五枚目 追跡者
林の中を突き進む二人。
「本当にこの道であってるの?」
「つべこべ言わずついてこい。
…見ろ、あの川を越えれば」
「でも神羽の街も安全じゃないでしょ?」
「あそこは戦鬼とは深く関わらず、物のやり取りしかしていない。
それに、神羽を治めてるやつは上の連中に顔が利くからな」
「なら良かった」
二人は川に掛かった橋を渡る。
「ビンゴ!」
「!?」
後ろからした声に驚き振り向く二人。
「やっぱり神羽に向かってたか。
俺は黒夜、お前たちを殺しに来た英鬼だ」
「玻月、俺の側から離れるな」
「う、うん」
玻月を背中に隠し黒夜と向かい合う天羅。
「お前が裏切り者の戦鬼か?
強そうには見えねぇな」
「(場所が悪い…しかも玻月を守りながらは不利。
どうする…)」
「来ねぇのか?
じゃあ…」
二人の頭上に移動した黒夜が左手を二人に向け拳を握る。
「!?」
何かを察知し天羅は後方へ下がった。
「勘がいいな。
避けなきゃ今頃バラバラだったんだがなぁ」
「(奴の能力が分からない。
橋には傷一つない所をみると範囲は小さいか)」
「次は外さねぇぞ!」
「玻月、走れ!」
玻月が駆け出すと同時に力強く手を叩く天羅。
「なんのまね…っ!?」
突然膝をつく黒夜。
「しばらく休んでろ」
「なめ…やがって…」
天羅へ手を伸ばし、黒夜は人差し指と中指をくっつける。
「(もう少し…何だ?)」
振り向くと天羅の脇腹から血が吹き出す。
「ぐっ!」
「天羅!?」
「逸れたか…もう一度」
再び天羅へ手を伸ばす黒夜の目の前に小さな玉が現れ周囲が光りに包まれた。