五体程の死人は、私に向かって歩き始めているのがわかる。
もちろん、奴らは愚鈍、私が後ずさりしてしまえば、なんてことはない。
しかし、ここで後ずさりをしてしまてはいけない。この場合、まずすることは、死人との距離感の認知。
一番近いやつでざっと30メートルくらいだろうか、奴が私の肩を掴むまで、大体20秒ほどか。
次にしなくてはならないこと、後方確認だ。
映画でよくあるではないか。後ずさりしたら、すでに後ろにゾンビがいて、距離は目と鼻の先、ガブリ。
つまらない。こうであっては面白くない。俺はさっと後ろを振り返る。
3体いた。前方の奴らよりも距離が近かった。
これは困った。一匹しかいないと予想していた。いや、そうであったなら、金属バットの威力を試し、颯爽と逃走、完璧な計画だ。
しかし、3体いてはこれができない。3体とも大体同じくらいの距離から近づいてきている。
北西、北、北北東、の方角から近づいてきているので、どれか1体を倒すと言うわけにもいかない、ブンブン振り回して、微妙な威力しか発揮できないようであれば、それこそ囲まれて、私の解体ショーのはじまりだ。痛いのは嫌だ。
まぁ、困ったと言っても、生還ができないと言うわけではないので問題ない。この場合、東北東の方角、時計でいうのなら三時の方向に走ってさえしまえばとりあえず俺の命はOKだ。
私は、さっと走り、つまらぬ窮地から逃げ出した。
蝶のように舞い、愚鈍な死人をヒラヒラ避ける。というより、死人が追いつかないので、避けていると言うよりは、死人にシカトされているような気分。不愉快。
繁華街中心は、死人が多すぎて、生き残れる気がしない。
結局は私は、中心にはいかず、人がそこそこいるエリアを、ふらふら死人のように歩いていた。
なんだか、退屈だ。意外と刺激がない。
こんなものなのか、死人が歩く世界。文字通り死と隣り合わせだというのに。ニュースを見たときの高揚はとっくに冷め、落ち着いた気分は散歩日和。
どうしましょう。もう以前の人生と変わらない、「何をしようか」と言う思考が頭に浮かぶ。
なんてこった。死人が歩いても私の世界は変わらないというのか。
結局自分が変わらなければ、天変地異が起きようが、退屈なままなのか。
知っている、そんなことくらい。
やはり、何か目的を決め、動かなければ人生というものは、始まらない。かといって、私には何もない。
いや、もういい。いい加減この終わらぬ葛藤にも飽いて来た頃だ。なんでもいいから、何か始めようじゃないか。とりあえずなんでもいいから、何か。
金の稼ぎ方も健康も、人々が狂信するものが今となっては、世迷いごとだ。(健康は少し大切か)
せっかく死人が歩くのだ。死人について調べよう。
死人について、紙にまとめて、本に出そう。それで、本が売れてお金持ちになって……。
金を使う機会はこれから来るのだろうか。来るといいな。




