九枚目 邂逅
天羅達は街の外れに集まっていた。
「この薬を届ければいいんだな」
「頼んだよ」
「あのごつい奴は一緒じゃないのか?」
「ナルバなら別の用事を頼んでいてね」
その頃、街の入口近くでナルバと黒夜が睨み合う。
「どけよ」
「貴様ら戦鬼は立ち入りを許可されていない。
大人しく帰れ」
「誰に物言ってんのかわかってんだろうな?」
右手に風の玉を作る黒夜。
「貴様らは本当に野蛮な生き物だ」
腰を落とし右拳を引くナルバ。
「強者だからな!」
黒夜が右手を突き出すと風の渦がナルバへ伸びていく。
「愚か」
素早い突きを放ったナルバの拳は風の渦を消し飛ばし、黒夜を後方へ吹き飛ばす。
「…てめぇ、何者だ?」
「貴様に教える義理はない」
「楽しめそうだな!」
指を広げ黒夜が腕を振り下ろすと五つの風の刃がナルバへ向かっていく。
「楽しいか…獣の様な奴だ」
ナルバが足を振り上げ力強く地面を踏みつけると隆起した地面が風の刃を飲み込み黒夜をも飲み込む。
「土に還れ」
「久し振りだ…」
覆っていた地面を吹き飛ばし、激しい風を纏いながら黒夜が姿を現す。
「この強い奴と戦う時の全身に感じるピリピリする感覚。
本気で…本気でやれそうだ!」
「くっ…(風の音がまるで無数の悲鳴に聞こえる。
私も本気を出すか)」
深く息を吸い全身に力を込めるナルバ。
「頭と本気でやった時を思い出す!
さあ、殺し合いをしようぜ!」
ナルバへ突っ込み拳を伸ばすも途中で動きを止める黒夜。
「命子…てめぇ、邪魔すんじゃねぇ!」
動きを止めた黒夜は突然叫ぶ。
「(なんだ? 他に仲間がいるのか?)」
「ああ? こっちは今、良い所なんだよ!
知るか! 逃げてる奴は神羽にいるはずだ!
協定なんざ知るかよ!
…くそっ! 分かった」
黙ったままナルバに背を向け歩き出す黒夜。
「いいのか?」
「呼び出しなんだよ!
それにてめぇの御主人様が協定なんか結んでやがるから、帰るしかねぇだろが!
いいか? 次に会った時は即全力の殺し合いだ。
今度は邪魔させねぇ…うるせぇな! 頭にてめぇの声が響くだけで苛つくんだよ!」
一人怒鳴りながら黒夜は去っていく。
「騒々しい男だ。
エダル様の元へ戻るか」
服を正し街へとナルバは戻っていった。