十八枚目 豪鬼との戦い
「かくれんぼはやめようぜ」
「そうだな」
射軌の頭上から降りてくる雀。
「上か!」
放たれた矢をかわし、雀はくないを振り下ろす。
「あぶねぇな」
「すぐ楽にしてやる」
「あんまり俺をなめてると」
その時、雀の肩に矢が突き刺さる。
「ぐっ!」
射軌から離れ矢を抜く雀。
「だから言っただろ。
次は三本だ!」
向かってくる三本の矢を払い、雀が射軌へ駆け出すと払った矢が背後から迫る。
「ばかな!?」
再び払うも矢は何度も雀へ向かっていく。
「俺は見た目標物に追跡する矢を放てる。
だからお前が隠れても矢は追い続けるんだよ!
そして、矢はいくらでも増やせる!」
次々と矢を放つ射軌。
「数が多い…」
木に向かって走りギリギリで矢をかわす雀。
「確かに矢が刺さっちまえば追跡できねぇ…と思っただろ!」
「何!?」
矢が木の中を進み貫通して雀へ向かう。
「目標物に刺さるまで止まらねぇよ!」
かわしていた雀の服に矢が刺さり動きを封じる。
「しまっ」
無数の矢は雀の姿が見えない程突き刺さっていた。
「スピードも調節出来るから、目が慣れた頃に速い矢を放ちゃ簡単だ!
さて、戻って残りを」
突然、目の前が揺らぎ膝を突く射軌。
「なんだ?」
「ようやく毒が回ったか。
やはり豪鬼クラスになると肉体的にも頑丈なようだな」
「ばかな!? てめぇは確かに死んだはず。
身代わりだったとしても俺はてめぇに狙いを定めたんだ。
矢が止まったままのはずはねぇ」
「お前が初めから相手にしていたのが身代わりだとしたら?」
「実体のある分身だと!?
戦鬼でもねぇ奴にそんな芸当が…待てよ。
確かどっかの国にそんな事が出来るって…」
「詮索は嫌いだ」
「!?」
五人の雀が現れ射軌をバラバラに刻む。
「はや…い…」
「この程度か」
分身が消え雀が一人に戻る。
「天羅はどうでもいいとして問題は玻月か」
その頃、玻月は醜餓の吐き出す液体に苦戦していた。
「あれに触れると一瞬で腐ってしまう。
木や大地は使えない…なら!」
木陰から飛び出す玻月。
「観念したか」
大量の液体を吐き出す醜餓。
「風よ応えて!」
玻月が両手を突き出すと凄まじい風が吹き、液体ごと醜餓を吹き飛ばす。
「自分の毒を味わいなさい」
「ふぅ…ビックリした」
「そんな!?」
「こいつは俺の体から生成されているのに、俺自身に効果があると思ったか?」
「なら!」
腕を振り玻月は風の刃を飛ばす。
「これは溶かすだけじゃない」
醜餓は両掌から液体を出し壁のような形状に変化させる。
「形が変わっていく!?」
壁に傷ひとつ付かず風の刃は阻まれた。
「まだまだこれからだ!」
鞭の様に変化させ玻月を攻撃する醜餓。
「変幻自在て事ね。
あの液体を何とかしないと…!?」
鞭が掠り倒れた玻月の足に毒が回る。
「面白い力を使うようだが、本体は戦闘向きではないね」
「足が…」
「さあ、じっくり毒を味わってもらおうか」
醜餓はゆっくり玻月へと近付いていく。