二枚目 謎の戦鬼
「はぁ…俺の団子…」
落ちた団子を見つめため息を吐く男。
「私を…捕まえに来たのね」
「ん? 誰だあんた?」
「私を捕まえに来たんじゃないの?」
「俺は暇だから団子食いながら散歩してただけだ」
「(私を知らない…もしかすると一部の戦鬼にしか伝わってないのかも。
なら今のうちに…)」
女はゆっくり立ち上がり去ろうとする。
「待て」
「(どうすれば…)」
男は女に近付き手を差し出す。
「え?」
差し出された手に自分の手を重ねる女。
「違う!
団子代、あんたが立て替えろ」
「あ、ああ!
団子代ね!
今、持ち合わせがなくて…」
「…さっき俺を追手だと勘違いしたよな?」
「そ、そうだったかしら?」
「事情を聞かせてもらおうか」
女はその場に座り込み、全てを話し出した。
「私は陽炎の巫女。
国境の山を移動していたら馬が暴れだして羅刹側へ転がり落ちたの。
気を失っていた私を見回りが見つけて捕まってしまった」
「なるほどな。
一ついいか? どうやって牢から出た?」
「分からない…気付いたら鍵が開いていて夢中でここまで逃げてきたの」
「今まで誰にも見つからずにか?」
「ええ。
私を見つけたのは殺しに来た白僧衆だけ…笑っちゃうわね」
「なんであんたを殺す?
助けるのが普通だろ」
「情報を漏らしたと思ったんじゃない?
もう私の逃げ場所なんて何処にもない…」
「逃げ出してどれくらい経つ?」
「さあ…一時間くらいじゃないかしら」
男は周囲を見渡しながら笑みを浮かべる。
「俺が逃がしてやる」
「冗談はやめて」
「本気だ。
少し気になる事もあるしな」
「逃げる所なんて…」
「時詠みの巫女に聞けば大丈夫だ」
「時詠みの巫女?」
「未来が見える人だよ。
あんた名前は?」
「玻月」
「俺は天羅。
今から俺は玻月の味方だ!」
天羅は玻月に手を差し出し笑みを浮かべていた。