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1話 勇者を殺す勇者

よろしくお願いします!

「はぁっ! 光天剣・突!」


「おっと」


 光り輝く剣の切っ先から放たれる即死級の刺突の砲撃。放たれた砲撃は、300メートル近く離れている俺の目の前へと一瞬でやって来る。


 俺たち程になればこの程度の距離、無いに等しい。ここに来る前まではこんな事は出来なかったし、勇者以外には全く出来ないのだけど。


 砲撃を軽く躱すと、既に距離を詰めていた男は、光り輝く剣ーー聖剣で切りかかって来る。


 勇者のみが扱える最強の剣で、持っているだけで剣術レベルMAX、光魔法レベルMAX、対物理耐性レベルMAX、対魔法耐性レベルMAX、光精霊召喚など、存在するだけでチートな武器だ。


 勇者のみが力を発揮する事が出来る聖具は聖剣以外にも色々とあるが、どれも似た様な力を持っている馬鹿げた武器だ。それを持ちながら遠慮無しに切りかかってくる目の前の男。


 女神エスティアが考え無しに召喚した勇者の1人で、何もしていない国を悪と決めつけ、王を殺して乗っ取り、王として君臨している。


 この世界に来てから負け知らずどころか、痛みすらも受けた事の無い男は、今、血走った目で剣を振り下ろしてくる。


 普通の剣だと触れた瞬間、聖剣が纏う魔力に耐え切れず粉々に砕けてしまうのだが、俺は手元に黒い穴を開けて、そこから何の効果も無く、特殊な鉱石も使っていない、武器屋に行ったら樽箱に押し込められているような剣を取り出す。


 その剣に俺は魔力を流して振り下ろされる聖剣に対して、下から切り上げる。聖剣とぶつかった衝撃で地面が割れ、とてつもない風が吹き荒れて、瓦礫を吹き飛ばすが、俺と勇者の男は、鍔迫り合いのまま動かない。


 ただ、これは俺と勇者の男の力が拮抗しているのでは無く、俺の力に押し負けないように、勇者の男に合わせているからだ。それに、あまり力を入れると剣が耐えられ……あっ、ヒビ入った。仕方ない


「ふんっ!」


「なっ!」


 俺は聖剣を弾くと、持っていた剣が粉々に砕け散る。柄だけになったものを持っていても仕方がないので、勇者に向けて投げる。


 俺の余りある魔力を詰め込んだ柄だ。そこら辺の奴が放つ魔法なんか目じゃないぜ? だが、残念な事に、この世界に来てから今まで怪我どころか痛みすら受けた事の無い勇者は、迫る柄を避けようともせずに聖剣で弾こうとする。


 そして、迫る柄を弾こうとして聖剣を振り下ろしたが、聖剣は勇者の手元から飛んでいき、柄は真っ直ぐと男の急所へと……oh……


 聖剣の効果で物理耐性が上がっていたお陰か、蹲っていた勇者は直ぐに立ち上がるが、この世界に来て初めての痛みに、目を白黒とさせている。


「く、くそっ! 何で痛みが!? 何でだよ! 何でだよぉ! お、お前! 一体何なんだ! 勇者としてこの世界に呼ばれた俺を襲って来て! 何が目的だよ! 一体何なんだよ!」


 予想外の痛みに戸惑い、恐れて、俺を睨んでくる勇者。あれ? 言わなかったっけ? 俺は


「勇者を殺す勇者だよ」


 不本意だけどな。

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