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ダンジョンシステム整備士、津田征也  作者: 氷理
第二部:管理・整備が始まるよ
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その、六十四 春の例大祭



 春エリアの公開はポスターと口コミで広められており、新種のアトラクション扱いされている。特に赤井が友人を連れて行って感想を聞いたり、霊課の職員が知人に勧めたりして順調な滑り出しを見せていた。土日に様子を見た月曜日、カフェと神社から1人ずつ来て貰って様子を聞いた。

「結局カフェの方も22時までがちょっと厳しくなったね」

神社はこの時期のみ夜間開放で22時に閉じるがギリギリまで利用者がいるので閉門後が慌ただしい。

「学校・塾や会社帰りのお客様が多数いらっしゃいますからね」

「ああ、赤井様が今日あたりご友人からの評判を聞いてくださるでしょう」

「それと4月から開門時間が5時になりましたが早朝に見にいらっしゃる方、中でジョギングしていらっしゃる方もおられます」

「アルコールとお食事を禁止する看板が立っていますので悪質な花見客という方は今の所いらっしゃいません」

「お酒禁止だとどうしても、ね。さっき中を見回って来たけど、レジャーシートとか広げている人もいなかったよ。それとベンチがいくつか増えていたけどあれは?」

「神社とカフェの合同で設置しました。和カフェを利用しているお客様でご高齢の方々から多数ご要望をいただいたので、現在4か所においております」

ベンチは数が少なかったのか、距離が長かったのか。ここは要検討事項だな。

「できれば術師の方の……学習室のような場所をご検討いただければ幸いです」

「?」

巫女の西尾が渋い顔で進言する。

「術師の方々は本を持ち出せないそうなので書き写していらっしゃいますが、鬼気迫る勢いで目つきが怖いと。期間内に終わらせようと頑張っていらっしゃるのは存じておりますが、一般のお客様が……」

「ああそういうこと」

公開期間が終われば第一・第二ダンジョンを通らないと春エリアに入れないため、書き写すのを急いでいるのだろう。コピー機も置いていないし一般人にあの気迫は厳しいか。

 薬草の本はそのうち売りに出すと受付にも掲示板にも公表しているが、霊薬の作成方法は外部に売り出さない方針だ。ほんの限られた人間しか知らなかった内容を知ることが出来ると広まっているので、普段ダンジョンを使っている術者さん達より断然人数が増えている。

「わかった。地下空間を広くとって下で書き写すようにお願いしておくよ。他は?」

「ではカフェの方から。駐車場に車の出入りが増えたので歩行者の安全を確保するために、歩道になるようブロックを置いて区切っています」

「車の量も随分増えていますし、こちらも駐車場での事故がないようにこまめに見回っています」

そういえば、と駐車場の外側に道のようなものが出来ていたと気付く。

「スペースが限られるから……効率と安全を上手く確保できるように相談してみる」

隣の敷地は旅館建設が始まり工事車両が出入りを始めたこともあり、花見客と相まって交通量が増えている。安倍さんにどこに相談したらいいかをちょっと聞いておこう。

「春前に通路を作っておけばよかった。縁石で区切っておくか整備するべきだったか」

「今回は仕方ありませんが、次回は整備しておきましょう」

次回か……補佐から今回評判が良ければ秋の紅葉もどうかと打診されている。半年もあれば秋エリアもできるだろうと。

「そういえば、旅館の方は建設にどのくらいの時間がかかる予定ですか?」

「順調にいけば1年半くらい。2年後くらいに開館予定だって」

今はまだ基礎工事をしている所なので先は長そうだ。

「他に何か要望とかない? 何か必要とか」

「早急に地下の拡張をお願いします。それ以外はこちらで対応可能ですので」

「ええ、カフェの方も大丈夫です」

解散するとそれぞれ大きなゴミ籠と傘立てを設置しに行っていた。そうだよね、午後から天気予報で雨って言ってたし外が雨でもエリアの中は晴れだから傘立てもいるよね。

「……ダンジョンの家の方から机借りるか」

地下空間を拡張し、ダンジョンの家から机を運ぶため事務室へと向かった。

「すみません、机をお借りしたいんですけど~」

ダンジョンの家の様子も聞いてみる。

「エリア公開中は中に入るお客様少ないですね。最初は興味本位で見に行ったみたいですけど、凄い本があるって駆け込んできた方がいらして一気に持って行かれましたよ。

 ただ、早朝から夜ギリギリまでいらっしゃるため、ここの2階に宿泊されています。布団なども足りないので和室に雑魚寝ですが」

「あー、10日って短いのか……」

「机お持ちしますよ」

「和室の方の長いローテーブルをお願いします。えーっと、いくつ位あれば足りるかな」

職員さんに一緒に運んでもらい、術者たちに資料本のある地下を広げたのでそっちで書き写してほしいと伝えて回る。同時に薬草を取りに行く時も、一般人の入る入口から1×3㎞の場所では見た目に少しは気を使ってくれるように頼んでおく。



「津田さーん」

学校の始業式から赤井が帰って来た。

「赤井ちゃん。どうだった?」

「好評だったよ。今年はお花見しそこなったっていう子もすっごい満足してた! 外で桜の散り際から後だから需要あるんじゃないかな? お弁当とか持ち込めないのが残念だったけど」

好評なら良かった。この付近はもう花が散って葉桜になりかけている。

「うーん、食べ物許可したらゴミ増えるし、アルコールの持ち込み禁止だけどなし崩しにされそうだから。質の悪いお客さんを寄り付かせないようにって試験運用だし今年は禁止ね。騒ぐ客と術者さん達がぶつかって大惨事になっても困るから。

 志津さんの御茶席もあるし、要望があれば……うーん」

「そっかー。神社の要員じゃ術者さん達止められないですよね。普通の一般人同士ならまだ警戒レベル低いですけど……今年初めて公開で殺気立って書き写していらっしゃるので、刺激しない方がいいですよね」

赤井も懸念が分かるのかうんうんと頷いてしみじみと口にした。きっと警備員や警察官を頼んでも制圧(物理)は出来ても、制圧(呪詛)とか制圧(精神操作)とかは管轄外だと思う。

「来年も公開予定だしそんなに焦らなくても、と思うけどね?」

「霊薬は結構使いどころがありますから。そうでなくとも他人より1年出遅れるのも嫌なものですし」

そう言う赤井は熱いエリア・寒いエリアにてしっかり式神から霊薬の作成方法を学んでいる。春エリアにしても出来上がったそばから入っているため、今回の公開で焦って書き写す必要がないのだ。






 祭囃子が聞こえる。

「丁度1年だね」

「そうですね。少しは慣れましたか?」

「慣れるほど同じことばかりじゃなかったよ。なんだか怒涛の勢いで追加というか、失言で追加されて行ったから」

「そうでしたね」

「…………天司君、ありがとう。これからもよろしく」









これにて1年目編、完結です。

お付き合いいただきありがとうございました。


そのうち2年目編も投稿したいと思います。

気が向いたら見てやってくださいませ。


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