十七枚目 国境
「そろそろ国境だな」
「本当に陽炎へ行けるのかしら」
「エダルが何か手回ししているかもな。
それに戦鬼と言えどそう簡単には国境を越える訳にはいかない」
「雀の言う通りだ。
エダルを信じるしかない」
それから少し進むと大きな赤い門が姿を見せた。
「お、あれを越えれば陽炎だ!」
三人は門番の所へ駆け寄る。
「陽炎へ行きたいんだが」
「ならここに名前と通行料として一人、銀三枚だ」
「た、高いな」
「どこも不景気だから仕方ないだろ。
通るのか通らないのかどっちだ?」
「天羅、渋ってる場合か」
「分かってるよ!」
名前を書き三人分の通行料を渡す天羅。
「確かに。
今、門を開け」
その時、門番の首に矢が刺さり、次々と矢が降り注ぐ。
「離れろ!」
慌てて木陰に隠れる三人。
「距離が遠すぎたか」
「お前の弓、命中率悪いな」
「うるせぇ!」
「二人とも騒ぐな。
標的を潰すぞ」
「あいよ」
「了解」
三人組が天羅達へと近付く。
「あと少しだったのに」
「恐らく豪鬼と師鬼の三人だな」
「俺の金が…」
「強いの?」
「豪鬼はそうでもないが、師鬼は厄介だ。
天羅、師鬼は任せたぞ」
「はぁ…」
「来るぞ!」
三人組がバラバラになり、一人が口から紫の液体を飛ばす。
「逃げろ!」
三人がいた場所に液体が掛かり木や地面を溶かす。
「お前達が逃亡者だな。
醜餓は左の女を殺れ。
射軌は右の女を私は男を殺る」
「戦鬼が一番楽しめそうなのに…仕方ないか」
「さっさと終わらして硬顎さんの加勢にいけばいいんだよ!」
「豪鬼なんかになめられているとはな」
「女のくせに威勢はいいな!」
雀は無数のくないを射軌へと投げ、森へと駆けていく。
「逃がすかよ!」
「玻月、手を貸そうか?」
「大丈夫、私も戦える」
「すぐに終わらせてやろう」
頬を膨らませた醜餓の首に蔓が巻き付き遠くへ投げ飛ばす。
「天羅も気を付けてね」
醜餓を追いかける玻月。
「バラバラになって良かったのか?」
「まあ、戦いにくそうだったしいいんじゃないか?」
「お前はずいぶんと余裕だな。
戦鬼程度が師鬼の私に勝てるとでも?」
「大丈夫だろ。
お前、弱そうだし」
「そうか…なら楽しませてくれ」
その頃、陽炎側の国境近くに白僧衆が集まっていた。
「情報ではこちら側に向かっているらしい。
見つけ次第、殺せ」
方々に散っていく白僧衆。
「なんだか騒がしくなってきたな」
木の上からその様子を見ている男がいた。