不運
他国との交流が深まり、特に潤ったのは機械類である。もともと炭鉱は豊かであるがまだ発展途上である龍の国にはそこまでの技術はない。
その一方で極東の国では機械業が盛んで、それを作るのには鉄鉱が必要だがその国は炭鉱に乏しいのだという。つまり、極東の国と龍の国はお互いに短所を補える関係であり、いわばクマノミとイソギンチャクのような関係なのだ。
それから時は流れ数年後。サイバは15歳となった。彼は圧倒的なカリスマ性でみるみる内に国を豊かにしていった。そしてさらに数ヶ月経てば、海外の視察団が来たのだ。急成長した龍の国に興味を示した他国の首相が派遣したらしく、大きな国旗を掲げた船が港へ停泊していた。
「わぁ!おっきいね!サイバ王子もこんなの作れるのかな!」
国の子供達は口々に他国の技術に対して称賛、とは行かないが圧巻されている。王子が物を作る、という言葉に気づいた他国の視察団の団長は、こう尋ねた。
「坊やたち、ここの王子様は、ものづくりができるのかい?」
「うん、サイバ王子、すっごく上手なんだよ!」
王家が何かを作り、国を発展させるというのはとても珍しいだろう。他国では基本的には国民が王家の従者と考えられていたからである。そう、龍の国は、あらゆる意味で『異端』であったのだ。
もちろん、そんな国に視察団が興味を示さないわけがない。
「是非とも、ここの王子に会いたい。」
そう言って団長は龍の国の子ども達に案内をさせた。
* * *
一方の王子は従兄弟の鍛冶屋へと来ていた。
「より良いものを、より多くの人へ」
そう考える王家は使える力を遺憾なく発揮する。この国における錬金術は鍛冶屋の技術と合わせれば世界でもトップクラスなのだ。
サイバは錬金術を使うとき、まだ未熟なせいか龍の力を使わなければ扱いきれない。そのため錬金術を使うときは右腕が龍の鱗に覆われたのだ。
不運にも、幻獣の存在を知らぬ団長の目に、それが留まってしまった。鉢合わせてしまったのだった。