三枚目 時詠みの巫女
二人は厳重に警備された屋敷の近くに来ていた。
「(成り行きでこの人に付いてきたけど大丈夫かな…)」
「正面から行くか」
「しょ、正面て!?」
堂々と歩きながら門の前で止められる天羅。
「なんだ貴様は?」
「俺は戦鬼の天羅。
巫女様に会いに来た」
「そんな話は聞いてないぞ?
許可された者以外は謁見出来ない決まりだ」
「ど、どうするのよ!?」
「任せろって!
これは緊急の案件なんだ」
「緊急の案件?
ならば印を見せろ」
「印?」
「緊急時に渡される印だ。
英鬼からの使いなら持っているはずだろ」
「い、いや…英鬼様達にはまだ伝わっていなくて…」
「ならば先に英鬼に伝えてから来い。
さあ、邪魔になるから帰れ!」
二人が門番に押し返されていた時、門が開き顔を布で隠した女が現れる。
「巫女様がお二人にお会いになるそうです」
「しかしそれでは決まりが…」
「責任は巫女様がお受けなると」
「…分かりました。
騒ぎは起こすなよ?」
「大丈夫大丈夫!」
二人は女に連れられて屋敷へと入っていく。
「…少し任せるぞ。
私は上へ連絡してくる」
「分かりました」
一人を残して門番がどこかへ向かう。
「巫女様はこちらでお待ちです」
案内された襖を開けると簾の向こう側に人影が見えた。
「久しぶりだな」
「相変わらずあなたは無茶をしますね」
「来るのがわかって…たよな」
「ええ。
聞きたいことも全て見えていました」
「なら話は早い。
どうなっているか教えてくれ」
「玻月さん、あなたは陽炎と羅刹の両国から狙われています」
「どうして陽炎までが!?」
「ある者の陰謀です。
しかし、その者は私の力を恐れて結界で姿を隠している。
私の力を知っているのは羅刹の者のみ」
「やっぱり裏切り者がいたか」
「それも戦鬼…英鬼の中にいます」
「英鬼ってなんなの?」
「戦鬼の中にも位があるんだよ。
一番下から戦鬼、豪鬼、師鬼、命鬼、英鬼だ」
「じゃあ一番上の戦鬼が関わってるのね」
「天羅、あなたはどうするのですか?」
「分かってるくせに聞くなよ」
「…険しい道になりますね」
「どうして天羅は私を助けてくれるの?」
「今回みたいな戦鬼のやり方が気に入らないたけだよ。
それに俺の知り合いが関わってるならぶん殴らないとな」
「二人の未来がどのような結末になるかは見えませんが、あなた達なら乗り越えられるはずです。
まもなく追っ手が来るでしょう。
裏口から西へ行き商の街へ向かいなさい」
「分かった。
この借りは必ず返すからな」
「ありがとうございました」
二人は女に案内され去っていった。
「どうか二人をお守りください」
しばらくして一人の男が現れる。
「巫女様、怪しい男女はどこへ?」
「これはこれは英鬼の牙炎様、あの二人なら遠くへ行きましたよ。
詳しくはお教えできません。
…さあ、あなたの役目を果たしなさい」
「さすが巫女様…お許しを」
槍を手に出現させ牙炎は巫女を貫いた。