七枚目 カンナミの民
「天羅、あのナルバって人はもしかして戦鬼なんじゃ?」
「いや、あいつは違うな」
「あれは恐らくカンナミの民だ」
「雀、知ってるの?」
「書物で読んだだけだがな。
体内のエネルギーを放出して戦うらしい。
強い者なら山に風穴を作る程とか」
「山に!?
そんな人達がいるなんて」
「だが、今は存在しないとされているはずだが。
戦鬼が手を出せないのもあいつがいるからかもしれない」
「天羅は何か…あれ?
天羅?」
天羅はエダルに歩み寄っていた。
「あんたがここを統治しているやつか?」
「誰かな? 商人には見えないし。
僕は商人以外と話はしないんだ」
「まあ、そう言わ」
去ろうとしたエダルの肩に触れた瞬間、ナルバの手が触れ軽く吹き飛ぶ天羅。
「ナルバ、手加減し過ぎだよ」
「エダル様、下がっていてください」
「ナルバがそこまで言うとはね。
君、なかなかやるね」
「別に戦いに来たんじゃないんだけどな。
こいつを倒したら話を聞いてくれるか?」
「いいよ…出来ればね」
集まっていた人達が一斉に逃げ出していく。
「じゃあ始めるか!」
天羅はナルバの懐へ飛び込み顔面を蹴りあげた。
「ダメージなしか」
「非力よ」
ナルバの突き出した掌を天羅は拳で打ち払う。
「!?」
「凄い威力だな」
「貴様、戦鬼か?」
「ああ」
「なるほど。
ならば手加減は無用だな!」
足を開き腰を落とし地面を砕くナルバ。
「ナルバがここまで力を出すとはね」
地面から弾かれる様に突進するナルバが天羅の目の前で突然止まると、地面を削りながら天羅が吹き飛ぶ。
「ぐっ…」
「耐えたか。
だがいつまで持つかな」
「見えない攻撃は厄介だな…頑丈そうだし大丈夫か」
駆け出しナルバの懐に飛び込む天羅。
「貴様の攻撃は」
「舌噛むぞ」
打ち上げた天羅の拳が腹にめり込みナルバの体を浮かせる。
「がはっ!」
「まだまだ」
素早く背中に移動し天羅が放った膝蹴りは地面を砕く程、ナルバの体を叩きつけた。
「ナルバ!」
「一気に終わらせる!」
ナルバの手を掴み体を持ち上げ拳を何発も打ち込む天羅。
「これで終わりだ!」
渾身の一撃を放つもナルバの体は動かなかった。
「…愚者に死を!」
ナルバの周囲が吹き飛び天羅も吹き飛ばされる。
「なんだ?」
「消えよ!」
両手を引き拳を握るナルバ。
「なんかヤバそうだな…」
「はあぁぁぁぁ!」
「ナルバ!!」
エダルの声に伸ばしかけたナルバの拳が止まる。
「エダル様」
「街が消し飛んでしまうよ」
「申し訳ありません…」
「ナルバを本気にさせるとはなかなかだね。
君の話を聞いてあげよう」